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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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87:もしかして……。

「僅か二年にも満たない期間でこれを!?」


 約二百人の王国騎士団とエーリヒ様、それとエリン嬢を、建設した砦へと案内した。

 砂漠へと続く巨大門。その両隣に見張り塔があって、城壁の上へと出ることができる。

 壁のせいで砂漠側が見えなくなっているから、塔を上ってその上に。


「壁を挟んで向こう側とこちら側で、景色が一変しますな」

「はい。ですが山から引いてきた水のおかげなのか、この先に小さな泉ができたんです」


 ゼナスの南東に、山から流れてきた川の終着地点がある。池と呼ぶには大きく、湖というには少し小さい、そんな感じの人工湖だ。

 精霊使いでもある砂漠エルフたちの話だと、地下を通って砂漠の方に流れている水が、硬い地盤に当たって地表に湧いているんだろうって。

 元々、百年ぐらい前には同じ場所に小さなオアシスがあったそうだから。


「ゼナスにもたらす恵みが、砂漠にも影響を与えているのか」

「まぁさすがにゼナス周辺、だけでしょうけどね」

「いや。オアシスがひとつ増えれば、砂漠を行き来する商人にとって朗報だろう」


 そこから少しずつでも、砂漠に緑が戻ってくれればいいんだけどなぁ。

 壁の上から、今度はゼナスの方を見る。

 ここから眺めるゼナスの光景が、俺は好きだ。

 地面はまだごつごつとした部分の方が多いけれど、確実に()()が増えてきている。

 北側の牧草地から、風に乗って草の種が飛んできて根付いたものだ。

 遠くには滝も見えるし、東の方を見れば湖もある。

 普通に、結構いい景色なんだよな。


 で……。


 やっぱりこの景色の中に竹林が浮いて見えるのは、日本人だからだろうか。


「あれが簪の材料になっている、竹……」

「あ、そうです。よくおわかりになられましたね。エリン嬢。もしかして簪をお持ちだったのですか?」

「ひゃい!? あ、あの、ああああの……」


 エヴァンゼリン嬢に差し上げた簪は、他の令嬢にも評判がよかった。そう返事をもらって、毎月百本ほどの簪をフィッチャーの店に下ろしていた。その簪は瞬く間に売れ、オーダーを希望する声も上がっているほどに。

 ただ、オーダーにしようとしたところ、自分はどこどこの家門よりお金をつぎ込むから、自分のを先に……というような、ちょっと鬱陶しい状況になったためオーダーはやらないことにした。


 エリン嬢もお店で買ってくれたのだろうか?


「ディルムットくん。君からプレゼントしてくれた簪をね、エヴァはエリンにも分けてあげているのだよ」

「そうだったんですね。エヴァンゼリン嬢は、やっぱり優しい方だな」

「はぅ……あ、あり……あ、いえ、あの……そ、そう言ってもらえると、きっとエヴァも喜び、ます」

「あはは。そうですか? あ、長旅でしたのにすみません。館の方へ移動しましょう。騎士団の方はどうぞ、下の宿舎をお使いください」


 何日かは、うちの騎士たちの奥さんや母君たちが、王国騎士団の世話をしてくれる。

 一緒に来た王国騎士団のご家族が、ここでの暮らしに慣れるまでだ。

 王国騎士団の隊長と、エーリヒ様の護衛として一緒に来た公爵家騎士団の人たちが、俺と一緒に館の方へと向かうことに。

 せっかくなので宿舎を通って下に降りると――。


「ディル! 向こうの準備はできたにゃ」

「ディルよ、迎えに来てやったのじゃ」

「ありがとう。今から戻るところでした」


 キャロとリディアレーゼが迎えに来た。


「ご紹介します。こちらはキャロ。砂漠の民、キャット・ルー族の族長ダンド・ディッシュの娘さんです。そしてこちらが――」

「妾は砂漠エルフが族長エディノアが娘、リディアレーゼじゃ」


 と、手は腰に。ない胸を張ってドヤ顔を決める。


「うちはキャロにゃ。ディルとは……うふ、うふふ」


 おい。


「な、何を意味深な言い方をしておるのじゃ! 妾の方がディルとは親密なのじゃ!」

「どこが~?」

「どこもここもじゃ! ふん。ディルの魔力を鍛えてやっておるのは妾ぞ。あぁしてこうして、あんなことやこんなことをしてじゃなぁ」

「にゃにぃー!」

「なんじゃ!」


 ……はぁ。


「さ、みなさん。行きましょう」

「ディルムットくん」

「はい……はっ」

 

 エ、エーリヒ様の顔が……怖い!

 笑っているのに怖い!


 ……ああぁぁぁ!

 エヴァンゼリン嬢の兄君! 兄君だよ!

 エ、エヴァンゼリン嬢とは、形式上とはいえ婚約者候補になっているんだ。

 そんな俺が、意味深なことを口走ってる二人の女の子と一緒にいたら、そりゃ勘違いされるのも仕方ない。

 

「あ、あの二人は……」

「おや、まだここにいなはったんですか」

「フィッチャー。あ、ごめん遅くなって。あ、こちら」

「ディルムット様、エーリヒ様とエ……えっと」

「エリンだ。忘れたのかい、フィッチャー。わたしとエヴァの従妹、エリンだ」

「そ、そうそう。自分は父の仕事の手伝いで、ハルテリウス公爵家にも何度か出入りしてますさかい。お顔もお名前も、よう知ってます」


 そうだったのか。まぁ王室御用達の商人の家の者だし、公爵家は王族の親戚だもんな。


「それにしても、まぁたどっちがディルムット様とより仲が良いかで喧嘩ですか? 飽きませんなぁ」

「フィ、フィッチャーッ」


 今は余計なことを言わないでくれ!


「まぁディルムット様は村でもみんなから慕われとりますもんなぁ」

「み、みなさん、からですか?」

「へぇ、そうですよ、エリン様。確かにあのお二人は、少し特別な感情があるかもしれまへん」

「と、特別!? そそ、そ、それは、その」


 フィッチャアァァァァ。それ以上は、それ以上は俺のHPがマイナスになってオーバーキルになるから!!


「男が複数の異性から好意を寄せられるいうんは、それだけ良い男やいう証拠です」

「ここ、ここ、こ、こ、こう、好意!?」


 お、幼いエリン嬢の前で、何を言っているんだお前は!

 エリン嬢が顔を真っ赤にして困っているだろう!

 

「せやけど。ディルムット様は軽薄な男やありまへん。未だ()()()()お会いしたことがない言う令嬢のことだけを想い、お二人にはちゃんとごめんなさいしとる男ですから。ね?」

「ふえ!? あ、え……えぇ、まぁ、以前に。その……公爵様からの手紙で、エヴァンゼリン嬢の、その……こ、こん……こ……」


 な、なんだ。エリン嬢が真っ赤な顔してるから、お、俺までなんか……恥ずかしくなってきた!

 しかもあの子、俺と目が合うと慌てて逸らすのに、気づいたらまた見てるし。

 な、なんだ。なんでドキドキしてる!?


 もしかして……。


 今日は朝から馬を飛ばしていたし、今も階段を上り下りしたして息切れ!?

 

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