25/46
第25話:胸の痛み
久しぶりに太郎の姿を見た美香。
「変わらないな」
少し胸が痛む。
太郎の姿を見た瞬間。
美香の心臓は一度だけ大きく跳ねた。
(久しぶりだな)
そう思った。
それだけ。
…本当は違った。
胸の奥が、少しだけ痛かった。
でも美香は表情を変えなかった。
受付の仕事を続けながら、静かに会釈する。
「お久しぶりです」
敬語にしたのは、わざとだった。
もう昔の関係ではないから。
太郎は少し戸惑った顔をしていた。
それを見て、美香は思う。
(変わらないな)
優しそうな顔。
少し頼りない目。
昔と同じだった。
葬儀の仕事は忙しい。
参列者の案内。
焼香の誘導。
会計の確認。
次から次へと仕事が来る。
だから助かった。
太郎のことを考える時間がない。
でも。
葬儀が終わって帰る頃。
太郎の姿が視界の端に入った。
車の前で立っている。
少し疲れた顔。
そして。
ほんの少しだけ――
寂しそうだった。
美香はその姿を見てしまった。
胸の奥が、また少し痛む。




