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あの夜、僕は“普通”を失った。ヘブンズ・ウェイ!  作者: SodaKun


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9/30

おかえりなさい、あゆみ

清らかさ

君の瞳に

あったのに

今は濁りの

影が揺れてる

「……は?」


それが、死神狩り――小山レイカの言葉を聞いた瞬間の、俺の最初の反応だった。

陰陽師だと……?知っている。遥か昔、貴族に仕え、陰陽道を操っていた者たち。


「……説明しろ。どういう意味だ」


彼女の口元に、薄い笑みが浮かぶ。


「……なんで笑ってるんだよ?」

「なにか問題でも?」


怒りを込めて睨みつける。

人の人生をめちゃくちゃにしておいて、どうして笑える……?


「あなたの運命を嘲笑っているわけじゃないわ、坂本ゆうき。今、思い出した“面白い情報”に笑っただけ」


……面白い情報?


「……どういう意味だよ」

「教えてあげる。人が殺され、その魂が――特に“負の感情”に支配されたまま死んだ時……」

「……その時……?」


背筋に、冷たいものが走る。


「……ゆうき……」


耳元で、優しく――しかし凍りつくような声が囁かれた。誰かの手が、俺の腕に触れる。吐息が、頬にかかる。

……答えは、もう目の前にあった。視線を落とす。俺の手、脚、そして首に――

鎖が絡みついている。鎖の“根元”は――目の前の“女”の胸元へと繋がっていた。

白装束をまとった女。長い髪が顔を覆い、表情は見えない。やがて彼女は、ゆっくりと顔を上げる。蒼白な肌。

顔には赤い文様のような痕。首元の鎖が、ぎゅっと締まる。呼吸が……苦しい。


「……ゆうき……」


同じ声。心臓が早鐘を打つ。体温が、奪われていく。冷たい手が、俺の身体をなぞる。声が……出ない。

……なんて皮肉な運命だ。

この声も、この顔も――俺は知っている。レイカが、愉快そうに告げる。


「人はね、殺された瞬間――裏切られたという想いと、複雑で強烈な感情に支配されると……その魂は“歪んだ怨念の霊”へと変質する――怨霊よ」


鎖で俺を縛りつけている女は、霊。その名は――


「……おかえり、あゆみ」


レイカの声には、残酷な響きがあった。

脚が、震える。

首の鎖がさらに締まり、息が詰まる。

「ゆうき……あなたは私を殺した……いつも世話をしてあげた姉を……迷いもなく……助けようともしなかった……かすみのために……私を裏切った……!!」


言葉が、矢のように胸を貫く。膝から崩れ落ちる。鎖が締まり、骨が砕けそうだ。

……違う。彼女は、あゆみじゃない。


「裏切った……!!裏切った……!!ゆうき……!!」


“裏切り”という言葉が、鎖を締め上げる。……俺が、悪い。殺すべきじゃなかった。いっそ、自分が死ねばよかった。……俺は、楽な道を選んだ。かすみのために、ゆうきを犠牲にした。そのくせ……誰一人、救えなかった。兄として……失格だ。


「……気に病むことはないわ、ゆうき」


レイカを見る。

……気に病むな、だと?


「あなたは彼女を“解放した”。殺さなければ、死神と共に永遠に封印され、中でゆっくり喰われ続けていたのよ」


……だから、俺はあの道を選んだ。……楽な道を。かすみを救うため……いや、違う。本当は――ゆうきを“これ以上苦しませたくなかった”。……だから、殺した。……だから、涙が出なかった。――そう気づいた瞬間。鎖の締め付けが、わずかに緩む。……息が、できる。


「怨霊とは、復讐の霊。死の間際に生まれた“穢れた感情”が、魂を歪めるの。生者に干渉できる唯一の霊。鎖は、“死の原因となった者”へと繋がる」


……あゆみは……俺のせいで……穢れた。また、鎖が締まる。


「最悪の死に方をしろ、ゆうき……大切な人間が次々と失われるのを見届けてから死ね……死神でさえ、お前を嫌うだろう……助けを乞うても、死は与えられない……」


怒りと苦しみの叫びと共に、鎖が、再び締まる。


「怨霊に鎖を繋がれた人間は、普通の人間にも“視える”。

罪悪感が強いほど、鎖は締まり……やがて、殺される……彼女は、もう“姉”じゃない。死んだ時点で、縁は切れる。死者は、生者の味方じゃない。家族でも……近づくな。彼らは、あなたを殺したがっている」


……姉じゃない。……いや、姉だ。……違う。俺の姉は……こんな……。

――頭の中が、崩れていく。

私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇

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