火に油を注ぐ
赤き炎
夜の静けさ
揺らしつつ
消えぬ思いを
胸に灯せり
「自己紹介をしろ! 戦士というものは、戦う前に自分の名を語るものだ!」
檜山が叫ぶ。
「俺は檜山信行!賞金稼ぎ按排第九位だ!これまでに百二十三人の陰陽師を殺してきた。どいつも強かったが……お前ほどじゃなかったな!」
空気が張り詰める。檜山の体から漏れ出している御霊は、まるで炎のようだった。燃え上がるような気配。彼の足元の地面が、その強烈な御霊の熱で溶け始めている。それなのに――正宗はまるで何事もないかのように立っていた。……こいつはいったい何者なんだ?レイカのような陰陽師なのか?それとも、まったく別の存在なのか?なぜこんな場所にいる?
「俺か?」
正宗は肩をすくめる。
「さっきも言っただろ。俺はこのレストランのオーナーだ。自己紹介なんて必要ない。肩書きだけで人間は分かるもんだ。この世界ではな、肩書きがすべてだ!」
彼かは胸を張った。
「俺はこの世界でナンバーワンのシェフだ。さあ……お前を料理してやる」
二人の口元に同時に笑みが浮かぶ。
「もう手加減はしねぇ!!」
檜山が叫んだ。彼は正宗に向けて手を突き出す。体から炎のように漏れていた精力が、今度は掌の中心へと集中していく。……さっき俺に撃った精力弾とは違う。
「待て……」
俺の背筋が凍った。
「まさか……あれが本物ってやつなのか?」
目を見開く。
あまりにも巨大な精力。霊的精力の濃度が、掌の中心から溢れ出している。御霊が炎と熱をまとって踊っている。その霊場はまるで地獄の業火のようだった。すべてを焼き尽くす炎。
「この攻撃を生き延びたら……お前に敬意を払おう、最高のシェフよ!」
正宗は笑った。
「よく喋るな。落ち着けよ。お前、地球温暖化を加速させてるぞ。暑すぎるんだよ」
肩を回しながら言う。
「まあ……悪いけどさ。俺の方が強い」
檜山は笑いながら――攻撃を放った。轟音。それは、漫画で見るような精力砲だった。道路が溶け始める。この距離でも、恐ろしい熱を感じる。
――ドォォォン!!
爆発。あまりの光に目を閉じた。それでも爆発の熱が瞼を焼く。どれくらい経ったのか分からない。耳から音が消えていた。耳鳴りすらない。……聴力を失ったのか?ゆっくり目を開ける。熱が強すぎる。体が焼けるようだ。手を見ると、皮膚が黒く焦げていた。火傷の跡が手いっぱいに広がっている。
……生きているのが奇跡だ。周りを見渡す。どこもかしこも煙だらけ。これが……檜山の本当の力。やがて煙が少しずつ薄れていく。地面に倒れたまま、俺は三十分ほど動けなかった気がする。最初に見えたのは――檜山だった。
立っている。
だが――口を大きく開け、目は何かを見て凍りついている。……何に驚いている?
「おーい。髪、焦げてるぞ」
それが、耳が戻って最初に聞いた言葉だった。
振り返る。
正宗が――無傷で立っていた。かすり傷一つない。
「いやー、あのハゲ野郎、ほんと短気だな。いきなり終末レベルの爆発とかさ。俺の大事な髪型が台無しになるとこだった」
肩をすくめる。
「まあ、あいつは気にしないんだろうな。そもそも髪がないから」
そして大笑い。
俺は再び檜山を見る。まだ前を見つめている。……正宗はここにいる。なら、檜山が見ているのは――?
煙が完全に晴れた。そこに――一人の女が立っていた。腰まで届く長い白髪。そして血のように赤い瞳。……また超人か?
「戦士は決して退かない」
女が静かに言う。
「私の名は――イリーナ・アレクサンドロヴナ・ジューコワ」
……長い名前だ。
その名を聞いた瞬間、檜山の目が見開かれた。まるで幽霊を見たかのように。
「まさか……!お前は……第二次世界大戦のソ連の伝説の司令官の……子孫か!?」
女は冷たい声で言った。
「黙れ。祖先は私を定義しない。彼の栄光は彼のもの。そして私の栄光は私のものだ」
檜山が笑う。
「運が良すぎる!!二百万円の雑魚を殺しに来ただけだったのに――人生最高の戦いが待ってるとはな!!こんな名門の血を引く相手に手加減したら、俺の名が廃る!!」
檜山が突進した。拳の連打。だが――女はまったく動いていない。それなのに、すべての攻撃が彼女をすり抜けていく。
「次は……私の番」
その瞬間。彼女は一歩も動いていないのに――檜山が吹き飛んだ。
「な……!?」
俺の口から思わず声が漏れる。檜山の動きは速い。俺には予測するのがやっとだ。だが、この女の速さは――それを遥かに超えている。どうしてだ?指一本動かしていないのに。
「疑問で頭がいっぱいだろ?」
正宗が言った。
俺は彼を見る。
「どうしてあんなことができるんだ?」
正宗は笑う。
「何が起きてるんだって思ってるだろ?魔法か?それともトリックか?指も動かさずに人を吹き飛ばすなんてあり得ない……そう思ってるんだろ?」
俺は頷いた。
……こいつ、チベットの僧侶にでも修行を受けたのか?俺もその僧侶に会ってみたい。
正宗は肩をすくめた。
「お客さん。まだ普通の人間の視点で考えてる。超常の世界を見たあとでも、あいつらの強さを人間の基準で測ろうとしてる」
彼は煙の向こうの戦いを見ながら言った。
「いいか、友よ。あいつらは、とっくの昔に人間の領域を超えてるんだ」
私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇




