203:今度は悲鳴が上がった。
温泉を町の方へ引き込むのは、町の引っ越しが終わってからだ。いや、どこに温泉施設を錬金するかは考えるけどね。
それはカーク卿にお願いしたのたが、最初は顔を青くされてしまった。
ほんと、みんな温泉を怖がりすぎたって。
町造りも俺の仕事はだいぶん減ってしまった。
基礎の錬金、それから現在になる石煉瓦の大量錬金、住宅の何割かは錬金したけど、あとは領民任せだ。建築家を育てるためにね。
時間に空きができたから趣味のロボット錬金をして、町のシンボルとして噴水に立たせたい。
背中のブースターから水が噴き出すようにしたい。
ロケットパンチの代わりに水を出す。それでもいい。
そう交渉したんたけど……。
「ディルムット。それはやめておこう。とうしてもっていうなら、屋敷の裏庭を使ってもいいから」
「……はい。わかりました……」
しょんぼりだ。
しかたないからミニサイズのものを錬金して、カチャに入れることにした。
「あ、ドールハウスサイズにすれば!」
新しい人形として、令嬢やご婦人方に喜ばれないかな!?
「兄さま。ぜったい売れないからやめた方がいいわ」
「え……ダメ?」
「ダメ」
ぐすん。
こうなったらふて風呂にいってやる!
ちょっと風呂まで遠いのが難点だけど、まぁそこは仕方ない。
あと、風呂から帰る間に汗だくになるのも仕方ない。
そうだ。帰りはドワーフのトンネルを使うかな。
風呂から直接繋げると、坑道に温泉が流れ込んできますかもしれないし、少し離れた何処から地下への階段を錬金しないとな。
階段までは屋根付きの通路を錬金すればいいか。
よし!
「あ? 通路として使うだぁ? 坑道はそんなに広くはねぇんだぜ。掘った岩だのなんだのを運んでんだ、邪魔になるだけだろう」
「そこをなんとか……あ、じゃあ俺が通路の錬金をするよ」
ドワーフの坑道に沿うように通路を作って、更に町の西にある彼らの居住区まで伸ばした。これで少しは涼しいだろう。少しは、ね。
温泉施設も改造した。半身浴ができるよう段差をつけたり、足湯を作ったり。
あ、ロボットも飾ろう。
温泉に行くたびあれこれ追加していると、ある日……。
「ディルムット様。あの」
「マーガレット?」
マーガレットが他のメイドや使用人と一緒に俺を呼び止めた。
「ディルムット様。最近、夕方になるとお出かけされていますが、どちらへ?」
「温泉に行ってるって、伝えていたはずだけど」
「本当にあの臭い地獄の釜の湯ですか!? だってディルムット様、最近お肌がすべすべだし、髪だって艶々じゃないですか!」
「そうかなぁ。自分じゃわからないけど」
「いつもお世話をしている私が言うんだから間違いありません!」
うっ。なんかマーガレットの圧が凄いんですけど。
けど肌がすべすべで髪艶々とかって、温泉効能あるあるじゃないか。
魔法陣鑑定、見落としていたのかな? 成分とかいろいろ脳内に情報流れてきたし、面倒臭くてちょっと読み飛ばしたけどさ。
「ゼナスは日差しが強くて、お肌のお手入れ大変なんですよ! それなのに……ディルムット様だけずるいです!」
「お肌の潤いを保つ秘訣を教えてください!」
「いや、だから温泉に入っているだけなんだって」
「「ディルムット様!」」
本当に温泉なんだってばぁー!
そこまで言うなら入ってみたらいいじゃないかと勧めるんだけど、それは怖いという。
俺は毎日入ってますけど?
そう伝えると、信じられないと言われて公開処刑――いや、公開入浴させられることになった。
待って。婿入り前なんですけど?
「ガウンをどうぞ」
「お着替えはお手伝いいたしますので」
「せっかくですから香油もご用意いたしましょうか」
「いいですわねぇ」
俺……弄ばれてる?
普段だって風呂はひとりで入ってるのに!
お年頃なのよ!(身体は)
脱衣用の個室、錬金しといてよかった。
そこでガウンに着替え外へ出ると、使用人の女性軍団があ待ち構えていて、めちゃくちゃ真剣な眼差しでガン見された。
「ディルムット様……ほ、本当に大丈夫なのですよね?」
「やっぱりカティア様をお呼びしてからのほうが」
「え、なんで母上を?」
「「治癒のためです!」」
…………そこまでか。
「いいよ、いらないから」
今日はリラックスして温泉を楽しめないなぁ。はぁ……。
とため息交じりで温泉に浸かると、今度は悲鳴が上がった。
「ディルムット様ぁぁぁ」
「はい」
「お、お手当を!」
「いりません」
「あぁぁぁ。わたくしたちのワガママのせいでディルムット様が犠牲にぃぃ」
「生きてるって……」
こんな調子で美肌なんかかなえられるのかなぁ。
あぁそうだ。
「錬金魔法——お。やっぱり読み飛ばしたところに美肌効果あった。あったけど——え、これって……」
【人体に及ぼす影響です——疲労回復、冷え性解消————美肌効果、髪艶、治癒効果弱、栄養促進などなど】
治癒、栄養促進?
なんだよ、これ。




