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第12話:プロポーズ
太郎の突然のプロポーズ。
美香を失いたくないだけ。
美香はきっぱり断る。
太郎は立ち上がった。
そして。
美香の前に膝をついた。
「俺と結婚してほしい」
突然の言葉だった。
美香の目が少しだけ驚く。
太郎は続けた。
「俺が馬鹿だった」
「浮かれてた」
「でも本当に大事なのは美香だ」
太郎の声は震えていた。
「だから」
「結婚しよう」
「やり直したい」
「一生大事にする」
その言葉は。
真剣だった。
本気だった。
でも――
遅かった。
美香はしばらく黙っていた。
そして。
小さく息を吐いた。
「太郎」
「うん」
「そのプロポーズ」
少しだけ笑う。
悲しい笑顔だった。
「浮気がバレたから?」
太郎は言葉を失う。
図星だった。
「違う!」
太郎は慌てて言う。
「前から考えてた」
「タイミングが」
「今だっただけで」
美香は静かに首を振る。
「違うよ」
その声は優しかった。
「今言ったのは」
「私を失いそうだから」
太郎は黙る。
美香は続けた。
「それってさ」
「愛じゃない」
「保身だよ」
その言葉は鋭かった。
太郎の胸に突き刺さる。




