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【書籍化】毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
5章

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200/210

200:野菜、いっぱい食べようっと。

「エヴァアァァァァァァァ。寂しかったよおぉぉぉぉぉぉ」

「お父様!? は、恥ずかしいから、そんなに大きな声を出さないでください!」


 ゼナスへ戻って来たのは出発してからちょうど一ヵ月後。

 どうやら俺たちの乗る砂船が見えてすぐ、騎士がヴァルドリヒ公爵に伝えたようで。

 下船して、屋敷まで徒歩で戻る頃には、新旧の公爵様がお越しになっていた。


「じぃじも寂しかったぞおぉぉぉぉぉぉ」

「も、もう! おじい様まで。恥ずかしいからやめてください!」


 そういいつつ、エヴァの顔は笑っている。本当は嬉しいんだよね。


「兄上は寂しかったですか?」

「ん? お兄ちゃんが寂しかったかって? はっは。ジーク君。お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだよ。一カ月ぐらい、どうってことないさ」

「というか、兄様はこれまでも一カ月ぐらい、しょっちゅういなくなってたし」

「いや、いなくなってたわけじゃなくって」

「それもそうだね。あ、兄上。ドールハウスの売り上げは順調ですので、追加のハウスをお願いしますね。それと土を均す作業も終わっています。カーク様の模型も完成していますので、町づくりを本格化したいそうですよ」

「あ、うん。あとでカーク卿のところ行ってくるよ」

「うわあぁぁぁぁぁぁん。エヴァアァァァァァァァァァ」


 あっちとこっちで、温度差が全然違う。

 なんだろう、ちょっとエヴァが羨ましくもあるな。


「おかえりなさい、ディル。お風呂を入れてもらっているから、ゆっくり入ってきなさい。その間に食事の用意もしておくから」

「母上……ありがとうございます」

「今日はお前が大好きなメニューを取り揃えたよ」

「父上! うぅ、ありがとうございます。楽しみにしていますね」


 ふふ。やっぱり父上殿と母上は俺を大切にしてくれているんだ。

 エヴァが羨ましいなんて言って、ごめんなさい。


 もちろん、風呂は俺のためだけに用意されたわけじゃない。

 屋敷内にある大浴場ではロバート卿や他の船員たちも入り、俺とエヴァはひとり用の豪華浴槽だ。

 もちろん、男女別だぞ!


 あぁ、でも生き返るなぁ。

 そりゃ砂漠に行ってた間も、風呂は用意してたけどさ。でも、ゆったり寛げる環境じゃなかったんだ。船上じゃなく砂漠の上に石風呂を設置したから、気を抜くとモンスターが寄って来てさ。

 風呂自体は砂ブロックで囲って安全を確保していたけど、上がったそばからモンスターが来てまた砂まみれ……そんなのが一カ月も続いたんだ。

 こうしてモンスターの襲撃に悩まされることなく、ゆっくり足を延ばせるなんて……あぁ、なんて幸せなんだ。

 風呂上りには夕食も用意されているし。あぁ、一ヵ月ぶりに砂を食べずに済むな。

 どうしても砂漠での食事は、ちょっと風が吹いただけで砂が料理についちゃってさぁ。

 重量の関係で船室も作れなかったし。

 まぁ幌をかぶせて日除けは作ってたけどさ。


 さぁ、体も擦ったし髪もあらったし!

 ふやける前にあがろうっと。






 エヴァが上がって来るのを待ってから、待ちに待った夕食の時間だ。

 今日は新旧の公爵様もご一緒だ。

 エーリヒ様がこの場にいないってことは、もしかして領主としての仕事を任せてきてるとか?

 おかわいそうなエーリヒ様……。


 ま、それはそれ、これはこれ。

 夕食を楽しもうじゃない……か……。


 めちゃくちゃ楽しみにして食堂の扉を開くと、テーブルに並んだ見覚えしかないものが目に入った。


 蟹……いや違う。蟹味のサソリだ。

 この一ヵ月、毎日見ていたあいつだ!!!


「ディルの大好物ですものね」

「そろそろ戻ってくる頃だろうって、キース卿とウェイド卿が獲ってきてくれたんだよ」

「そ、そうなんですね。わぁ、嬉しいなぁ」


 キース卿、ウェイド卿……できれば砂漠の方じゃなくって、山の方へ狩りに行ってほしかったなぁ。


 俺、この一ヵ月で蟹嫌いになったかも。

 野菜、いっぱい食べようっと。


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