到達
遠い空
指を伸ばして
届かずも
夢の光は
胸で輝く
〜ゆうき視点〜
俺たちは時計が午前0時、つまり12:00AMを指すのを待っていた。この大会の開始時間。俺を殺すことを裏の目的とした――究極のトーナメントの始まりだ。
「準備はいい?」
レイカが聞いた。
俺は頷いた。
「何が起きても大丈夫だ。俺たちはチームだからな」
「うん。行こう、ゆうき! 行こう!」
俺たちは、真夜中の瞬間を待っていた。大会の開始。その時――レイカのスマホが再び鳴った。
また、さっきの番号だ。
「レイカ! 正宗さんからだ」
彼女は電話に出て、スピーカーにした。
「もしもし」
「夜遅くに悪いね、横浜さん。こんな時間に電話するのは普通じゃないが……理由がある」
「今度は何?」
レイカが短く聞く。
「さっき政府が公開したルールを読んでいたんだ」
正宗は続けた。
「そのルールによると、参加者は自分の番号を体につける必要がある。誰が誰か分かるようにするためだ」
俺はすぐに理解した。
「つまり……そのバッジが俺を識別するための追跡装置ってわけか」
「そういうことだ」
「その番号バッジはどこで手に入るんですか?」
俺が聞くと、正宗は笑った。
「俺がいるのに心配するな。玄関を開けろ。最速の配達が届いている」
その瞬間――
コンコン
ドアがノックされた。
「ゆうき。ドアを見て」
レイカが言った。
俺は玄関へ向かい、ドアを開ける。
「えっと……こんにちは」
緊張しながら挨拶する。そこに立っていたのは――アレクサンドロヴナだった。……なるほど。
正宗さんの言っていた"最速の配達"ってこれか。彼女はガムを噛みながら、風船を膨らませている。
「はい。参加者用のバッジ」
そう言って、二つのバッジを俺に渡した。俺たちの番号が書かれている。
「じゃあね」
彼女は去ろうとした。
「待って!」
彼女は立ち止まる。
俺は言った。
「……助けてくれてありがとう。俺の命を救ってくれたこと、本当に感謝しています。あなたと正宗さんには大きな借りがある」
彼女は肩をすくめた。
「別に。あんたを助けたのは正宗のためよ。彼がいなかったら、あんたなんて見捨ててた」
……どうしてだろう。
俺が出会う美人は、みんな言葉が冷たい。
「一つ聞きたい」
「早く言って。正宗のところに戻らないと」
俺は聞いた。
「どうして俺たちを助けるんですか? しかも間接的に。どうして直接助けないんですか?」
彼女は鼻で笑った。
「それは私も正宗に聞いたわよ。もし私が本気を出せば、あんたの敵なんて全部潰して終わり」
「……」
「それなのに、なんでこんな面倒なことしてるのかってね」
「じゃあ、どうして?」
その時、電話から正宗の声が聞こえた。
「理由はもうアレクサンドロヴナに説明した」
彼は少し笑う。
「彼女の俺への愛は強すぎるからな。俺が危険なことをするのが嫌なんだ」
レイカが口を開いた。
「もし本当にあなたたちが一撃でこの大会を終わらせられるなら――」
彼女は真剣な声で言った。
「どうしてそうしないの?」
俺も同じ疑問を持っていた。
正宗は答えた。
「いい質問だ、横浜さん」
彼は少し間を置いた。
「簡単に言うと……敵側にも切り札がある」
「切り札?」
「普通の敵とは比べものにならない力を持った存在だ」
空気が重くなる。
「俺はその相手に自分の正体を晒したくない」
「そんな敵がいるの?」
「そうだ」
正宗は続けた。
「もうすぐ真夜中だ。俺たちができるのはここまで」
そして言った。
「それと……スマートフォンは禁止だ」
「待って!」
俺は急いで聞いた。
「この旅のスタート地点はどこなんですか?」
一瞬の沈黙。
そして正宗は言った。
「スタート地点なんて存在しない」
――プツン。
電話が切れた。
「くそ……」
俺は振り返る。アレクサンドロヴナの姿も消えていた。……速すぎる。
「残ったのは俺たちだけだな」
俺が言うと、レイカは少し微笑んだ。
「ねえ」
「ん?」
「私たちのチームの名前、どうする?」
「え?」
「チーム名よ。日本で話題になるなら、名前くらい必要でしょ」
彼女はいたずらっぽく笑った。
さっき俺が言った言葉を真似している。
でも……こういう一面を見るのは悪くない。
「じゃあ……」
俺は考えた。
「ビザール・デュオか?」
「いいじゃない」
「本当?」
彼女は頷いた。
そして胸を張って言った。
「ビザール・デュオは、日本だけじゃなく世界で話題になるわ!」
……この旅で、彼女のいろんな一面を見ることになりそうだ。きっと長い旅になる。
その時、彼女は真剣な顔で言った。
「最初の教え」
「え?」
「私に希望を持たないこと」
俺は彼女を見る。
「私はいつもあなたを助けられるわけじゃない。すべての敵を倒せるとも限らない」
彼女は続けた。
「あなたも強くならないと」
俺は頷いた。
「分かってる。俺も……お前の隣に立ちたい」
「隣?」
彼女は笑い出した。
俺の顔が一気に赤くなる。
「な、なんで笑うんだよ!」
俺が言うと、彼女は笑いながら答えた。
「だってあなた、自分が私と対等になりたいって言ったのよ?」
「それがどうした!」
「私のレベルに追いつくには、百万年は必要ね」
彼女はニヤリと笑った。
「バカにしてるだろ!いつか俺はお前を超える!」
「夢の中でね」
彼女は言った。
「あなた、私の前で顔を真っ赤にしてるじゃない。気づいてないと思った?」
俺の顔がまた赤くなる。
レイカは静かに言った。
「今のあなたは――私の届かない場所にいる」
俺は彼女を見つめた。
そして言った。
「いつか……そこに辿り着く」
私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇




