195:はぁ……やるか。
屋敷は完成した。でも引っ越しはまだまだ先だ。
騎士団の詰め所、宿舎、それから町が完成してからじゃないとね。まぁ新しい家具なんかは搬入していくけどさ。
中庭なんかは庭師にお願いしてアナログで作ってもらう。さすがに植物を配置とかは、本職のセンスが必要だからね。
いや、やろうとしたんだよ? ぶっちゃけ少しやったんだよ?
その結果が、庭師に任せようってことになったんだ。
何が気に入らなかったのか、解せぬ。
「よぉし。これでどうかなぁ」
「ンギュイ!」
今やっているのは町の階層の土均しだ。
大量の土を持ってきて、一時保存からどっさり取りだしたものをある程度満遍なく広げる。
この状態で家を錬金しても、重さで沈下してしまうんだ。
均した土もしっかり押し固める必要があって、そのために思いついたのがロードローラーだ。
アスファルトを敷いた後で、丸いローラーをつけた車がゆっくり押し固めていたアレだ。
あれって手で押せるものもあるんだよな。もちろんエンジンはついているんだろうけど。
この世界でエンジンなんてものはない。錬金もできない。そんな知識は俺にはないからな。
だから手動エンジンを用意した。
それがコロコロだ。
うん玉をころころしているんだ。ローラーだってころころできるんじゃね?
の精神で錬金してみたんだが、これがなかなかいい。
「おぉ、いい感じじゃないか。きつくない?」
「キュキュキュウ」
ぴょんぴょん跳ねてから、またローラーをごろごろ転がしていく。
ローラーの直径は一メートルぐらい。横幅は二メートルほどで、一本を二匹のコロコロで転がしてもらっている。結構余裕そうだ。
そのうちまだ子供のコロコロたちもきて、俺のズボンを引っ張って「やりたい」とアピールしてきた。
で、直径を半分にして長さは同じ。一本を三匹でゴロゴロと楽しそうに転がし始めた。
コロコロたちのいい運動になるな。
もちろん人間だって手伝って、硬く圧縮された地面がどんどん完成していく。
できたところからカーク卿がロープを使って区画割を決めていく。既に紙の上では町の全貌が完成しているので、あとはその通りに作っていくだけだ。
そんなある日、カーク卿と物件錬金前のチェックをしていると――
「ディ、ディルムット、どのはその……ド、ドールハウスを、販売、される、んだとか?」
この人はほんと「さぁ建築するぞ!」って時以外、おどおどして物怖じしまくってんだよなぁ。別人みたいだ。
「はい。年明けから販売できるよう、今準備中です。フィッチャー商会の各支店に、販売コーナーの準備をしてもらっている最中でして」
支店によっては新しい店舗を用意するとのことだ。
さすがにそこまで出向いて行って、店を錬金することはできない。転送の魔導具を持つ家門の領地なら、お願いしていけなくもないけど。
だけど全ての領主が転送の魔導具を持っているわけじゃないからね。むしろ持っていない領主の方が多いぐらいだ。
魔導具の件は慎重にならなきゃいけないからね。前みたいなこともあるし。
「ド、ドールハウス……」
「カーク卿も気になりますか? 建築という点では、ミニサイズとはいえ同じ分野でしょうし」
「……建築をオモチャなどと一緒にされてはこまる! 人の営み、そこでの人間模様、愛、憎悪、悲しみ! そのすべてを形ある限り共にする住宅と人形の家と混同されるとは不本意ですぞ! 建築とは、そこで暮らす人々を想い、設計、建築するもの! ドールハウスはそこに暮らすものの気持ちなど考慮されない、ただ見目に拘っただけの物でしかないのですぞ!!」
「あ、はい」
急にスイッチ入るんだもんなぁ。難しい人だ。
「あ、の、ですが、その……ま、町の模型を、つ、作ってみては、どうでしょうか?」
スイッチ切れたよ。
けど、模型か。ジオラマみたいなもんだよな。
「それはいい考えですね。実際に町の錬金に着手する前に、ミニチュア模型を作って全体図を見て見るのはいいかもしれません」
そう話すとカーク卿の瞳が輝く。そして。
「では建築する住居の模型を作りましょう! ディルムット殿が希望する、町全体で統一感のある住居も既にデザイン画ができております! 住居だけではなく店舗や街灯、町のオブジェなども! 利便性のことも考慮して、どこに何の店舗を置くべきかもよぉく考えて配置いたしましたぞ!!」
「あ、はい。じゃ、何を何軒錬金すればいいのか、まとめていただけますか?」
「もうまとめてありますぞ!」
スイッチ入っちゃってるな。
はぁ……やるか。
土を均して圧縮する作業は、もうしばらくかかりそうだし。




