4つのボール
四つ影
身の内に揺れ
増えしもの
正しき形
誰も知らない
「レイカ……!」
思わず、緊張した声が漏れる。
「しっ。静かに」
そう言われ、俺は慌てて口を閉じた。
御魂を制御するために訓練が必要だとは聞いていたが……まさか“これ”が訓練だとは思わなかった。俺は――ほぼ裸だ。いや、完全に裸ってわけじゃないが、ほとんど肌が見えている。今の俺は下着一枚だけだ。
「一つ聞いてもいいか……? これに何の意味があるんだ?」
恥ずかしさで頬が熱くなる。同い年の女の子に、自分の体を見せてるとか……正直、きつい。
「訓練の一環よ。あなたの細い体なんて興味ないわ。変な勘違いしないで。前にも言ったでしょ、あなたはまだ私のタイプじゃないって」
俺は眉をひそめる。
「それ、逆に混乱するんだけど……。“まだ”ってどういう意味だ? それってつまり――」
顔が一気に赤くなる。こういうのって、普通は“将来ワンチャンある”って意味じゃ――
パチンッ!
「いてっ!!」
額を思い切り弾かれた。マジで痛い。
軽くじゃない。ほぼビンタ級だ。どんだけ強いんだよこいつ。
「余計なこと考えるな。頭は“強くなること”に使いなさい。これが第一レッスンよ」
「第一レッスン……?」
彼女はコクリと頷いた。
「そう。第一レッスン。私に期待しないこと。私はあなたの家族でも友達でもない。“生き残ること”を目的とした人間よ」
その言葉は冷たかった。
「私たちのコンビ、“ビザール・デュオ”の第一原則は――」
彼女は迷いなく言う。
「生存がすべてに優先する。弱い人間は嫌い」
「……え?」
思わず聞き返す。
「今なんて言った?」
「弱い人間は嫌い。そして今のあなたは、その“弱い人間”の中にいる」
ズバッと刺さる。
「私に並びたければ、あなた自身の水準を上げなさい」
俺は思わず口を開けたまま固まる。
「ふざけるなよ! どうして俺が弱いなんて言える!? 俺はお前の世界の人間じゃない! お前の世界は魔法とか――」
「陰陽」
「どっちでもいい! 要するに、そんな環境で生きてきたお前と、同じ階層に一日でなれるわけないだろ!?」
彼女は静かに首を振る。
「一日で強くなれなんて言ってない。私と同じ強さになれとも言っていない」
「じゃあ、どういう意味だよ?」
彼女はまっすぐ俺を見る。
「第一レッスンの意味、理解してないのね」
一歩近づく。
「簡単よ。“生き残ることがすべて”」
その声は低い。
「弱い者は死ぬ。強い者が生き残る。それだけ――ジャングルの掟」
俺の目が見開かれる。
その言葉で、さっきまでの恥ずかしさなんて全部吹き飛んだ。
彼女の声は、氷みたいに冷たかった。
「なあ……レイカ」
俺はゆっくりと聞く。
「もし、お前が生き残る確率が上がるなら……俺を見捨てるのか?」
彼女は一瞬も迷わなかった。
「ええ。迷いなく見捨てる。そして逃げる」
――即答だった。
「これが第一レッスン。もしあなたの弱さが私の命を危険にさらすなら――」
彼女の目が細くなる。
「私はあなたを置いていく。あるいは、自分の手で殺す」
冗談じゃない。その声には一切の迷いがなかった。冷たい人格が戻ってきている。彼女は、本気で“生き残るためなら何でもする”人間だ。
その氷のような瞳が、俺の魂を貫く。
「安心しなさい、坂本ゆうき」
ふっと声が和らぐ。
「命を賭けて守るって約束したでしょ?」
「……」
「だからこそ、あなたを鍛えるの。私にとって“役に立つ存在”になってもらうために」
俺は思わず息を飲む。
――この世界に、タダのものなんてない。人の優しさでさえ、代償がある。彼女が俺を守るのは、俺に価値があるからだ。もし俺が“何でもない存在”なら――きっと、もう見捨てられている。英雄だって、結局は自分本位なんだ。
「……やる」
俺は小さく言った。
「強くなる」
「“やる”のよ。“やってみる”じゃない」
彼女ははっきりと言う。
「あなたは強くならないといけない」
俺は黙って頷いた。
「……訓練に戻るぞ」
―第三者視点―
その頃、ゆうきたちの知らない場所で――二人の人物が密かに会話を交わしていた。
話題は、“天道”と呼ばれるこの旅について。
「ねえ。私たち、このイベントに介入すべきかしら?」
女が、恋人に問いかける。
この二人――アレクサンドロヴナと正宗である。
「いやいやいや、落ち着けって。そんなに力みすぎると、髪が白くなるぞ?」
「……私の髪をバカにしてるの?」
「してない!!」
恋人の怒りに耐えられる男など、この世に存在しない。
彼女は頬を膨らませる。
「もう、怒ったわ。どうせあなた、坂本ゆうきって子に関して何か企んでるんでしょ?」
正宗は素直に頷く。
「ああ、その通りだ。間違いなく、あの旅の勝者は坂本になる」
「何を見たの?」
「何をって……気づかなかったのか?」
「え?」
彼の言葉に、彼女は困惑する。正宗が間違えることなどありえない。彼はかつて、最も賢い男だった。
「焦らさないで。言いなさい。私たち、長い付き合いでしょ?」
「ああ、そうだな。俺は自分よりお前を信じてる。それが、愛してる理由だ」
そう言って、彼は彼女を抱き寄せる。
「坂本には“才能”だけじゃない。もう一つ、決定的なものがある」
「何?」
彼はニヤリと笑った。
「……殺さないって約束してくれ」
「約束するわ」
「よし」
彼は声を落とし、彼女の耳元で囁く。
「坂本にはな――“玉が四つと棒が二本ある”」
「はあああああ!?」
私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇




