表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファントム・シェイド ~5000マイルの絆~  作者: 幸運な黒猫
第四章:虚言・怨恨・逆恨み(日本)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/86

第41話・厨二病仕様

「藤堂、お前さ……」

「なんだよ……」

「唐変木通り越してバカだろ、バカ」

「普通そこまで言うか?」

「ったく……」


 もうこの話を続けるのは無駄だと悟ったのか、八神は話を切り上げ、トリスの側面を覗き込んだ。『ん?』と目を細め、指でなぞる。


「なあ、ここってカードスロットじゃないか?」

「そこは放熱口だろ」

「でも熱が出てねぇし、丁度カードサイズだぜ?」

 

 ……言われてみると、そう見えなくもない。


「説明書は?」

「読んでない」

「すまん、聞いた俺が馬鹿だった。説明書より先にゲーム始めるヤツだったな」

「うっさい」


 ……眠気と死にかけで読んでいる暇なかったんだ。


 そもそも試作機だから、ボタンやスロットになにひとつ表記がない。電源ボタンのみ、マジックでマークが書いてだけだった。


「あ~、めんどくさいな……」

「どうせ待ってるだけなんだろ? 今のうちに読んどけよ」


 機能説明ファルダから、操作説明のPDFファイルを開く。解説ページはスクロールして、図解が描かれているページまで一気に飛ばした。


 ……図で見た方が早い。


「そこ、HuVer(フーバー)のライセンスカードスロット、だそうだ」

「通信機なのに免許証入れるのか? お前んとこの部長って、相当変わってるな」


 ……否定はできない。


 どうやらこれは、災害時の状況を司令部等でも情報共有するために、HuVerのモニターをダイレクトに表示できるシステムらしい。


 微弱な電波でも通信が可能になる、トリスの強みを最大限に生かした運用方法だ。電波塔が壊れても回線がパンクしても繋がるのだから、被災地支援機に乗せるには申し分がないシステムだった。


 これを考案・開発し、HuVerに載せた部長の慧眼には恐れ入るしかない。


 部屋ではエアコンの風音、窓の外からは買い物客の話し声。絶え間なく聞こえてくる店の喧騒。


 そのどれもが全く聞こえなくなる瞬間が、突然に――そして、やっと訪れた。



 ――ザザザ……ザザ……



 モニター表示がCall((呼び出し))からTalk((会話))に変る。


 ――つながった!


「はい。あの……藤堂です」

〔あ……えっと……あの……零士、です〕


 ものすごい微妙な空気が漂ってきた。電話じゃないから『もしもし』と言うのはなんか違う気がして、わけの分からない挨拶になってしまった。


 それは彼も同じだったようだ。多分、このおかしな空気を感じながら苦笑しているのだろう。改めて、言問さんの持つ営業スキルの凄さを痛感してしまった。……スパイだったけど。


「大丈夫ですか? 二人とも」

〔はい、無事ですよ、妹さん。捕虜だけど、今は士官待遇です〕

「捕虜で士官待遇……ですか」


 ……なにを言われているのか理解できずに、俺は八神と顔を見合わせてしまった。一体どうすれば捕虜のまま士官待遇になるのか、今度ゆっくりと聞いてみたい。


〔だから組織内で危険が及ぶ事は、まずないと思います〕

「ありがとうございます。零士さんも問題なく?」

〔ええ、今のところは。ところで、先輩はどうしていますか?〕


 ――きた。当然の質問だ。とりあえず織田さんの希望通り、()()()()()()()()()という事にして話を進める。


「言問さんは一旦、富士吉田支社に戻りました。望月部長に報告があるそうで」

〔そうですか。無事なんですね、よかった。……それで、あの女は?〕


(チッ……)


 あれだけ零士・ベルンハルトの事を想っている彼女の事を、『あの女』と恨みの籠った言い方をするのを聞いて……無性に心が痛かった。


 それでも、間髪いれずに聞こえてきた()()()()()()が、俺にとっての救いだった。


「え、えっと……捕まえて、警察に引き渡しましたよ」

〔そうですか、よかった〕


(——よくねぇよ、アホが)


 俺は慌てて八神の口をふさいだ。マイクが拾う音量ではないけど、もし聞こえてしまったらいろいろ面倒だ。


「え、と……それで、望月部長から零士さんにHuVerの扱いを教えるようにと、この通信機を預かったのですが」

〔ああ……部長らしいっす〕

「俺もただのオペレーターなので、戦闘のレクチャーはできませんけど。とりあえず、なにか不具合とかありますか?」

〔そうですね……〕


 と、そこまで会話したところで、零士・ベルンハルトは黙ってしまった。一瞬、通信が切れたのかと思ったが、すぐにトリスのレシーバーから色々な音が聞こえてきた。人の話し声やエンジン音、微かにサイレンの音も。


 まさかこれは……


〔くそ……〕

「零士さん、どうしました?」

〔政府軍が攻撃しかけて……hey Jack,How many enemies?〕


 英語が混じっている。どうやら向こうでは、テロ組織内の無線まで繋がっているようだ。


 彼は『敵の数』と口にしていた。戦闘が、始まるのだろうか……。


「零士さん、出るのですか?」

〔ええ、穂乃花(ほのか)は安全な所にいます、心配しないでください〕

「待って!」

〔どうしました?〕

「通信は切らないで。()()()()()()()()()()()()()()()()()

〔な……マジっすか〕


 俺はHVライセンスカードを取りだし、トリスのカードスロットに差し込んだ。メインモニターに-LINK START-の文字が表示されると同時に、今まで武骨な四角いモニターだけだったトリスが変形を始める。

 

 メインモニター裏から回転しながら飛び出てくる左右のサイドモニター。そして下部からもDVDトレイのごとく、小さなモニターがシュッと現れた。 

 

 出力メーターやフューエルゲージ((燃料計))、機体状況等が表示され、システムメッセージが流れる。


 ――まさしくこれは、HuVerのコックピット配置そのものだ。


「なんだよこの厨二病仕様は……」


 と、呆気にとられる八神。もちろん俺も驚きはしたが、『部長がやりそうな事だ』と考えたら、自然に、スッと受け入れられた。


 トリスのモニターには、色あせた古い機体が動き出す様子や、銃を持ち目出し帽をかぶった人たちが映し出された。これは、今まさに零士・ベルンハルトが見ている映像なのだろう。


 これなら、これを見ながら指示を出せるのなら、生存確率は格段に上がるんじゃないか?


「起動したらすぐに、操作をエンゲージ・アームに切り替えてください」

〔え、でもあれは精密作業用で……〕

「信じてください。俺のやるべき事は、君を死なせない事ですから!」


 できる、できないじゃない。——やるんだ!


「俺たちで、生き残りますよ」


※ エンゲージアーム

HuVer-WK(ホーバーク)に搭載されている、精密作業用のインターフェース・マニピュレーター。肩~手に装着したアームが、操縦者の動きにリンクしてHuVer-WK(ホーバーク)の腕を動かすシステム。

詳しくはこの後に記載する【設定資料:メカ好きに刺さる。HuVer-WKホーバーク・コクピット解説】にて。


ご覧いただきありがとうございます。


作風が気に入って頂けましたら、この”あとがき”の下にある☆☆☆☆☆をポチっと押していただけるとありがたいです

ブックマークも是非是非よろしくお願いします。


今後とも続けてご覧いただけると幸いです! 


©2019 幸運な黒猫 All Rights Reserved.無断転載・引用禁止。

著作権は作者に帰属しています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ