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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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88:裸のお付き合い!

「ようこそお越しくださいました、エーリヒ様。それと……」

「エリン。この子は従妹のエリンです。急に押しかけて申し訳ありません、サウル男爵殿」

「……いえ。ゼナスのありのままをご覧になりたかったのでしょうから、お気になさらずに」


 父上殿、その間はいったい?

 公爵家から、いや王室からと言うべきか。とにかく、視察があるとは思ってもみなかったため、客室の用意ができておらず、それもあって先に砦を見てもらっていたわけだ。


「兄さまぁ」

「ん? ティファニー、どうしたんだい?」


 最近は村の子供たちにもすっかり馴染んだティファが、いつになくしおらしい姿を見せている。

 ここには他の貴族の令嬢や令息がいない。一緒に遊ぶのは村の子たちだ。

 そうなると自然に、貴族らしくなさが身についてしまう。

 ティファはよく言えば元気はつらつな女の子に、悪く言えば上品さがなくなってしまっていた。


 久しぶりに見た貴族、しかも上級貴族を前に、少し物怖じしてしまっただろうか。


 いや、違うな。

 同じ年頃の女の子、エリン嬢が来てわくわくしているようだ。


「ティファ。村の子たちとは違うのだから、あんまりぐいぐい行かないように」

「わ、わかってるもの。でもちゃんと、お礼は言わなきゃ」


 ん? お礼?


「ではお二人のお部屋にご案内いたします。護衛の方もどうぞ。近くの部屋を用意しておりますので」

「男爵様のご配慮に感謝いたします」


 辺境領ゼナスまで足を運ぶ貴族なんていない。

 そう言われていたこの土地も、ここ一年ぐらいで数家門が来てくれるようになった。

 まぁ主に近隣の領を治める家門だけど。

 近くではないけれどホーヘンベルク侯爵家はこの二年で、二度も来てくださった。

 往復一ヵ月もする道のりをだ。


 そんなこともあって、王国騎士団の詰め所兼宿舎、そして砦の錬金と合わせて館の錬金もついに行った。

 建物の一階部分の床面積はそう変わらない。まぁ多少広くはなっているけど。

 決定的な違いは高さだ。

 二階建てだったものを三階建てにしている。

 その分、客間をちゃんと用意できるようになった。


 俺、頑張った。何度か倒れそうになったけど頑張った。


「ところで男爵殿。入口にあった、あの石像はいったい……」


 よくぞ気づいてくださいましたエーリヒ様!


「あ、あはは。あれはディルムットが錬金魔法で作ったものでして。ゴーレムモドキ、なのですよ」

「ゴーレム!? 動くのかい、ディルムットくん?」

「はい、もちろんです!」


 ただしコロコロがINしないと動かないけど。


「こら、ディルムット。ちゃんと正しくご説明しないとダメだろう」

「うっ……はい、すみません父上。エーリヒ様、実は……」

「その前に、お部屋にご案内して差し上げなさい。みなさん、お疲れなのだから」

「うっ……すみません、母上。ゴーレムの件はお食事の時にでも」

「わかった。そうしよう」


 一行を部屋へ案内し、まずはゆっくりお風呂に入っていただくことにした。

 この世界の貴族の家にも、大浴場を持つ家がある。

 だが、風呂が大きければそれだけ、お湯を沸かすのが大変。

 うちでは大量の薪が用意できないから、湯を沸かすのは更に大変……ではなく。


「魔石を利用か。しかし魔石に炎の魔力を付与するのが大変ではないか?」

「そうなんですが、砂漠エルフたちがいますので」

「エルフが!? そういえば先ほどのリディアレーゼ嬢は、族長の娘だと言っていたね」


 風呂と言えば、裸のお付き合い!

 まぁ本来なら、下級貴族である俺と上級貴族であるエーリヒ様が同じ風呂に入るなんてことはない。

 けど、ここは辺境だ。そして俺たちは子供!!

 俺はもうすぐ十三歳。エーリヒ様もまだ十七歳だ。

 一応、この世界的に十五歳で成人だと言われるけど、大人としては見てもらえない年齢だ。

 いろいろと書類上の面で「成人」と言っているだけ。


「エルフだけではなく、フォックス・リー族も手伝ってくれています」

「フォックス・リー……知識としては知っているけれど、見たことはないな。会えるかい?」

「もちろんです。ゼナスの町で暮らしていますので」

「砂漠の民が!?」


 永住ではない。出稼ぎ労働者をしてきている人たちだ。

 居心地がよくて永住したいと言っている人もいるけど、そこは族長と話し合ってもらわねばならない。


「砂漠の民はここで田畑を耕し、町造りの手伝いもしてくれています。報酬はお金と、それから自分たちで作った野菜です」

「それを故郷に届けさせている、というわけか」

「はい。砂漠の食料事情も、決していいとは言えませんので」


 以前のゼナスと比べれば、まだマシな方だった。

 けど今じゃすっかり、農作物の生産量はこっちが上回っている。砂漠と比べて、耕せる土地があるからな。


「ふふ。そうやって砂漠を味方につけたか」

「よき隣人を得るため、です。万が一のことが起きた場合、頼みになるのは彼らですから」

「それが起きないことを願いたいものだ」

「はい」


 砂漠を越えた南の蛮族……。

 この大陸は極端に言うと、上下に分けたような形をしている。真ん中が細くなっていて、その細い部分がこの辺境ゼナスだ。

 大昔は海だったことから、元は二つに分かれた大陸だったんだろう。

 そして南側の大陸は、七割ぐらいが魔物の支配区域になっている。

 魔王という存在がいた名残が、未だに南側の大陸にはあるからだ。

 そして奴らは、今でも人間や自分たち以外の種族を蹂躙したがっている。


 司祭でもある母上の話だと、世界に混乱を招けば魔王が再び現れる。そう思っているからだろうって。


 俺は異世界開拓スローライフをしたいのであって、勇者冒険ファンタジーをしたいわけではない。

 ま、まぁ、憧れがないわけじゃないけどさ。


 とにかく。

 蛮族の脅威からゼナスを守るためにも、砂漠の民との協力は必要不可欠だ。

 そして、だからこそこの地に王国騎士団がやってきた。


 彼らがゼナスに着任したということは、父上殿が――。


「よってここに、王命としてサウル・シュパンベルク男爵に、辺境伯の爵位を授けるものとする。同時に伯には第十師団、指揮官の地位を与えるものとする」

「勅命、謹んでお受けいたします」


 父上殿が、出世した。

 

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