希望
かすかな灯
闇を裂くよう
揺れながら
それでも胸に
朝は生まれる
罪悪感に締め付けられ、息をするのも苦しい。
――これが“罪の鎖”か。
……当然だ。
姉をこの手で殺した俺に、生きる資格なんてない。死ぬべきなのは、俺だ。
「……彼女に支配されているわ。自分を取り戻しなさい。さもないと、死ぬわよ」
レイカが言った。
……問題は、俺だ。彼女に対する感情が、ぐちゃぐちゃだ。憎んでいるはずなのに、どこかで感謝している自分もいる。
「落ち着きなさい、坂本ゆうき。過去じゃなく、“今”を見なさい」
現在?過去?そんな言葉はもはや常識ではない。過去はかつて現在だった。そして、その現在は破滅した。人の過去は必ず未来、つまりあなたの現在に戻ってくる。過去が未来を破滅させるのに、現在について語ることなどできない。
亡き姉・あゆみの霊の手が、私の体を彷徨っている。私は怨霊に抱かれている。姉は怨霊だ。彼女がこうなったのは――
「……理由が欲しいんでしょう?」
レイカを見る。あゆみは、もう俺を罵らない。“姉じゃない”と拒絶したことで、ほんの少しだけ心が軽くなった。だが、罪悪感は消えない。
「……どうして俺が生きていていいんだ?俺は姉を殺した。何一つ守れなかった」
「理由は簡単よ。――二度と、同じことを起こさせないため」
「……俺に何ができる?お前みたいな強者ですら、“殺す”方法しか思いつかなかったのに。無力な俺に、何ができる?」
「……“希望”よ」
……希望?
希望……?
そんな言葉、今の俺に必要か?
希望なんて――俺には、似合わない。
「……ふざけるな。そんなもの、信じるかよ」
「“希望”はね、坂本ゆうき。人と世界を変えるほど、強い言葉よ。……ねえ、誰が“希望”を必要としないと思う?」
「……俺みたいな、弱い人間だろ」
レイカが、突然笑い出した。止まらない。だが、その笑いには嘲笑はない。どこか――楽しそうだった。
「……笑えるところがどこにある」
「冗談でしょ。姉妹二人を亡くして気が狂ったの? 君のそういうところが好きだ。まさに喜劇だ」
……ひどい言い方だ。
レイカは咳払いをして、続ける。
「“希望”を必要とするのは、弱者よ。未来に縋らなきゃ、生きられない者たち。“いつか幸せになれる”と夢を見ること――それが、希望」
彼女は、指を俺に向ける。
「“希望”を必要としないのは、強者。彼らは知っている。自分で掴めると。未来を夢見るより、“今”を掴み取る」
彼女の手が、頬に触れる。
その温もりが、じんわりと伝わる。
……希望、か。
「あなたは希望を否定した。それだけで、自分が思っているより、ずっと強い。この世界は、おとぎ話じゃ動かない。理で動くの。それを理解しているあなたは――もう、弱くない。過去の過ちから学びなさい。あなたなら、同じ悲劇を止められる」
……涙が、一粒だけこぼれた。
これが……希望なのか?
俺を縛っていた鎖が、少しずつ緩む。もう、痛くない。
「ゆうき……あなたは私を殺した……天は見ている……神々は必ず罰を与える……私は……絶対に許さない……!!」
あゆみが私への憎悪を叫んだ。違う。怨霊が私への憎悪を叫んだ。
麗華は膝まづき、私を抱き寄せた。私を殺そうとする怨霊とは正反対の抱擁だった。
「……あなたを導く。私が生涯で学んだすべてを、教える」
彼女は、そう囁いた。
~誰の視点でもない~
灯りのない、広大な暗室。紙の擦れる音、囁き声、怒号が飛び交う。会議場のような空間。コの字型の長机。四十六脚の椅子――すべて埋まっている。
「逃がしたぞ!」
「忍部隊が監視していたはずだろう!」
「どうやって抜け出した!?」
怒号が飛び交う中、一人の男が手を上げる。
一瞬で、沈黙。
「報告しろ、ギン」
重厚で滑らかな声。
「はい、我が主。……結果は芳しくありません。“重要なカード”を失いました」
ギンは、書類を差し出す。
主は報告書に目を通し、眉をひそめる。
「……小山レイカ。死神狩り……?リスト外の人間に奪われるとは……情けない」
軽く笑う。
「だが……可愛いな。で、その“可愛い子”は、何を奪った?」
ギンは、もう一枚の報告書を差し出す。
主の目が、見開かれる。
「……これは……痛い損失だ。回収は不可能だな」
彼は、冷たく命じた。
「問題になる前に、殺せ」
奪われた“切り札”――それは、人間。名は――
「坂本ゆうきに、懸賞金二百万円をかけろ。 可能ならば生き、必要ならば死ぬ」
私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇




