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第6話【義妹の夢】



 お母さんが再婚して、わたしにお義兄ちゃんができることになった。



『桜井悠木だ……』

『あ、はい……』


 自己紹介なんて今更されても、名前くらい知っていると最初は思った。

 お母さんが再婚するのは一ヵ月くらい前から聞かされていたし相談もされていた。

 そして、相手にもわたしと同い年の子供がいることも知っていた。

 それが同じクラスの桜井くんだっていうも、もちろん知っていた。


 地味な雰囲気であまりクラスには馴染んでない男の子……

 だけど、顏はそんなに悪く無い。

 普通の男の子だ。


 ……なのにこの一ヵ月、一度も彼からわたしに話してくることは無かった。

 これから家族になるって言うのに、まるでわたしだけが彼を気にしている状況が一ヵ月続いた。だけど、その理由は彼の家に同棲するその日になって分かることになった。


『白根桃花です……』

『かわいい……』


 そう、彼は再婚相手の子供がクラスメイトのわたしだと知らなかったのだ。

まさか、再婚相手の子供がわたしだと知らなかったなんて思いもしなかった。

しかも、顔合わせの第一声が『かわいい……』だ。


なんだか、その一言だけでこの一ヵ月間の、わたしの彼に対するモヤモヤとした気持ちはスッキリ収まってしまった。

 何故だろう? 彼にようやく認知してもらえたから? それとも『かわいい……』と漏らす彼の表情が可愛かったから?


 でも、わたしはそんな彼のかわいい顔を見たくてつい彼をからかうように呼んでしまった。


『ゆうお兄ちゃん……』

『何? てかそのお兄ちゃん呼び許可した覚えないんだけど?』

『でも、気に入っていますよね?』

『……黙秘で』


 正直、わたしはお兄ちゃんという存在に憧れがあった。

 わたしは一人っ子だったから、本当のお兄ちゃんという存在がどんなものかは分からなかったけど……


『その……腕に抱き着いても良いですか?』

『何で!?』


 ……でも、家族のトラウマがあって一人で寝ることがトラウマになっていた。


『その頃からなんです……一人で眠れなくなったの……また、わたしが一人で寝ている間に家族がいなくなっちゃうんじゃないかと思って……怖いんです』


 もし、わたしにお兄ちゃんという存在がいたら、一緒に寝てくれる『お兄ちゃん(誰か)』がいたらこのトラウマも背負うことは無かったのかもしれない。


 だから一人で寝るのは怖かった。


 無理矢理に彼をお兄ちゃん呼びして頼るくらいには誰かが傍にいて欲しかった。


 もし、それで彼に襲われても……一人にしないでくれるなら……

 なんて、そんなことを考えてしまうわたしは悪い子なのかも知れない。


「すぅ……」

「…………」ムギュウ~


 その時、うっすらっと目が冷めた。

 夢というのは記憶の整理だと聞いたことがあるが、まるで、この一ヵ月間のことを夢で見ていたような感覚だ。


 そう言えば、無理矢理一緒に寝てもらったけど彼は寝れているだろうか? そう思って隣にいる彼の横顔をうっすらと眺めると――


「…………」

「…………」


 彼は目を見開いたまま天井をガン見していた。

 ビックリして、わたしは目を閉じて寝ているふりを続けた。


 え! 何で起きているの? 今、何時!?

 私が寝た時からずっと同じ体制で天井を見続けていたの!? 何で!?


「…………」ムギュウ~


 その瞬間、わたしは無意識に自分の胸が彼の腕に当たっていることに気付いた。

 こ、これだぁあああああああああああああああああああああああ!?

 もしかして、ゆうくんが眠れていない理由これだ!


 そんな……最初はちょっと腕を抱き枕にするつもりだけだったのに、わたしっては寝ているうちに自分の胸を思いっきり抱きしめて押し付けちゃっている!!


 ど、どうしよう……今更、そ~と腕を離したところでわたしが起きちゃっているってバレるかな? そうなったら気まずいなんてレベルじゃないよぉ~っ!


 だけど、次の瞬間、彼が体勢を変える気配を感じ、わたしはとりあえず寝ているふりを続けた。もちろん、彼の腕を抱きしめたまま……


「…………」

「……綺麗な顔しているな」


 ―――――っ!?!??!


 ゆ、ゆうくんってば、何を言っているの!?

 おっぱいが当たっているんだよ!? なのに、そんなの気にしてないみたいにわ、わたしの顔が綺麗だなんて……

 そう言えば今日の顔合わせの時も『かわいい……』って言ってくれたし……


 もしかして、ずっとわたしの顔を寝ないで見続けていたの!?

 なんか、そう思われると凄い恥ずかしい……


 もしかして、ゆうくんはわたしの顔が好きなのだろうか?


「…………」

「すぅ……」



 その後、ゆうくんは寝息を立てたが、わたしはドキドキして眠れることができなくなっていた。





 



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