196:いいことだらけだ。
町錬金の合間に、砂船の高速化を考えてみた。
移動時間が短縮されれば、砂漠カチカチ化計画もやりやすくなる。もちろん、モンスターから逃げるという点でもだ。
「小型船が早いのはわかってるし、だったらもっと軽量化したらどうかな?」
「そうなると船員をあんま乗せられねぇな」
とキャット・ルー族の族長が言う。
まぁ荷物を運搬するわけじゃないし、船員は必要最小限でいいはず。俺がいれば食料も一時保存で持っていけるしね。
帆船だと風の抵抗が大きく、小型船でも限界速度がある。
帆を立てなければいいんじゃないか? って話になるけど、魔導具から送り出される風をどうやって受け止めるかなんだよ。
逆に風を噴射させて前に進むって手は? ジェットエンジンみたいにさ。
船尾に風の魔導具を設置して、一気にぶわーって風を……風……噴射させたらめちゃくちゃ砂が舞い上がるよな。砂まみれとか嫌すぎる。航海中は風呂にも入れないんだし。
「まぁスピードが乗れば、舞い上がる砂をぶっちぎって前に進めるだろうがな」
「あぁそうか。スピードさえ出てしまえばいいのか。じゃあこれまで通り、最初は帆に風を当てて加速し、スピードに乗ったところで後ろの魔導具を起動させるってのはどうかな?」
「あぁ、それならいけるだろうぜ。ただスピードが出過ぎると、今度は前からの風で船の揺れが激しくなんだよな」
スピードが出れば、当然自然の風も帆や船体に当たって空気抵抗が生まれる。
空気抵抗を下げるのなら……やっぱり帆が邪魔だよなぁ。
戦闘機みたいにさ、なるべく船体も平らにしたい。
テレビで見たけど、二艘を繋げたようなのってスピード出るんじゃなかったっけか?
わからなければ錬金すればいい!
今までの小型船をもう少し小さくした帆船タイプのものと、帆を失くした……いや、砂がかかってしまうし帆はやっぱりいるのか……。
そうだ。船首の前に帆を出すってのはどうかな? パラグライダーみたいな細長いものをさ。
どうやったって船体は空気抵抗を受けるんだ。まぁ船体を尖らせれば空気抵抗も減らせるけど、ここは諦めて帆を張って魔導具の風を受けてもらおう。
船の幅も人ひとりが横になれるぐらいあればいい。
錬金したら、実際に走らせてみる。
「よろしくお願いしま~す!」
「「おぉー!」」
砂船を操舵する砂漠の民の意見を聞き、二艘式の方は船員五人となった。まぁ船が小さいので、せいぜい乗せられたとしても十人ぐらいだってさ。
スタートの合図とともに魔導具が起動し――。
「ぶえっ。ぺっぺっぺっぺ」
「ひでーなこりゃ。おい!!」
大勢の見物客が砂まみれになった。
「だから船尾の魔導具はスピードが出てから起動するようにって、いったじゃないですか!」
出航と同時に船尾の魔導具起動ダメこれ絶対。
「結論。二艘式最強」
「あぁ、ありゃ速ぇぁな。船が狭いから、荷や人を運ぶのには適していねぇが」
「まぁ急を知らせる目的でなら使えますよ」
小型船はアスデローペ卿が持つ大型船より七割ほど早い。二艘式はその小型船より五割ほど早かった。しかも、今回検証したのは、小型船にも船尾に魔導具を配置してだ。
これで砂漠のカチカチ化計画が捗るぞ。
カチカチにするのは南側だけ。奴らの……蛮族の領域近い砂漠をカチカチにする。
できれば強固な城壁も築きたい。
ワームだけじゃなく、奴らも通さないために。
が、それは来年の話だ。今は町の錬金が最優先!
あとドールハウスだな。
カーク卿から町の模型を頼まれせっせと錬金していたら、何故かドールハウスに興味を持たれ、今度はそっちの設計もしてくれることになった。
ハイテンションでドールハウスなんてって否定していたのに、今じゃすっかり自分で人形を並べて遊んでいるし。
二十代半ばの良い年した男がだぞ? 信じられる?
まぁおかげで錬金が捗るけどさ。
新年から発売を目途にドールハウスを量産中。
量産ハウスだけじゃなく、一点ものも各支店に何個か用意してある。それを狙って令嬢ご婦人方が集まってくれれば、それが宣伝にもなる。
最近はハウスや家具をただ錬金するだけで、細かい装飾や塗装は他の人にやってもらっている。
本音で言えば俺ひとりで全部錬金した方が早いんだけど、それをすると何十年後か、いやもしかして近い将来になることだってある、俺が死んだあと。
俺がなんでもやってたら、ここの領民は農業以外できない人になってしまう。
俺がいるときだって、体調を崩して倒れた時には同じことだ。
――と、父上殿やフィッチャーから怒られたこともある。
なんでも自分ひとりでやり過ぎだって。
だから、みんなにも手に職を持ってもらうためにみんなにも手伝ってもらう様になった。
その結果――。
「凄く味があっていいと思います。ディル様が錬金してくださったものは完璧なのですが、人の手で着色したものは、なんていうか……何年も人が暮らしたような、そんな色合いになって、温かく感じるんです。……あっ。ディ、ディル様の錬金してくださったのが冷たいとかそういうんじゃないんですよ」
「あ、いやわかるよ。うん。俺が錬金すると、色むらもないからね」
上手くイメージすればできるんだろうけど、面倒くさい。
エヴァにも「人に任せるのはいいことです」って言われ、本体だけ量産錬金することにした。
まぁ色をどうしよう、この辺どうしようとか考えなくていい分、錬金時間も短くなるし魔力の消費量も減る。いいことだらけだ。




