精製
清き水
身と心まで
洗うとき
静かな光
胸に満ちゆく
「あなたは自分を祓い清める必要があるわ」
「祓い清める?」
彼女はうなずいた。
「穢れと清め。不浄と清浄。これは人間にとって最も大切な概念よ。古い文献によれば、人間は本来、清めの側に属する存在。生まれた時は善なる魂を持っている。でも罪を犯したとき、その魂は穢れに染まってしまう」
「じゃあ……禊をやるのか? あれって滝が必要じゃないのか? 俺の訓練は家でやるって言ってただろ」
「だから、別の方法を使うのよ」
俺は首をかしげた。そんな方法、聞いたことがない。家でできる浄化法なんてあるのか?
「この方法は鎮魂帰神と呼ばれているわ」
「鎮魂帰神?」
「そう。魂を清めるための方法。鎮魂は“魂を鎮めること”、帰神は“神へ帰ること”。瞑想に似ているけど、完全に同じではない。ヨガにも似ているけれど、それとも違う」
「で、どうやるんだ? 説明がややこしいぞ。お前、教師としてはあんまり上手くないな」
「私の言う通りにしなさい!」
その瞬間、彼女は周囲に御魂を漏出させた。
「わ、分かった!!」
俺は反射的にうなずくしかない。今の俺では彼女に逆らえない。
「始めるわ。これはすべての基礎になる修行よ。四つの段階に分かれている。最初は神呼吸」
「最初の段階?」
「準備段階。足を肩幅に開いて立ちなさい」
俺は言われた通りに立った。
「息を吸いながら、地の中心から天へ向かうように手を上げる。そして吐きながら下ろす」
……地と天?
まあいい。
息を吸いながら腕を上げ、吐きながら下ろす。
「四回、手を打ちなさい」
俺は四回、柏手を打った。
「その柏手は宇宙の四元素——火・水・土・風を象徴している。次は鳥船。これは動作のある修練よ」
準備運動みたいなものか。
「左足を前に出して」
俺は左足を前に出した。
「手を前に突き出すとき“ホー”と叫び、引き戻すとき“エイ”と叫ぶ。大地を押しているイメージを持ちなさい」
「大地?」
俺は想像する。巨大化した俺が地球を押したり引いたりしている姿。三流悪役みたいに笑いながら。
レイカはため息をついた。どうやら考えを読まれたらしい。
「地球じゃない。自然の“土”よ」
「ああ、なるほど」
俺は手を前に突き出す。
「ホー!!」
大地を押しているイメージ。そして手を引く。
「エイ!!」
「次は右足を前に出して、同じことを」
俺は右足でも同じ動作を繰り返した。
「次は?」
「次は振魂。魂を揺さぶる修行よ」
「魂を揺さぶる? どうやって?」
「普通に立って。両手を組み、お腹の前で構える」
俺は言われた通りにする。
「その手を上下に強く振りなさい。頭の上に向かうとき息を吸い、足元に向かうとき吐く」
俺は激しく手を振る。頭の方へ上げるとき吸う。下ろすとき吐く。
「この修行は魂を振動させ、力を解放するためのもの。意識を体の中心に集めなさい。御魂を感じて。集中して」
俺は目を閉じた。何かが違う。体の中に、言葉にできない感覚がある。腹の奥が妙に温かい。全身のエネルギーが一点に集まっているような感覚。
「今、御魂の漏出は止まったわ」
俺は目を開いた。
「こんな簡単に御魂を制御できるのか?」
「ええ。人間が神道の修練を忘れているだけ」
「なるほど……」
「最後は帰神。静かな瞑想よ。吸うとき、魂が空へ昇るイメージ。吐くとき、宇宙のエネルギーを取り込むイメージをしなさい」
俺は目を閉じる。
空を想像する。
どんな空だ?
星空か?
月の空か?
太陽の空か?
果てしない宇宙か?
俺は人生で見たあらゆる空を思い浮かべる。
そのとき——
俺の意識の奥に、奇妙な光景が現れた。
黄金。
黄金の山。
世界中が黄金で満ちている。
その中心に、一人の人物。
黄金の鎧を着た存在。
「……何だ?」
その人物が口を開いた。
「お前は選ばれし者だ」
世界がぼやけ始める。
何だ……?
頭が混乱する。
黄金の光が目を焼く。
世界がぐるぐる回る。
上下が逆転する。
俺は目を開いた。
顔は汗まみれだった。
体も汗だらけだ。
「な、何だ今の!?」
俺は目を見開く。目の前の光景は、完全な混乱状態だった。部屋がめちゃくちゃに破壊されている。家具は壊れ、壁にはひびが入っている。
レイカが——血を流していた。
「はっ!? どうしたんだ!?」
俺は急いで彼女の元へ駆け寄る。
「大丈夫か!?」
彼女は苦しそうだった。血が体から流れている。何が起きたんだ!?のひび割れから水が流れ出している。どうして水が?誰がこんなことを——?
「この部屋で何が起きたんだ!? 死神が襲ってきたのか!? それとも悪霊か!?」
レイカは俺を見て言った。
「あなたは……自由になった」
「……え?」
自由?
体を動かす。……軽い。俺は首に手を当てた。
鎖がない。後ろを振り返る。
怨霊がいない。消えている。
「……どういうことだ?」
「心配しなくていい」
レイカはゆっくり言った。
「私は大丈夫よ」
彼女の傷はゆっくりと塞がっていった。
流れていた血も、止まっていく。
私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇




