207:温泉と言えば温泉饅頭だ!
「王妃様も絶賛されたのですって」
「まぁ、本当に?」
「美肌効果のあるオイルだのなんだの、これまでいくつも試してみたけど実際に効果があった試しがありませんわ。……本当に効果ありますの?」
「それをこれから試すのですわ。うふふ」
うふふ。ご婦人方は興味津々なご様子だ。若い令嬢でも年頃の方は美肌という言葉に反応するし、純粋にスパというものへの好奇心もあるようだ。小さなお子様は好奇心が100%占めている。
子供用に浅いプールや滑り台も用意してあるので、楽しんでもらえるだろう。
エヴァの提案で令嬢向け、令息向けでデザインを変えている。令嬢向けでは、今、国内でも流行しているドールハウス用アニマル人形を小さな子供サイズにしたものを飾り、まるで自分がドールハウスの世界に入ったような、そんなデザインにしてある。
令息向けはロボットだ。あとモンスター――ただしリアルモンスターではなく、俺が考えた空想モンスターだ――を飾って、温泉大冒険! みないなデザインに。
うん。令息向けの方が錬金してて楽しかったな。
昨日は王妃様が突然の来訪で、温泉スパと泥パックをたっぷり堪能された。
夕方にはお帰りになったけれど、王宮経由でゼナスへ来る貴族たちに、十分な宣伝をしてくださったようだ。
そう。ゼナスへ来るには、ほとんどの家門が王宮を経由しないととんでもなく移動時間がかかる。
父上殿の方から陛下にお願いして、王宮の転送の魔導具を使わせて欲しいと打診してもらったんだよな。すぐには返事を頂けなかったんだけど、どうやらエヴァママから温泉やパックのことを王妃様が聞いたらしくてね。
十日に一度、優先的に通わせてくれるなら――という条件で、転送の魔導具を使わせてもらえることになった。
ゼナス行きの魔導具だけ、別の場所へ移そうかって案もあるようだ。
ほんと、ご迷惑おかけしてすみません。
それとは別に、王都からも遠い家門へは転送の魔導具を設置することで対策をとる。その件も陛下に許可をもらい、条件としてそれ相応の騎士団を有する家門のみということになった。
それと信用するに足る家門――とも。
王弟の件で手柄を立てた家門の中で選ぶみたいだ。
ま、それはまた後日として――
そうして迎えたスパオープン当日。
エヴァママが事前にあちこちのご婦人に広めてくださったおかげか、初日にして予約は完売。
王妃様の宣伝も、これから国中に広がっていくだろう。しばらくは予約が途切れることはない――と思う。
まぁ前世の地球と違って、予約の手紙を出すのも移動も、とにかく時間がかかるからなぁ。
転送の魔導具を持った家門ばかりじゃない。持っていない家門の方が多いんだ。
フェアリー・ワイバーンを所有する貴族は更に少ない。
それを考えると、どこかで予約が途切れることはあるかもなぁ。
「とても素晴らしいお湯でしたわ」
「二度、泥パックをしただけですのにお肌の艶がぜんっぜん違いますわ。次の予約も入れましたの」
「私もですわ」
「ありがとうございます、みなさん。あ、これはお土産です。甘いので、ちょっと渋めの紅茶と一緒にお召し上がりください」
温泉と言えば温泉饅頭だ!
残念ながら俺は温泉饅頭を食べたことがないし、テレビでしか見たことがない。
でもまぁ、こしあんとかが入っているんじゃないかな?
フィッチャーに頼んで小豆を探してもらうと、あった。
料理人たちに俺のイメージを伝え、試行錯誤して完成したのがこの温泉饅頭だ。
コツとしては、焼き上がった後の生地がしっとりしないこと。水分量を減らし、ちょっとパサつくぐらいにすると上手くいった。あとバターの量も減らしたっていってたな。
食べた後で思ったのは、会社の同僚がお土産といって持ってきたもみじ饅頭に似ているかも。
ま、温泉饅頭ってことでいいさ。
初日のお客様には満足いただけた。
次のお客様は明日だ。
貴族相手だし、室内の清掃は入念にしなきゃならないから連続で客を取らないようにしている。働く人の負担もあるしね。
一般のスパの方も大盛況だったようだ。噂を聞いた冒険者が宿場町ゼリュスから来たようで、それもあって大賑わいだったと。その恩恵は町の屋台や宿にもあって、宿に人が宿泊すれば食堂も賑わう。食堂が賑わえば食材を売るお店も潤う。冒険者がくれば鍛冶屋、雑貨屋も賑わう。
ひとつの施設で人を呼び込めば、関係ない所にも恩恵があるもんだ。
町って、こうして発展していくんだなぁ。
さ、スパはみんなに任せて、俺は町づくりの方へ戻るとするか。
これから毎日温泉にも入れるし、俺の開拓も捗るってもんだ!




