202:服をぬぎぬぎ。
「おんせん? なんだいディルムット。その、おんせんってやつは」
しまった。この世界には温泉って言葉がなかったんだった。
存在はしているんだけど、なんせ臭い。源泉だと高温だし、なんだったら沸騰までしている。
そんなものが身体にいいなんて思う人は、まぁいないだろう。
前世でも最初に温泉に入ろうとした人は、何を考えて入ったんだろうな。いや、気持ちいいけどさ。
「えっと……地熱で温められた地下水ですよ、父上」
「地熱で? もしかして、あの魔界から噴き出しているっていう?」
そう。こっちの世界では悪魔——デーモンたちが暮らす魔界から吹き出している不吉な水として知られている。
ただのお湯だってのに……いや、効能がある分、身体にだっていいのにさ。
「父上、魔界の水ではありません。大昔、この辺りは火山があったんだと思います。溶岩の熱がまだ残ってて、それが地下水を温めているだけですよ」
「し、しかし……」
「臭いのは硫黄のせいです。火山地帯にあるものじゃないですか。ぼこぼこ沸騰しているのだって、地熱によるものです。水の入った鍋を火にかけていれば沸騰するのは当たり前でしょう?」
「う、うん。それはまぁ……そうなんだが……」
ま、誰も温泉なんてものを知らないんだから、恐怖を感じるのは仕方ないんだけどね。
だからここは!
前世の知識を持つこの俺が、人身御供になって温泉体験しようじゃないか!
「ということで、温泉を掘り当てます」
「おいおいおいおい。せっかく塞いだってのに、また掘るのかよ。そんなことすりゃ、坑道が水没しちまうだろうが」
「坑道から掘るんじゃないですよ。ちゃんと地上から掘りますって。ただここがどのあたりかわからないから――錬金魔法」
坑道から地上に向かって岩盤をカットしていく。ある程度くり抜けば、今度は砂が落ちてくる。
その落ちてくる砂をブロックに錬金。ストックしないでそのまま地表まで伸ばす。
で、こっから地上に戻って、さっき錬金したブロックを探してっと。
おぉ、ちゃーんと真っ直ぐ掘ってたんだなぁ。さすがドワーフ族だ。
坑道の入り口から北北東ぐらいの方角に向かって真っ直ぐ行ったところに、さっき錬金した砂ブロックがニョッキしていた。
こっからは坑道の入り口と同じように、ブロックの周りを圧縮錬金して大きな砂ブロック――いや、コンクリートにしてしまう。
さて、考えよう。
温泉を掘り当てたとして、ブシューって吹き出したときに高温だと危ないな。まぁ魔法陣をぶっ差しながら、源泉を探そう。
おっと、その前に温泉施設も錬金しないとな。
まぁ最初は俺しか入らないんだろうし、少し大きめの風呂でいいや。
パパッパッパパと砂を錬金して小屋を用意する。その中に浴槽を砂ブロックで……なんか同じ砂ブロックだと、床と浴槽が見分けにくいな。浴槽は普通の石で錬金しよう。
角はちゃんととって――。
で、浴槽のすぐ外の床から地下へ続く螺旋階段を錬金してぇ。魔法陣を壁にぶっ差しながら成分を調べて……意外と出てこないな。
もう少し場所を移動して――。
あっちでもない、こっちでもないと一時間ほど魔法陣を壁に抜き差ししてようやく見つけた。
そこからは源泉までの土や石、岩を圧縮錬金して水道管のような形にし、地表までそれを繋げる。最後に源泉までそれを貫通させれば……。
「温泉だぁぁぁぁー!!」
ザパァァァっと浴槽に溜まる温泉。
あ、これどうやって止めようか?
と、とりあえず錬金で管に蓋をしてしまうか。
それにしても、思ったより温度は低そうだ。湯気はでているけどね。
念のため、魔法陣で水質鑑定っと……うぁ。塩分濃度が高いみたいだな。さすが、直ぐ近くに岩塩層の山があるだけはある。鉄分も高めみたいだし。
抽出してしまえば人体への影響もないかな?
「錬金魔法――塩分と鉄分、抽出っと」
抽出した鉄分って、どんな風になるんだろう?
と思ったら粉末!? あああぁぁ、容器用意してなかったから、湯船の中に落ちちゃったよ!
容器容器――再抽出!
で、塩と鉄の粉をゲットして、お湯の成分を見て見ると……人体への影響は――冷え性解消、疲労回復、肩こり腰痛に効く!!!!!
まぁ、冷え性は正直、ゼナスで効果あるのかどうかは微妙だな。
「お、おい、坊。本当に入るのか?」
「はい。ちゃんと錬金魔法で成分も調べましたし、調整もしたんで大丈夫ですy」
服をぬぎぬぎ。
足先をつけて、温度を確認。あれこれやっている間に、少し下がったみたいだ。
それでも砂漠じゃ少し熱く感じるけど、汗もかいているし温度はもういいや。
「くあぁぁー、癒されるぅ。さいっこうだね」
あぁ、そうだ。屋根はガラスにしよう。露店風呂気分を味わえるし。
ガラスの素材、砂はある。石灰も手に入るし、あとは植物の灰。それもどうにかなる。
砂漠のスパリゾートとか、いいんじゃないかなぁ。
町まで温泉引くのもいいな。
まずはみんなの温泉の素晴らしさを理解してもらわないと。




