表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの夜、僕は“普通”を失った。ヘブンズ・ウェイ!  作者: SodaKun


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/30

偽りの希望

偽りの

光を信じ

伸ばす手

触れた瞬間

霧にほどける

手が、震える。

身体が、言うことをきかない。

握っている刀も、かすかに揺れている。

……やるしかない。


「ごめん……あゆみ……」


俺は刀を頭上に振り上げ、全身の力を込めて――振り下ろした。一太刀。迷いのない、綺麗な一閃。苦しみを終わらせるための、斬撃。姉の首は、床へと転がった。


「――御札!」


死神狩りの女が、たった一言を放つ。瞬間、あゆみの身体に貼られた札が黒く染まり、そこから黒い液体の鎖が噴き出した。鎖は死体を絡め取るように巻き付き、締め上げるように収縮していく。やがて――それは、指二本で摘めるほどの小さな“玉”へと圧縮された。

俺は、その場に膝をついた。


「……俺は……俺は……ずっと面倒を見てくれて……いつもそばにいてくれた……大切な姉を……この手で……殺した……」


――最大の罪。今夜犯したこの悪は、決して消えない。

神でさえ、見逃してはくれないだろう。……なのに。涙が出ない。なぜだ。母親のような存在だった姉を殺したのに……。


「……俺は……何を……してしまったんだ……」


殺すくらいなら、いっそ自分が先に死ねばよかった。これは裏切りだ。姉の命を、もう一人の姉のために差し出した。……二人とも救う方法を、探すべきだった。


「……ゆうき……」


背後から、怯えた声が聞こえた。

振り向く。

――嘘だろ……?目の前に立っていたのは、かすみだった。傷ひとつない。瀕死だった痕跡すら、どこにも残っていない。


「か……かすみ……!?」


立ち上がろうとして、足がもつれる。それでも構わず、彼女のもとへ駆け寄った。


「姉ちゃん……!!」


抱きしめる。


「無事でよかった……!本当に……怖かった……もう……二度と会えないと思った……!」


あゆみを失った今、残された唯一の温もり。ほんの少しだけ、胸の痛みが和らぐ。


「ゆうき、大丈夫。私はここにいるわ。泣き虫な弟を、置いていったりしない」


……母が死んで以来、初めてだった。かすみが、俺を抱きしめ返してくれたのは。――その時。彼女が少し動いた瞬間、“金属の擦れる音”が聞こえた。

嫌な予感がして、かすみを見る。

――息が止まった。


「……かすみ……」

「なに?」


彼女の身体から、五本の鎖が伸びていた。両手から二本、両脚から二本、そして――心臓から一本。

……死者の魂に繋がる、あの鎖だ。全身の感情が、沸騰した。今、俺の中にあるのは――怒りだけ。


「……このクソ女……!!」


俺は死神狩りの女を睨みつけた。


「約束を破ったな!!卑怯者!!あゆみを殺せばかすみを助けるって言っただろ!!」


かすみが、戸惑った顔で俺を見る。


「……え?誰を殺したの?あゆみを……殺したの……?」


困惑。純粋な混乱。


「かすみ姉……今は説明してる暇はない!こいつを――先に片付ける!!」


俺は女の前に立つ。


「約束を破っただろ!!助けるって言った!生き返らせるって言っただろ!!それなら……俺は……あゆみを……殺さなかった……!!」


怒りと憎しみが、抑えきれない。彼女は、鼻で笑った。


「私は約束を破ってないわ。“癒す”と言っただけ。死体は綺麗に治ってるでしょう?」

「……は?」

「契約は、“あゆみを殺す代わりに、かすみを癒す”。“生き返らせる”なんて、一言も言ってない」


……歪んだ笑み。


「悪いのは、あなたよ。もし最初から言う通りに動いていれば、かすみは生きていた」


……俺の……せい……?

……俺の……せいだ……。

視線が、床へ落ちる。

そうだ。

俺が……迷ったから……。

二人とも救おうとして……結局、誰も救えなかった。


「……ようこそ、坂本ゆうき。ここが、あなたの世界。おとぎ話の世界じゃない」


俺は顔を上げる。

怒りは消えない。だが――これは彼女への怒りじゃない。自分自身への、腐り落ちるような怒りだ。


「……お前は何者だ……?」

「小山レイカ。陰陽師よ。そして……どういうわけか、あなたは“追加プレイヤー”」

「ふざけるな……俺の人生を……めちゃくちゃにしやがって……」

「救ってあげたのに、感謝もしないのね」

……救った?

今日の出来事は、俺にとって“死”と同じだ。生き残るくらいなら、死んだ方がマシだった。

仏は……

俺に情けをかけるべきじゃなかった。


「……死にたい?情けない考えね。神は、毎日幸せを与えてくれるわけじゃない。あなたは“選ばれた”のよ。生きなさい。楽しみなさい」


ふっと、彼女は微笑んだ。


「……何が……そんなに可笑しい……?」


冷え切った声で問いかける。


「人はね――強い負の感情を抱えたまま死ぬと……」

「……と……?」


――嫌な予感がする。彼女が笑った理由。

次の言葉が、とてつもなく嫌なものだと、本能が告げていた。

私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇

昨日は章を公開できず、大変申し訳ございません。昨日はとても忙しかったので、どうかご容赦ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とても不気味ですね。章が短いので、ライトノベル版(アヴェスターか何かのような)を巻ごとに出版してみませんか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ