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第39話【義妹と家族会議】


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 地獄が始まった。


 あの後、現場を見られてしまった俺達はとりあえず桃花の家具を買って配送手続きをした後、桃花のお母さんに「とりあえず、家に帰ってゆっくり話しましょう」と言われて全員無言のまま帰宅し、速やかにテーブルにて家族会議が始まった。


 そして、沈黙を破ったのは桃花のお母さんからだった。


「率直に聞きます。二人はどういう関係なの?」

「そ、それは……お母さん……」

「どうなんだ? 悠木……」

「…………」


 一瞬、正直にすべて話すか迷った。

 それは『父さん達に迷惑はかけない』という俺の気持ちがあったからだ。

 だけど……


「お、お兄ちゃん……」


 横でチラリと『どうしよう……』視線を送る義妹をみて覚悟は一瞬で決まった。


「桃花と……付き合っています!」

「お、お兄ちゃん!?」

「……そうなのね」

「悠木……」


 確かに『父さん達に迷惑をかけない』のは大事だ。だけど、それ以上に俺が守らなきゃいけないのは桃花だ。

 ここで父さん達に嘘を付いて誤魔化しても、桃花にはお義母さん達に嘘を付いたという罪悪感が残ってしまう。

 なら、後悔を残さないためにもすべて正直に言うのが俺の答えだ。


 しかし、それがマズイと思ったのか桃花がとっさに反応した。


「違うのお母さん! ゆうくんが言っているのは……誤解で! わたし達はお互いに眠れないの! だから、わたしがゆうくんを誘惑して……一緒に毎晩くっ付いて寝ていただけなの! ゆ、ゆうくんはそれを勘違いしちゃっただけなの!」


 上手い嘘だ。と思うと同時にそれはダメだと思った。桃花はこの状況を自分が誘惑したから俺が勘違いを起こしたってことで解決させようとしている。嘘の中に真実を混ぜている当たり流石に頭がいい……だけど、それは俺が一番桃花にして欲しくないことだ。


「桃花!」

「ゆうくんは黙っていて!」

「悠木、そうなのか!? 父さんは羨ましいぞ!」

「貴方は黙っていてくれるかしら? ウフフ……」

「はい……」


 この家族会議から父さんの発言権が消えた。

 父さん……

 そして、場が静まり返ったのを見て桃花のお母さんが再び口を開いた。


「桃花、下手な嘘は止めなさい」

「そんな! 嘘なんかじゃ――」

「私達は貴方達が好き合っているのを知っていたのよ」

「え!」

「な!」


 私達って……まさか、父さんも?

 そう思って発言権を失った父さんを見ると無言でコクリと頷かれた。

 どうやら、本当のようだ……。


「そんなどうして……」

「ゆうくん! まだ認めちゃダメ」

「桃花、別に鎌をかけているわけじゃないから安心しなさい」


 知っていた……? 俺と桃花の関係を? 一体いつから……

 いろんな疑問が出てくる中、桃花のお母さんはゆっくりと話し始めた。


「最初に怪しいと感じたのは二週間くらい前かしら? 桃花の悠木くんに対する距離感が随分と近くなったからね」


 に、二週間前って……それはちょうど俺と桃花が一線超えそうになったあたりじゃないか!? そんな前から気づかれていたのか!?


「はぁ、むしろ何で気づかれないと思ったのかしら? あんなに毎晩上の貴方達の部屋からギシギシと音を鳴らして『お兄ちゃん♡』『お兄ちゃん♡』なんて声が漏れていたら誰でも気づくわよ……」


 はあ!?


「――ッ!?」

「うっ……」



 まさか、毎晩のアレが桃花のお母さんに聞かれていたなんて……そりゃ気づくよな。てか、桃花の声大きかったし、前の家は年季入っている古い家だったし二階から下の父さん達の寝室に音くらい響くよな……

 うわっ! なにこれ! 今までのが全部バレバレだって考えたら恥ずかしっ!


「むしろ、悠木くんが正直に話してくれて良かったわ……。これで、悠木くんも誤魔化そうとしていたら、ママどうしようかと思っちゃった♪」

「ひぃ!」


 マジで正直に話してよかった……


「本当に今回みたいに現場を押さえられたから、こうして注意しているけど、貴方達は学生なんだから、もう少し節度あるお付き合いをしなさい」

「え、お母さん……それは……」

「俺達が付き合っていることを認めてくれるんですか!?」

「だって、好きなんでしょう? あんな毎晩しちゃうくらい? 私達も再婚した身だから強く言えないけど……今日のことで悠木くんが誠実なのは分かったし、ちゃんと節度あるお付き合いならお母さん達は文句言いません」

「…………」コクコク


 無言で父さんも頷いた。どうやら発言権を失った父さんも認めてくれているようだ。


「やったね! お兄ちゃん♪」

「ああ、桃花!」

「ただ……」


 そう言って、桃花のお母さん……いや、お義母さんは付け足すように言った。


「その……エッチなことは……責任を取れるようになってからしなさい……」


「「まだしてない!」」


 思わず俺と桃花の声が同時に重なってしまった。

 そうか! 毎晩声が聞こえていたってことは俺と桃花が既に『している』と義母さん達に誤解されているのか!?


「誤解です! 俺と桃花は付き合っているけどまだ健全な関係です!」

「そうだよ! お母さん! 一体何を言うの!??」

「あら、でも、お母さん達の部屋には毎晩娘の甘い声が聞こえているんだけど……それでも二人は否定するの?」


 それは……桃花が一人で……ってことはどうでも良くて!

 まだ『してもいない』のにこのまま誤解されるのは何か嫌だ!


「それでも、俺達はまだ健全な関係のままです!」

「あらあら、でも二人とも好き合っていて毎晩一緒に寝ているんでしょう? なら、もうお母さん達は本番くらいしちゃっているものだと思っていたんだけど……」

「だって、そ、それは……」


 すると、桃花は涙目で俺を見てこう叫んだ。



「だって、お兄ちゃんがヘタレだから!」



 ……何か家族全員が申し訳ない感じに無言になった。






 『クラまい』書籍化目指してます!


 良ければ作品の評価、感想などを頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。


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