その2
午前十時。ロジーナは再び部屋を出てロビーに降りた。その服装はいつもの動きやすさ重視の衣装ではなく、女性らしい柔らかな格好だ。ひらひらとした袖口や大きく開いた襟元が特徴的な、彼女の一張羅とも言える服である。
「あらやだぁ・・・!お兄さんの為におしゃれしてきてくれたの?嬉しいじゃなぁい!!」
そういって立ち上がったアンディはワイシャツにブラウンのジャケットを着こなしていた。黒色のズボンがすらりとした脚の長さを強調させており、スタイルの良さがより際立っている。もはや何処からどう見てもただのモデルだ。これが戦闘職種についているオネェ系お兄さんだとは誰も思わないだろう。
そんな人と一緒にこれから歩くのだ。嫌が応にも注目されるだろうし、気を遣わない格好ができるほどロジーナにも度胸は無い。
「じゃあ、行きましょうか」
にこりと無邪気に笑って差し出された手を、ロジーナはおずおずと取った。
ハットをかぶっているせいか、わぁっと湧くようなことは無かった。が、道行く人がアンディの顔に見とれていると言うのが、ロジーナには解ってしまう。彼女が心配するまでもなく、どうみたって恋人には見えなかった。ただの兄妹だろう。
しばらく歩いていくと、少し大きめの広場があった。この街一番の広場で、常におしゃれな屋台が並んでいる。中央には噴水があり、まだ水遊びをするには少し早い時期だが、元気な子供たちがそこに入ってはしゃいでいた。おかげでなかなか賑やかな状況になっている。
「あの・・・」
「さて、アイス食べましょうか」
彼の意図は解らないが、ロジーナに拒否権はなかった。テキパキと適当に置かれているベンチの一つを取ると、そこにロジーナを残して彼はアイスを買いに行ってしまう。
(・・・これってデートなのかしら?)
ロジーナは一人で首をかしげた。もっと二人で買い物をしたり、いろんなものを見て回ったりするのがデートだと思っていたのだが、今はただ外に出てアイスを食べてようとしているだけだ。カフェに入ったりはするかもしれないけれど、いきなり何かを食べると言うふうにはならないだろう。
しばらくすると、アンディがアイスを持って戻ってきた。
「ごめんなさいね!味聞くの忘れちゃったわ。一応イチゴとバニラと買って来てみたけど、どっちがいいかしら?」
「あ、じゃあイチゴもらいます」
「ホントごめんなさいね。チョコがよかったらまた買ってくるわよ?」
「いえいえ!イチゴが食べたいと思ってたんです」
ロジーナが慌ててそういうと、「良い子だわぁ」とアイスを持ったままアンディはロジーナに思わず抱きついた。
二人で並びながらアイスを食べる。沈黙が耐えられなくて、ロジーナが話しかけようと口を開きかけた時、アンディが先に口火を切った。
「あの・・・ね?イルは、どうかしら?」
「へ?」
「い、いや、新人のあなたに聞いても難しいわよね」
「いえ!初任務の時もかなりお世話になりましたし・・・」
失笑するアンディを見て、ロジーナは気付いた。当たり前だが、彼はデートがしたかったのではない。イルの現状を知りたかったのだ、と。




