その2
「・・・・・・」
背中に視線を感じる。この視線は恐らく品定めだ。警戒しているのもあるが、敵意は感じられない。ティムを追いかけて扉に目を向けていたため、少年には背中を見せっぱなしだった。
ふぅ・・・と観念のため息をついた。少なくとも、このまま少年と冷戦状態を続けていても意味がない。
(っていうか、この間も一人連れて来なかったかしら?あの親父・・・)
その子供は昔からいる蒼藍が今は面倒を見ている。その人に彼を引き渡してもいいのだが、下手をすれば二人の面倒を見せられることになるかもしれないと思えば、余計なことはしない方が得策だ。
アンディがその場でくるりと向きを変えただけで、少年はまたぴゃっと柱の陰に姿を隠してしまった。全部が隠れるわけではないのに何がしたいのだろうと、ついアンディは不思議に思う。
その場に座り込むと、彼は少年に向けて手を伸ばした。すると少年は興味を引かれてひょこっと顔を出した。まるでノウサギでも手懐けているみたいだと、アンディは呆れる。獣が好きではないため、面倒くさいと言う感情も少なからずあった。
「ほら、とにかく私の部屋に来なさい?」
「!!」
大きな目をぱっと開いた少年だったが、また柱の奥に隠れてしまう。しばらく待ってみたが、そっと顔を出してアンディの手のひらを見ては、またすぐに柱に隠れる、というのを何度も繰り返す。
「・・・・・・」
この頃のアンディはまだ、そこまで気が長くなかった。
イラッとした彼は少年に近付くと、彼をひょいと抱え上げる。年齢や体格に比べて異様に軽い。ろくな物を食べていないのだろう。バタバタと暴れたが、すぐに力尽きてぐたっとなった。
(こんな子・・・どうやって連れて来たのかしら・・・)
警戒心も高く、人を信用していないのはこの短時間でもう解った。孤児を無理やり連れてくる、なんてことをするほどティムの横暴ではないため、何らかの方法で説得して連れてきたのだろうが、全く予想がつかない。
「ほら、行くわよ」
一応そう声だけかけて、院長室を後にした。




