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『魔法の使えない転生者、忌地の森をひらく』  作者: 森野余白
第二章「生きる場所を作る」

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第22話 変な草、もう一度

第一章から気になっていた青緑色の草。


分からないものを無理に決めつけず、もう一度だけ自分の身体で確かめてみます。

朝。


 寝床から身体を起こし、屋根の下を見回す。


 石斧は決めた場所。


 石片も棚の上。


 植物繊維もまとめてある。


 薪は地面から少し浮かせた置き場に積んである。


「ちゃんとある」


 昨日までなら何か一つ探していた気がする。


「片付けって偉いな」


 誰も褒めてくれないので、自分で褒める。


 火を戻し、残っていた水を少し飲む。


 急いでやることが一つ減ると、前から気になっていたものへ目を向ける余裕が出てきた。


「そういえば」


 空き地の端を見る。


 青緑色の草。


 前に草を抜いた時、妙なことがあった。


 たくさん抜いた場所にいると、身体が重くなって頭の奥が鈍く痛んだ。


 草が残っている場所へ戻ると、少し楽になった。


「もう一回、見ておくか」


 一度確かめた。


 でも、それだけで全部分かったことにはならない。


 立ち上がり、青緑色の草が残っている場所へ向かう。


 空き地のあちこちに、数株ずつまとまって生えている。


「まず見る」


 しゃがみ込み、少し離れたところから見る。


 青みのある葉。


 地面。


 周囲の草。


「変わってない……かな」


 正確には分からない。


 最初に数えていなかった。


「こういう時、記録って大事なんだな」


 今さら思う。


 それでも、前に見た時と大きく違って枯れている様子はない。


 葉へ触れる。


 普通の草と変わらない。


 匂いを確かめても、特別変わったものは感じない。


「見ただけじゃ分からないんだよな」


 前と同じだ。


 俺はその場へ腰を下ろした。


「…………」


 少し待つ。


 身体に変化はない。


 頭も重くない。


「こっちは平気」


 次に見るのは、前に草を多く抜いた場所だ。


 青緑色の草が残っているところから、そう遠くはない。


 地面が見えている部分へ移動する。


「少しだけ」


 前と同じようになるなら、長くいる必要はない。


 立ったまま待つ。


「…………」


 すぐには何も起きない。


「やっぱり気のせいだったとか?」


 もう少しだけ待つ。


 すると。


「……あ」


 頭の奥に、わずかな重さを感じた。


 強くはない。


 痛いというほどでもない。


 でも。


「前と似てる」


 それ以上は待たない。


 すぐに青緑色の草が残っている方へ戻る。


 腰を下ろす。


「…………」


 少し待つ。


 頭の重さがゆっくり薄れていく。


「やっぱり、何か違う」


 前と同じだった。


 草を多く抜いた場所では重くなり、残っている場所へ戻ると楽になる。


 ただ。


「だから、この草が何かしてる……とは限らないよな」


 地面を見る。


 草を抜いたこと。


 場所が少し違うこと。


 土。


 風。


 俺には確かめられていないものがいくらでもある。


「分からん」


 答えは出ない。


 もう一度、草の少ない場所へ行って確かめることもできる。


 でも。


「もういいか」


 同じことを繰り返して、わざわざ体調を悪くする必要はない。


 青緑色の草を見る。


「少なくとも、抜かない」


 今分かっているのは、それだけだ。


 原因が草そのものなのか。


 草が生えている場所に何かあるのか。


 それとも別の理由なのか。


 今の俺には分からない。


「残しておけば、また見られるしな」


 草へ手を伸ばしかける。


「…………」


 やめた。


「抜く必要ないな」


 正体を知りたいとしても、今ここで一本増やして抜かなければならない理由はない。


 同じ場所に残っていた方が、次に見た時の変化も比べられる。


「そうしよう」


 一度来た場所でも、見るものは変わる。


 最初は、ただ邪魔な草だと思っていた。


 今は、残しておいた方がいいものになっている。


「分からないなら、そのまま」


 それくらいが今はちょうどいい。


 夕方。


 棚の上へ石片を戻す。


 植物繊維をまとめる。


 最後に地面の簡単な地図を見る。


 水源。


 池。


 獣道。


 そして、拠点の空き地。


 枝の先で、青緑色の草を残している辺りに小さな印をつける。


「ここは抜かない」


 何の草なのかは分からない。


 どうして身体の感じが変わるのかも分からない。


 でも。


 分からないからこそ、残しておけばいい。


「また比べればいいしな」


 答えを急ぐためではなく。


 前と変わったか確かめるために。


 それも、ここで暮らしていくための一つのやり方なのだと思った。

第22話を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


一度安全そうに見えたものでも、主人公は「絶対に安全」とは決めつけません。


採りすぎず、同じ場所を何度も見ながら、この森で使えるものを少しずつ確かめていきます。

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― 新着の感想 ―
この葉っぱがとじる赤い実って今まででてきましたっけ? 頭が痛くなる青緑色の草とはべつですよね?
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