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第11話:発覚
美香に浮気がバレて「魔が差しただけ」と言う太郎。
美香の覚悟は決まっている。
事務所の応接室。
葬儀社の小さな部屋。
太郎は椅子に座った。
美香は向かいに座る。
沈黙。
数秒。
美香が先に口を開いた。
「真美さんって誰?」
太郎の心臓が止まりそうになる。
「……え?」
言い逃れはできなかった。
太郎の顔色が変わる。
「スマホ見たの?」
「見た」
美香は正直に言った。
「ごめんね」
謝る声は静かだった。
「でも」
「浮気してるよね?」
太郎は何も言えなかった。
言い訳も出ない。
沈黙。
長い沈黙。
そして。
太郎は頭を下げた。
「……ごめん」
それしか言えなかった。
美香はその姿をじっと見ていた。
「いつから?」
「……1ヶ月くらい」
「体の関係ある?」
太郎は目を閉じた。
「……ある」
美香はうなずいた。
「そっか」
それだけだった。
怒鳴らない。
泣かない。
ただ理解したようにうなずく。
それが逆に太郎を追い詰めた。
「美香、俺」
太郎は必死に言った。
「本気じゃないんだ」
「……」
「魔が差しただけで」
「……」
「俺が好きなのは」
太郎は言った。
「美香だから」
その言葉は。
あまりにも遅かった。




