第41話【お義母さんとデート】
拝啓、義妹様……
「悠木くん好きなものを頼んでいいのよ」
「はい……」
僕は今……あなたのお義母さんとデートに来ています。
今から数時間前、
「あら、悠木くん。おはよう♪」
「あぁ、お義母さん。おはようございます」
「桃花はまだ寝ているの?」
「一応起こしたんですけど、二度寝を始めまして……」
「そうなのね。やっぱり、今日も二人で一緒に寝ていたのね」
「あっ……」
ヤバイ、まずったと思った瞬間にはもう俺は詰んでいた。
「悠木くん、お話したいことがあるから……おばさんとお昼デートに付き合ってくれないかしら?」
そんなわけで、俺は有無を言わされず近くのカフェまで桃花のお母さんと一緒にデートをすることになってしまったのだ。
「…………」
「…………」
気まずい……桃花のお母さんと二人でカフェに来ることになってしまったが、一体何を話せばいいんだ? むしろ、昨日の家族会議があった後で俺に何が話せるというのだろう?
カフェに誘ったからにはお義母さんが俺に聞きたいことがあるからデートに誘ったと思うんだが、さっきから無言なのも怖いよぉ~っ!
「……悠木くん」
「は、はひぃ!」
と思ったら、名前を呼ばれた。思わず俺は声が上ずって返事をしてしまったがお義母さんはそれを受けても表情一つ崩さずにこう言った。
「桃花と……嫌ここでは娘と言わせてもらうわね。娘と付き合っているというのは『本気』ととらえていいのかしら?」
「……はい!」
「そう……」
やっぱり、話があるってそういうことだよな。家族で付き合っているんだから……昨日は父さんや桃花もいて聞けなかったことがあるってことだ。
なら、俺はなるべく正直に誠意をもって話すしかないだろう。桃花のお母さんに認めてもらう為に――
「娘とはエッチはしたの?」
「ぶぅーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
「あら、喫茶店でコーヒーを噴き出すなんてはしたないわよ?」
「は、はしたないのはどっちですか!?」
「あら、その反応……向きになるってことは……」
「していません! 断じて一線は超えていませんから!」
俺が必死に弁明するとお義母さんはそれでも怪しんでいるのか俺の目をじーと見つめてこう言った。
「でも、ほら、うちの娘って可愛いでしょう? そんな娘と毎晩一緒に寝るだけじゃなくイチャイチャしているわけじゃない?」
「うっ……」
「なのに、一線は超えていないなんて言われてもねぇ~?」
ここは、桃花には申し訳ないが正直に話すしかないか。
「桃花……娘さんは一人で眠れることができないと言っていました」
「……ッ!?」
「娘さんから離婚の話は聞きました……その日から一人で眠るのが怖くなったとも……自分が一人で寝ているうちにまた家族がいなくなるんじゃないかと思って一人じゃなれないと……」
「なるほどね……悠木くんは知っていたのね。娘の不眠症のこと……」
「それって……お義母さんも知っていたんですか?」
「当然でしょう? だって、母親だもの……でも、分かっていても解決するのは難しいわ。せめて、私にできたのは再婚した時に娘と貴方の部屋を一緒にさせて娘が一人で眠らないで済む環境を作ることくらい……」
「それで、俺の部屋が桃花と共同の部屋になったんですか!?」
「もちろん、貴方のお父さんは反対したわ。同じ年頃の子供達を一緒の部屋にするのはどうかって……それこそ、新しい家を買ってから再婚してもいいんじゃないかともね。でも、私が再婚するなら子供達には早めに伝えて慣れてもらった方がいいんじゃないのって言って押し通したの……」
「その……俺が娘さんに手を出すとは……」
「もちろんその危険性もあったわ。でも、再婚するまで私は仕事が遅くて娘と一緒に寝てあげられる環境じゃなかったし……だから、悠木くん、貴方が娘の安心できる存在になってくれればいいと都合の良いことを考えていたのよ。ウフフ……本当に都合が良いことでしょう?」
「あ、はい……いや! でも、それは俺を信用しすぎじゃないかと……」
「信用? いいえ、私が信用しているのは娘よ。私の娘なら変な男の子にはちゃんと猫を被って対応できると思っているのも」
「あぁ……」
そう言われて俺は学校での桃花を思いだした。
確かに桃花は俺と一緒に暮らすまでは『悠木くん』と接していたし、一緒に暮らしても『ゆうくん』と親しくなった体で学校中の皆に『義妹』としての本性は見せていなかった。
「でも、まぁ、娘が毎晩『お兄ちゃん♡』って声を上げるまで懐くとは想定外だったわね」
「そ、それは……」
「ウフフ、分かっているわ。それでもただイチャイチャしているだけなんでしょう?」
ふぅ、どうやら俺の主張は分かってくれたようだ。
「まぁ、あお義母さんの言いたいことはなんとなく分かりました」
「そう、良かったわ……今日は悠木くんの気持ちを確認したかったのが一つと……あと、お願いがあるの」
「お願いですか?」
「ええ、どうか、娘の支えになって欲しいの……貴方が娘と今後も付き合っていく覚悟があるなら、あの子の不眠症とも付き合っていくことになるわ。だから、不眠症が治るように傍に居続けて欲しいの」
「それは、もちろんその覚悟です!」
「そう、なら、良かったわ……悠木くんがちゃんと『責任』を取ってくれるような子でお母さん本当に安心したわ」
「せ、責任って……」
「あら、取ってくれないの? せ・き・に・ん♪」
「もちろん『責任』は取りますが……それはちゃんと責任を取れるようになってからの話で……」
「ウフフ、分かっているわよ。やっぱり、悠木くんもあの人の息子さんね♪」
うわ、何だろう……このやり取りで父さんが若干この人に苦労させられている気がして来た。
すると、お義母さんは俺にこう言った。
「そうだわ。悠木くん。最後に大事なことをお願いするのを忘れていたわ」
「はぁ、何でしょうか?」
俺がそういうと、お義母さんは俺の耳元でこうささやいた。
「ちゃんと『避妊』はするのよ……。責任が取れるまで中に出しちゃダメなんだからね♪」
「ブゥーーーーーーーーーーーーっ!」
「あらあら、コーヒーは噴き出すものじゃないって言ったじゃない。ウフフ♪」
やっぱり、この人、桃花の母親だわ!
まったく、からかい方が親子すぎるだろ……。
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