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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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80:同じ穴の貉

「俺を呼び出すとは、随分と偉くなったものだなグランシュ子爵」


 ノックをすらせず、バンッと扉を開けて入って来たのはオズワルズであった。

 

「えぇ、おかげさまで。オズワルズ伯爵」


 にこやかな、しかし下卑た笑みを浮かべたグランシュ子爵は、オズワルズを自らの執務室へと招き入れる。

 

「ふんっ。カレンロス伯爵の元で働いているそうだな」

「前の主に比べて堅実な方ですので、損失を生み出す心配もなく安心して働けますよ」

「グギギギ……貴様、嫌味を言うために呼んだのか!?」

「は? いやいや、まさか。何ね、そろそろわたしも自分の領地が欲しいと思いまして」

「領地、だと? はん。貧乏貴族の貴様が買い取れるような領地が、いったいどこにあるというのだ?」


 精いっぱいの虚勢を張るオズワルズだが、内心穏やかではない。

 借金に借金がかさみ、つい最近、いくつかの別荘を手放している。さらに弟から奪い取った領では民が逃げ出し、誰もいない状況だ。

 そんな状況を国内の貴族たちも知っている。

 それ故、オズワルズ伯爵領というだけで、その価値は右肩下がりだった。

 

「俺が貧乏貴族なのは、あんたのせいだろうが! 何年もほぼタダ働きさせやがって!!」

「な、なんだと!? 貧乏能無しを雇ってやった恩を忘れやがって!」

「能無しはどっちだ、能無しは!」


 どんぐりの背比べである。

 しばらく罵り合っていたが、これでは埒が明かないとグランシュ子爵が本題を持ち出した。


「伯爵領をとは言いません。あなたが弟君から奪い取った方を買い取らせていただこうと思いましてね。水没した鉱山を復旧できるほどの資金がないのでしょう? ならばいっそ手放した方がいいのでは?」

「フンッ。お前に領地を買い取れるほどの金があると?」

「お金はありません。しかしそれに匹敵する情報があります」

「情報? なんだ、それは」


 いい情報は金になる。それぐらいのことはオズワルズも理解していた。

 だからこそ、興味を持ったのだ。


 だが。グランシュ子爵の口から語られたのは、金になるどころの内容ではなかった。


「二年前。そう、あなたが弟君であるサウル男爵を陥れたあの件ですが」

「お、おと、陥れただと!? 変な言いがかりは困るな」

「いえいえ。言いがかりではありませんよ。ホーヘンベルク侯爵家で開かれた茶会の席で、夫人のネックレスがディルムットに盗まれたというあれですが。盗んだのはランドファス、ですよね?」

「ぐっ……な、何を根拠に!?」

「あなたのご子息が、侯爵家の本邸に入ったことはうちの息子が知っているのですよ。そして、夫人の宝石に手を伸ばしていたことも」


 そんな話、息子のランドファスからは聞いていない。

 そもそもどういう経緯で盗んだのかも聞いていなかったのだ。

 息子が他家から何かを盗むときは、だいたい「欲しかったから」それだけだった。

 

(奴の息子が一緒だったとは……クソッ。いや、待てよ。だったら)


「ハッ。だったら盗んだのはお前の息子ではないのか?」

「そうだとして、その責任をディルムットへ擦り付ける理由がないでしょう? 第一、お茶会の後にあなたは男爵家に行っている。そしてその翌日に、あなたの母君の縁者である騎士が家宅捜査に踏み込んでいるのです。ククッ。誰がどうみても、怪しいのはあなたなのですよ」

「うっ……」


 反論できない。

 家宅捜査を依頼したのもオズワルズであることは周知されている。

 その前日に自分が男爵家にいたことも知られているのだ。

 そして息子の手癖の悪さ。


 犯人はランドファスだと思っている貴族も少なくはなかった。

 それでも犯人だと面と向かって言われないのは、その証拠がなかったから。


 もし、グランシュ子爵の息子が証言すればどうなる?

 ランドファスの窃盗罪だけでは済まないだろう。息子は盗んだネックレスを侯爵夫人に返すわけでもなく、甥の部屋に隠し、縁者の王国騎士を使って窃盗をでっち上げたのだから。


「さぁどうする、オズワルズ」

「き、貴様っ」

「国王陛下へご報告してもいいのだぞ。まだ幼い子故、恐ろしくて今日まで言えずにいた。そう話せば、お優しい陛下のことだ、うちのグスタフを咎めることはないだろう。実際にそうだったのだからな」

「くっ……ふ、ふん。あんな領地、一銭の価値もないわ。いいだろう。貴様にくれてやる!」


 半ば自棄になってオズワルズは叫んだ。

 グランシュ子爵は待ってましたと言わんばかりに、書類を取り出しサインを求めた。

 最初からこうなることがわかっていたため、事前に誓約書を用意していたのだ。


 震える手で誓約書にサインをするオブワルドは、怒りに震えながらも考えた。


(こんな奴に領地を奪われてなるものか。何かいい方法はないのか……俺が損をすることなく、こいつを口止めできる方法は……いや。いやいやいや。こいつにあの水没した坑道を修繕させよう。そうだ、そうすればいい)


 そして鉱山として機能しはじめてから奪い返す。

 それまでにどうするか、考えればいいことだ。


 自分は銅貨一枚も支払うことなく、鉱山が戻って来る。

 なんて素晴らしい案だ。

 オズワルズはそう自画自賛した。


 実際には何も考えていないに等しいというのに。

 

「領地の権利書は、近日中に持ってきていただこうか」

「いいだろう。だがわかっているな」

「もちろん。この件に関しては、俺とあなたとの秘密ということで」


 ディルムットがこの場にいれば、おそらくこう言っただろう。


 同じ穴の貉……と。

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