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第57話:敵わない

話は現在に戻る。

美香は太郎と陽菜と翔太を守れるのか?

夜の公園。

街灯の下に、真美は立っていた。


その少し後ろに、陽菜と翔太。

二人とも不安そうな顔で黙っている。


美香はゆっくり歩いて近づいた。


太郎は少し後ろにいる。

でも美香は止めた。


「これは私が行く」


真美と向き合うのは、私だと思ったから。


真美は美香を見ると、小さく笑った。


「久しぶりだね、美香」


昔と同じ声だった。


でも目は、もう完全に壊れている。


「二人を離して」


美香は言った。


真美は肩をすくめた。


「何で?」


「関係ないでしょ」


美香は真美を見つめた。


「あなたと私の問題」


真美は少し考えるように首を傾けた。


「そうだね」


そして後ろを振り返る。


「陽菜、翔太」


二人に言った。


「ちょっとあっち行ってて」


二人は戸惑いながらも、少し離れたベンチへ歩いた。


美香と真美だけになる。

夜の空気が冷たい。


真美はゆっくり美香に近づいた。


「ずっと嫌いだった」


小さく言った。

美香は黙って聞いていた。


「太郎があなたの話ばっかりするから」


真美の目が歪む。


「美香がさ」

「美香がさ」


何度も。


「うるさいんだよ」


真美は笑った。


「だから奪った」


その言葉はあまりにもあっさりしていた。


「でもね」


真美は少し顔をしかめた。


「意味なかった」

「太郎の中、ずっとあなただった」


美香は静かに言った。


「それでも結婚したのはあなた」


真美は笑った。


「そう」

「だから壊したくなった」


太郎も。

美香も。

家族も。

全部。


美香は真美をまっすぐ見た。


「もう終わりにしよう」


真美は目を細めた。


「終わり?」


「あなたが壊したかったもの、全部ここにある」


美香は指をさした。


ベンチに座る二人。


陽菜。

翔太。


「でも子どもは関係ない」


真美の表情が少しだけ揺れた。


「あなたがどれだけ壊れても」


美香は静かに言った。


「私はこの子たち守る」

「太郎と」

「一緒に」


長い沈黙。


風が吹いた。


真美はしばらく動かなかった。


そして突然、笑った。


小さく。


「負けたなぁ」


ぽつりと言った。


「私、最初からわかってたんだよ」


太郎が美香を好きだって。

それでも奪った。

でも結局。


「太郎は戻るんだね」


真美は空を見上げた。


そして最後に美香を見た。


「守りなよ」


静かな声だった。


「その家族」


そう言って、真美は歩き出した。


街灯の外へ。

暗い道の向こうへ。


美香はその背中を見ていた。


長い戦いが、やっと終わった気がした。


後ろで太郎の声が聞こえる。


「美香」


美香は振り返った。


ベンチでは、陽菜と翔太が不安そうにこちらを見ている。


美香は二人の方へ歩き出した。


これから先も、きっと簡単じゃない。


でも。

もう逃げない。


私たちはやっと、同じ場所に立ったのだから。

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