その3
「良い人ですよ、イルさんは」
何処が、と詳しく問い詰められたなら、彼女は答えられなかった。けれども、反魔道士思想の村でショックを受けた時に話しかけてくれたり、どんな空気でもけたけたといつも笑っているところから、短期間でもそれを察することは出来た。しかし。
「まあ、変人だとは思いますけど」
やはり、これだけは言わずには居られなかった。この言葉に、アンディはくすくすと笑い出す。
「そうね。蒼藍は皆、変な人ばっかりよ」
「アンディさんはまともだと思います」
「あら、ありがとう」
また少し静かな時間が流れる。けれどもロジーナには、もう先ほどのような「何か話さなくては」という切迫した雰囲気はなくなっていた。子供たちが噴水で騒ぐ声だけが聞こえている。
「なんか、すっきりしたわ」
「え?」
「イルが大丈夫なら、ビルも大丈夫でしょう?」
彼がそう笑ったので、ロジーナはふと思い出す。
「そういえば、アンディさんとビルさんって同期か何かですか?」
「いいえ?ビルの方が私より先輩よ?」
何でそんなことを、と言う顔をされたので、ロジーナはすこし焦る。
「すいませんっ、なんか仲が良いように見えたもので・・・」
「ああ!仲は良いわよー?なにせ私とビルと、あとアリスって子で仲良し三人組だったもの」
昔を懐かしんで笑みをこぼしたアンディの言葉に、ロジーナは目を丸くして敏感に食いついた。
「え、アリス?アリスって、アリス・ブラウンですか?」
すると、今度はアンディが吃驚して口をポカンと開けた。
「え?そうだけど・・・どうして貴女がアリスを?」
「私、アリスに憧れて魔道士になろうって思ったんです!そっかぁ・・・アリスって蒼藍だったんだ・・・っ!」
感動して目を輝かしているロジーナを見て、アンディの背筋に悪寒が走った。
アリスを知っているリパ族の少女。
あまり、良くない予感がしてしまった。




