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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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79/107

79:辺境の小さな町、ゼナスだ。

「にゅうぅぅぅぅ」

「ふぅ。防壁はこんなもんかな。だいたい四倍に広げたけど」


 元々あったゼナスを1としたら、北に1、西と東にそれぞれ0.5ずつ壁を伸ばした。

 結果、村の面積は四倍になった。

 端の方の住宅は水場まで遠くなったな。水路も作らなきゃ。


「ふんぬぅぅぅぅぅ」


 でも優先すべきは住宅だ。移住希望者が到着したときに、家が間に合ってないなんて状況は避けたいからね。


「にゃあぁぁぁぁっ」

「なんですか、キャロ。さっきから変な声を出して」


 ずっと俺の後ろをついてきていたキャロは、何が不満なのかずっとこの調子だ。


「オルマンさぁ~ん」

「お嬢はディルムット様に婚約者ができたと聞いて、不貞腐れているのだ」

「にゃああぁぁぁぁ!? オ、オル、オルマンッ。ななな、な、何を言ってるにゃ! う、うちは別に不貞腐れてないにぁ。そもそもディルみたいな子供、趣味じゃないにゃ。そう、うちは子供に興味ないにゃ」

「だそうなので、ディルムット様、安心してご結婚ください」

「ふにゃあぁぁぁぁ」


 キャット・ルー族の方にまで婚約の件が伝わっているのか。

 安心して結婚しろと言われてもなぁ。一応これはフリみたいなものだし。


「ディ、ディル……本当に婚約、したのかにゃ……」

「したのではなく、婚約者候補です。ですから、正確にはまだ婚約はしていません」

「本当!? じゃ、じゃ、ディルはどんな子は好みにゃ?」

「謙虚な子」


 即答すると、キャロは静かになった。


「すみません」

「にゃ。なんで、なんで謝るにゃ」

「僕は、この国の貴族で、男爵家の嫡男です。家を、男爵家を守らなければなりません。そのためにも、結婚相手は同じ貴族から選ばなければならないのです」

「ディル……誰かを好きになることもできにゃいの?」


 誰かを、好きに……。それっていいことなんだろうか。

 俺にとって、それはあまり、いいことのように思えない。


 前世の、クソみたいな両親は、あれでも一応恋愛結婚だったようだ。

 母親はそれなりの美人で、父親もまぁそれなり?

 お互い、()にだけ惹かれあったんだ。それで付き合って、すぐ妊娠して、結婚して、俺が生まれた。

 

 俺が生まれた途端、父親は浮気して家を空ける日が多くなった。

 そして夫がいないのをいいことに、母親も男を家に連れ込んで……。

 育児放棄ってやつだ。

 三日ぐらいだったらしい。まともにミルクも飲まされず、俺はただただ泣き続けていたようだ。

 ピタリと鳴き声が止んで、怖くなった近所の人が警察に連絡をして、俺は保護された。

 餓死寸前だったとか。


 そのことを知ったのは、父親が刑務所に入ったときだった。

 担当していた刑事さんが、赤ん坊だった俺を保護した人だったんだ。


 誰かを好きになるって、そういう危険性があるってことだ。

 裏切られる危険性。

 裏切られたことによる、裏切り行為をする危険性。

 誰かを殺しかねない危険性。


「僕は……誰かを好きにはなりません」

「へ?」


 お互い、愛し合って結婚した今の両親のように、上手くやれる自信が俺にはない。

 でも結婚はしなきゃいけないんだ。貴族だから。

 だったら政略結婚で十分だ。

 必要な、形式的な結婚。家を守るため、子を残すだけの関係。

 でもその方がきっと、俺は上手くやれると思う。

 別に奥さんになる人を無下にするつもりはない。大切にするさ。

 大切にすることと、愛することは別物だと思う。

 でもきっと、友達にはなれるさ。


「あ、えっと……十歳の僕には、まだ人を好きになるとかいうのはわからなくって。クソ伯父みたいな奴は大っ嫌いですけどね」

「あぁ、二年前に来た奴にゃね」

「王都から帰って来る時にも会ったんですよ。というか待ち伏せしていました」

「にゃ!? 懲りない奴にゃねぇ。それで、どうしたにゃ?」


 ふっ。俺の最高傑作、ロボット・ゴーレムで追いかけまわしてやったさ。

 そう話すと、キャロはケタケタと笑った。


「あっはっは。うちもその様子、見たかったにゃ~。それにしても、あんな大きな物を錬金魔法で動かすなんて……ディルは変態にゃ」

「へ、変態!?」

「動かしたからって、何かあるわけにゃいのにさ~」


 ロボットは男のロマンなんだぞ!

 ふ。女の子にはわからないよなぁ。あの胸が高鳴りは。


「貴族は大変にゃね」

「あはは、そうですね。煩わしいこともありますが、僕は両親の子供に生まれてきて幸せです」

「そう、かにゃ……。うん、わかったにゃ。まぁうちはぁ、ディルみたいなおこちゃまなんか、好みじゃないしぃ。関係にゃいにゃ~」

「あ、あはは。はは」

「でも。これからも隣人として、ずっ友にゃ」


 ず、ずっ友?

 こっちの世界にも、そんな言葉あったんだ。

 十年目にして初めて聞いたよ。


「はい。ずっ友です。これからもよろしくお願いします」

「うにゃ。ところでディル。こんなに壁の内側を広くして、どうするにゃ」

「あぁ、実はですね」


 元の男爵領にいた人たちが、また父上の元で働きたい。

 そう言っていると、王都で陛下から聞いたことをキャロに話した。


「もしかして、その人たちのための家にゃか?」

「はい。人手が増えれば、やれることも増えます。ただ一度にたくさんの人に来られても、また食料不足問題になってしまいますので。段階的に、移住希望者を受け入れることにしたんです」


 その件は既に、父上殿の方で陛下に手紙を出している。来月、二十家族ぐらいを受け入れる、と。

 だからそれまでに家を二十軒、錬金しなければならない。

 でも二十軒建てると、村の敷地がミッチミチになるなぁと思って、慌てて壁の拡張を先にした。


「ふぅん。でももっと建てるにゃ? そしたらもう、村じゃなくて町にゃね」

「町……そうですね。今だって、ここには七十軒ほどの家が建ち並んでいますし」


 そこに二十軒追加すれば、住宅は九十軒だ。

 はは、立派な町じゃないか。

 あ、いや、小さな町か。


 うん。辺境の小さな町、ゼナスだ。


「よぉし。町づくりに向けて、頑張るぞ~」

「頑張るにゃ、ディル。うちが応援してやるにゃ!」


 ……応援だけ、なの?

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― 新着の感想 ―
四倍? えーと、 > 北に1、西と東にそれぞれ0.5ずつ を#を0.5として書くと、   ┌──┐   | 一 | ┌─┼──┼─┐ |#| 村 |#| └─┴──┴─┘ となって三倍のような…… …
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