第23話・Gun for
戦線の前の方では、すでに政府軍とドゥラ軍がぶつかり合っていた。
政府軍は、巨大な盾とランスを構えた中央のHuVer部隊だけを先行させ、数十メートル離れた後方に、HVライフルを持ったHuVerが左右に展開している。そして、それらの機体を盾にして銃を構えた歩兵部隊が続く。
〔あれは、どういう作戦なんだ?〕
またもや別の声、少しダミ声の男だ。
〔リーダーよぉ、お前相変わらずアホか。作戦もなんもないわ。あんなもん、力押しの中央突破だろうが!〕
と、少年とケンカしていた野太い声が、今度はリーダーと呼ばれたダミ声の男に悪態をつく。
〔まったく、もう少しリーダーらしい発言はできないのですか?〕
こちらは、ケンカを仲裁した落ち着いた声。冷静にdisっている。
〔お、おまえら、うるさい〕
目の前には五機のHuVer。きっと、この五人でワンチームなのだろう。
味方の姿を見て安心はしたものの、ただ、なんというか……今ひとつ緊張感のない会話に、オレは入っていけなかった。
〔で、どうするよリーダー。高みの見物か?〕
〔うん、平地だしね〜〕
〔そういう意味じゃねぇぞ、ガキ!〕
〔またガキっていった〜。ガキって言う方がガキなんですぅ〜〕
〔ガキはガキらしく家で絵本でも読んでろってんだ。ったくよう……〕
彼らは、ここが戦場だとわかっていないのだろうか?
〔あ~、ところでさ……〕
――その時、そのひと言で、そこにいたHuVer部隊が一斉にオレの方を向いた。
〔白いの。お前、誰?〕
リーダーは、いきなり現れたオレに対して、威嚇するでも威圧するでもなかった。事務的に、冷静に、必要な情報だけを最低限の単語で聞いてきた。
「ここに味方がいるから合流しろと、ハリファが……」
〔ん~、それってもしかしてよぉ……〕
「もしかして?」
〔あそこで半壊してる本隊って事なんじゃね?〕
彼のHuVerが指さす方向をズームすると、つい今しがた戦闘開始したばかりなのにドゥラ軍の先鋒部隊がほぼ壊滅していた。
「え、助けないとやばいんじゃ……」
〔あ~、大丈夫。これを狙ってたんで〕
〔お、そろそろか? ジャック〕
冷静で落ち着いた声の主は、ジャックと呼ばれているようだ。
〔もう少しかな。右翼後方の狙撃隊が、あと20メートルほど前進したらってとこ。指示出します〕
彼が『指示を出す』といった瞬間、ターバンの少女はコックピットに飛び込んだ。……あの顔が、一瞬だけこちらを振り返った気がした。
五機のHuVerが一斉に配置に着く。一瞬にして戦闘態勢だ。
〔白いの。お前はこっちだ〕
「はぁ……」
〔リーダー、“白いの”じゃ呼びにくいのでコードネームをお願いします〕
〔俺に丸投げすんなよ〕
それは今決めなきゃならない事か? 別に白でもなんでも好きに呼べばいい。オレは、そんな事に気を回している余裕はないのだから。
〔ネーミングセンスないのは知ってますから。早く決めてください〕
〔急かすなって……〕
〔はいはい、あと十五秒ですよ~〕
ジャックのカウントがリーダーを急き立てた。そして、完全に投げやりな口調で、オレのコードネームとやらが決められた。
〔ああ……No.10でいいだろ。白いから10番。終わり〕
〔白いから10番? ……ってなんでだ?〕
〔センスゼロですね、リーダー〕
……10番? つっこみ? センス? 彼らはなぜこんなにふざけていられるのだろうか。
「あの、ところであなた方はいったい?」
〔3……〕
〔傭兵だよ傭兵。お前も似たようなものだろ。出るぞ、合わせろよ!〕
〔2……〕
「そんな、オレは……」
――傭兵なんかじゃない!
〔 Gun for!!〕
ジャックの合図で一斉に飛び出す傭兵たち。オレは作戦内容がわからず、言われるがままついていくだけだった。
傭兵部隊という”戦争のベテラン集団“に合流できたのは、生き残る目的からすればラッキーだろう。だけど、『人の命を金でやり取りする連中なんかと一緒にいたくない』という気持ちがあるのも確かだ。むしろその方が強い。
戦闘の直前まで笑い話をしている神経わからないし、わかりたくもない。そして多分、その感情が行動に出てしまったのだと思う。
この後オレは……この傭兵チームの作戦を、肝心なところでぶち壊してしまう事になる。
※ Gun for
~の狩猟に行く、つけねらう、撃ち落とそうとする等。本作では、その傭兵チーム独特の合図として使っています。




