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あの夜、僕は“普通”を失った。ヘブンズ・ウェイ!  作者: SodaKun


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7/30

契約の刃

闇の先

何も知らずに

足を出す

心は震え

星だけが知る

「――殺しなさい」


……は?


「殺しなさい、ゆうき。無駄にしている時間はない。あなたが――殺すのよ」


目を見開いた。


「何を言ってるんだ!?姉ちゃんを助けるって言っただろ!!なのに、なんで殺せなんて言うんだよ!?」


彼女は小さく溜息をついた。

その視線は冷たく、冗談ではないと分かる。本気だ。間違いなく。


「これが、あなたの姉を救う唯一の方法。方法の名は――“殺すこと”。殺すか、封印するか。選びなさい、坂本ゆうき」


俺は彼女の襟元を掴んだ。


「ふざけるな――!助けるって言っただろ!!俺は絶対に殺さない!姉ちゃんなんだぞ!!」

「その手で、私に触れるなんて――」

「……は?」


次の瞬間、膝から力が抜けた。掴んでいた手が離れ、床に崩れ落ちる。……立てない。

吐き気が込み上げ、胃の中のものを吐き出した。視界が揺れる。何度もえずき、立ち上がれない。


「お前は弱い。この俺に立ち向かおうとしたくせに、たったこれだけの精神力すら耐えられないのか」


視界の向こうで、彼女がぼやけて見える。――これだ。“場”だ。彼女の周囲に広がる霊的な圧。さっきまでは、こんなもの感じなかった。どうして……?どうやって隠していた……?そして……なんで、こんなにも強い……?


「……は……?」


ふっと、身体が軽くなる。吐き気が止まり、視界が澄んでいく。手足も動く。


「私が君を生かさせてくれていることに感謝しなさい。もし私が君のために力を少しでも強めていたなら、私の魂の圧力で君は蟻のように潰れていただろう」


彼女は笑った。

……楽しんでいるように見えた。いや、正確には――どうでもいいのだ。その笑顔は作り物だと、直感で分かる。だが、はっきりしていることが二つある。ひとつ――彼女は俺を、何かの計画の“切り札”として必要としている。もうひとつ――彼女は、本気であゆみを殺すつもりだ。


「刀を掴んで彼女を殺せ。これが最後のチャンスだ。さもないと、お前の愛しい妹を封印し、お前も後で殺す」


俺は刀を掴み、立ち上がる。口の中に、吐瀉物の苦味が残る。身体は汗でびっしょりだ。


「……俺は……殺さ……ない……」


彼女の口元に、冷たい笑みが浮かんだ。


「ふぅん。事態の変化に気を取られて、“もう一人の姉”のことを忘れたの?生死の境を彷徨っている方の姉よ、坂本ゆうき」


全身に、冷たいものが走った。

心臓が早鐘を打つ。……どうして知ってる!?怖すぎる。俺のことを、全部見透かしているみたいだ。彼女は俺の頬に触れた。指で顎を掴む。


「これはね、チベット僧に教わったものじゃない。私の“固有能力”よ。彼女の魂が、ものすごい速度で削れていくのが分かる。つまり――死は、もう目の前」


足が震える。……かすみを忘れていた……。治療が必要なんだ……。


「私がその気になれば、癒してあげられるわ」

「……なら……お願いだ……助けて……!」

「取引をしましょう。――鬼とのけいやくよ」


歯を食いしばる。

拳を握りしめる。……もう、俺の手には負えない。

俺は彼女の目を見た。


「……もし俺が……あゆみを殺したら……本当に……かすみを助ける保証はあるのか……?」

「契約を結べばいい」

「……契約?」


彼女は頷いた。


「刀を渡しなさい」


俺は刀を差し出した。

彼女は一閃――俺の掌を切り、続けて、自分の掌も切った。速すぎて、痛みすらなかった。彼女の手から、血が滲む。

彼女は、俺の手を握る。


「――神誓(しんせい)


眩い光が、重なった手の間から溢れ出す。血が宙を舞い、絡み合う。……魔法か……?血は光を放ち、やがて“石”のような塊となって浮かび上がった。


「……それは?」


「神との誓約。ここに社がないから、血を供物にして儀式を行ったの。あなたはあゆみを殺す。その代わり、私かすみを癒す。」

「ふざけるな!!そんな契約、認めない!!」


俺は叫んだ。


「知らないわ。勝手に血の儀式を許したあなたが悪い」

「……くそっ……!」


彼女は俺の横を通り過ぎ、床に倒れている霞の方へ向かう。


「……もし、俺がやらなかったら……どうなる……?」


「契約は、どちらかが破れば無効。……ただし、代償はあるわ。私はかすみを癒さない。そしてあなたがあゆみを殺さなければ――神は、あなたが最も大切にしているものを奪うか、壊す」


彼女は、刀を投げてよこした。


「選びなさい」


私は目を閉じた。

刀を受け止めた。

私の人生。あなたは死を恐れているか?

私はこの質問の答えを心の底で知っている。私は死を恐れていない。生まれた者は必ず死ぬことを誰もが知っている。彼らは死を恐れているのではなく、未知のものを恐れているのだ。彼らの死をもたらすであろう未知のものを。未知のものが彼らを死に怖がらせるのだ。彼らは死をもたらすであろうものを恐れているのだ。


「……ごめん……。俺が……“未知”になる……あゆみ……」

私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇

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