210:大きく生まれ変わるぞ!
「あぁ、寒い……なんかこれ、デジャブだな。前にもあった気がする」
雪道をひたすら進んでいく。砦から北西へ少し行くと、鉱山の町がある。その町から更に少し行ったところに、北の大鉱山があった。
「雪が積もってたんじゃ、鉱山までの道のりも大変だね」
「あぁ。降るたびに雪かきをすんのは、大変だぜ。坊ちゃん」
「これ毎日雪かきをするの?」
「しなきゃ鉱山に行けねぇからな。いや、わしらドワーフ族は鉱山のすぐ脇に住居を構えてんだがな」
「けど、母ちゃんたちがなぁ」
鉱山で働いているのは、何もドワーフ族だけじゃない。町から鉱山へ向かう人間族もいる。
そして鉱山の脇に穴を掘って住居にしているドワーフ族たちも、食材の買い出しのために町へ下りていかなきゃならない。その仕事は男たちじゃなく、女たちだ。
「うわっ」
「おい、滑るから気をつけなよ」
「もう滑りましたよ。あぁ、嫌だ。こうなったら――錬金魔法!」
「あ? 坊ちゃん、何を錬金するつもりだい?」
「トンネル!」
ストックしてある岩をブロックにして、人が二、三人並んで通れるようなトンネルを錬金する。それを歩きながら、鉱山までの道にどんどん並べて行った。
階段があれば、その階段の形に合わせてピッタリかみ合う様に。
「ほぉ、こいつはいい。これならいくら雪が降っても、こん中じゃ積もらねぇ」
「これなら母ちゃんたちも大喜びだぜ」
そうして町からだいたい五百メートルぐらいのトンネルを錬金設置しながら歩いて、鉱山の入り口に到着。
「おぉ、懐かしの我が家だぜ」
「ご家族はいつこちらに戻ってくるんですか?」
「中を片付けてからだな。一年近く使ってねぇからよ」
「じゃあ、お手伝いしますよ。移住してくる家族の住居も必要ですしね」
元々そのつもりで、一週間の泊まり込みの予定だ。
ゼナスの子供たちは夕方になれば砦の魔導師たちがゼナスへ送ってくれる。雪が楽しくて帰らないって言うかもしれないなぁ。辺境伯を困らせないといいけど。
「住居はこんな感じでいいですか?」
「えぇ、えぇ。十分でさ、ディルムット坊ちゃん。わしらドワーフは、人間ほど広い部屋だと逆に落ち着かなくってねぇ」
そういえば、親方たちの住居も広くはなかったな。ベッドがあって、タンスがあって、通れるスペースがあって、それだけだった。
親方が前に言ってたっけ。部屋が広いと歩くのが億劫だって。それで広くない方がいいのかな。
まぁドワーフ族は歩幅が狭いからね。同じ距離を歩くにしても、人間よりは歩数が多くなってしまうし。
洞窟住居を一軒錬金したら、そこからは同じものを量産するだけなので簡単だ。
リビングと、あとは部屋は三つ。夫婦の寝室、子供部屋。余った部屋は物置にでもできる。
ベッドや家具を錬金して各部屋に置く。
これから移住してくるドワーフ族が他にもいるかもしれない。それも含めて五十軒分の洞窟住居を錬金しておいた。
それから鉱山入り口に小屋を錬金して、一時保存に入れてある掘削道具を並べておく。
かなりの数を錬金したから、少なくとも半年は持つだろう。なくなればまた新しいものを錬金して持ってくる。頻繁に来るのは面倒――いや、大変だし、大量に持ってきたんだ。
「他に必要なものはありませんね?」
「そうだなぁ……酒も錬金してくれりゃあなぁ」
「材料を持ってきてくださいよ」
「はぁ……ゼロから酒を造れる錬金魔法があればなぁ」
そんなご都合主義な魔法なんか、あるわけないだろ。そんな魔法があるなら、俺は酒よりも……うぅん、酒よりもなんだろう? 何が欲しいかな?
……米。お米欲しいなぁ。
アスデローペ卿がお米を持ってきてくれたけど、日本米じゃなくって長細い外国米の方だった。
日本米、食べたいなぁ。
「それじゃ、俺はゼナスに戻ります。必要なものがあれば手紙で知らせてください」
「あぁ。何から何まで、感謝しているよ坊ちゃん」
「こちらこそ。短い間でしたが、ゼナスの開拓にご協力くださり、ありがとうございます」
「よしてくれ。お礼を言うのは俺たちだぜ。ま、これからはここであんたの助けになってやれるがな」
「ミスリル。よろしくお願いします」
「おうとも」
ミスリルの採掘が進めば、これから魔導具の錬金がやりやすくなる。転送の魔導具だけじゃなく、他にも錬金できるようになるだろう。
「さぁて。こっちは終わったし、明日っから町の錬金の再開だ」
そっちの引っ越しもそろそろだもんな。
町はまだ未完成だけど、砂漠からの移住者たちには先に引っ越しを済ませてもらおうと思って。今は仮設の住居だからね。家の作りは単純な豆腐ハウスだし、家も狭い。アパートみたいな集合住宅もあるしね。
彼らが住めるだけの戸建て住宅は完成しているし、通りの整備が終われば馬車も通れるようになる。
ゼナスの町が、大きく生まれ変わるぞ!




