その7
「・・・え?」
アンディは思わず固まった。今ティムが上げていたものは、全て発現系の魔法ではあったが、全て陰魔法だ。図ったかのように、全て真逆である。
「どういうことよ?」
「どうもこうもない。そのままだ」
そう言われてしまうと、すぐに理解は追いついた。
少年が迫害を受けていた理由はそれだ。いや、それどころか、それだけなのだろう。しかもまたコクイ族というのがまた災難な話だ。
有翼人種と言うのは、コクイ族、ナイユ族、チョウシ族の三種類が存在する。そしてチョウシ族以外の純血の有翼人種は、雪がガッツリと降る北方に棲んでいると言って間違いないだろう。
そして発現系陽魔法は、火、葉、土という、極寒地ではなかなか得られないものばかりであり、種族全体でその能力を重宝しているのがコクイ族だ。皆がこの魔法を使って、助け合って生きているのである。
そんな中に、彼のような水、氷、雷という陰魔法を持っている者がいたらどうだろうか?氷魔法はもちろんだが、氷を火で溶かして水を作るために水は意味を持たず、電気が通っていないので雷も意味がない。貼られるレッテルは役立たずの一言だろう。枯れ枝に電気を当てて火を起こすこともできるだろうが、そんな悠長なことは誰も考えなかった。
もしそんな子供を養っていたら、家はどうなっただろうか?いくら子供が可愛かったとしても、助け合いで成り立っている社会で、将来性のない子供をずっと置いておけば痛い目を見るだろう。下手をすれば、発覚した時点で親までとやかく言われてしまうものだ。つまり、親も自分たちが助かるためには少年を捨てるほか無かったのである。もしかしたら兄弟がいて、その子たちを守るためだったのかもしれない。
アンディは、ちらりと少年を見た。まだ背中ですやすやと眠っているが、ここに来るまでにどれほどの苦労があったのだろうか。
「しかもだな」と、ティムがしゃべりだしたので、そちらに顔を戻す。
「そいつ、まだ魔力の制御ができねぇんだよ」
「制御できない?」
魔力の暴走と言うのは怖いものだ。特に発現魔法だと魔力が実体化して暴走を始めるため、とにかく厄介で仕方ない。スイリスの場合、周りに雨、雪、雷のどれかが現れるのだろう。
部屋の中で暴走されたらどうしようかとアンディが悶々とした顔をすると、ティムが首を振った。
「いや逆だ、逆。発動出来ねぇんだよ」
「え?」
有翼人種は全人種の中でもずば抜けて魔力の高い人種だ。発動できないなど、聞いたことがない。
アンディが説明を求めると、ティムは頭をぼりぼりと掻きながら困ったように話し出した。




