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第24話:後悔
美香と再会してから太郎は思う。
「もしあの時浮気しなければ」
「もしあの時真美と会わなければ」
「もしプロポーズが違う形だったら」
人生に もし はない。
葬儀が終わったあと。
太郎は車の中でしばらく動けなかった。
ハンドルを握ったまま。
深く息を吐く。
さっき見た美香の姿。
結婚指輪。
穏やかな顔。
あれは――
幸せそうだった。
太郎は理解した。
(もう)
(俺の知らない人生を生きてる)
その事実が、胸に重くのしかかる。
後悔。
もし。
あの時。
浮気なんてしていなければ。
もし。
あの日。
真美と会わなければ。
もし。
プロポーズが違う形だったら。
でも。
人生に もし はない。
自分が選んだ道だ。
太郎は目を閉じた。
そして思う。
(それでも)
(美香が好きだった)
今でも。
たぶん。
一生。
その頃。
家では。
小さな娘が「パパ」と呼んでいた。
真美が夕飯を作っている。
それが――
今の太郎の人生だった。
浮気の代償として選んだ。
責任の人生。
そして胸の奥には。
消えない未練が残り続ける。




