その8
「村でな、迫害されてたんだよ」
「解ったわよ、それは」
「そうじゃない。雪やら雨やらが降るたびに、お前のせいだとな」
「言われてたの?」
「流石に口に出すほど連中も馬鹿じゃねぇさ。でも、目つきや雰囲気で子供だろうと解るもんだ」
北方では雪はかなり頻繁に降る。特に近年は北方「全体」で雪が多く、異常気象だと言われたりしていた。しかし有翼人種の村には、先ほども説明したとおり電気が通っていない。それはつまり情報が滞った閉鎖的な空間であると言うことを示しており、村人たちにとっては「スイリスが発紋してから雪が多くなった」と結びついてしまったわけである。
「でも、こんな小さな子が村全体に雪を降らせるなんて、何を馬鹿なこと考えたのかしら?」
「いや、それがなかなか馬鹿なことでもないんだな」
そういうと、ティムは眠っているスイリスの額に手を当てた。そして「やっぱり」と零す。
「こいつはな、有翼人種の中でも異常なほど魔力が高ぇのさ」
「じゃあ、なおさら発散して体外に出さなきゃいけないじゃないのよ」
魔力は普通にしていても微妙に漏れているものだ。解りやすくいえば体温というのが最も近い。通常は丁度いいように出来ているものなのだが、暑い時は冷やしたり、逆に寒い時は温めたりして、調節しなくてはならなくなる。同じように、魔力も普通は支障がないものなのだが、高すぎる場合は定期的に利用し発散するべきであり、低い場合はあまり使わなくてもいいよう制限して蓄積させなければ大技は打てなかったりする。
「そうだな。でもそれが出来ねぇから、こうやって熱を出すんだよ」
「へ?」
アンディは驚いて振り返った。おぶっているためもちろんその姿は見えないのだけれど。
実は先ほどからずっとその体温の高さは感じていたが、風呂上がりな上に眠っているものだからだとアンディは思っていた。けれどもどうやら違うらしい。安心して身体を預けてくれているのではなく、単純にだるくてぐたっとしていたのだ。
「やだもうっ!そういう大切なことは先に言ってちょうだいよ!!」
「言っても防げねぇだろうが」
「道具準備しなきゃいけないじゃないのよ!」
そういうと、アンディはティムを残して慌てて走り出す。
「・・・うん、やっぱ、俺の人選にミスはねぇな」
そう残されたティムが笑ったことは、誰も知らなかった。




