194:ピカピカの新品になるのにさ。
「部屋だけ、かぁ。それならむしろ錬金するのも楽だし、量産も簡単だな」
「はい。小さな令嬢にはお屋敷どんっみたいなドールハウスより、お部屋だけの物の方がいいそうです。代わりに、家具などを少し大きめに錬金していただきたいということでして」
「大きくですか?」
令嬢やご婦人方の作戦会議は白熱し、俺は途中退場。
いやもう、女子会みたいなのりで、男の俺がいちゃいけない場所だなって途中から思い始めてさ。他に仕事があるから、意見はまとめて置いて欲しいとお願いして逃げだした。
昼食を挟み、午後のティータイムを挟み、そして夕方にようやく終わった会議のまとめをエヴァに聞きながら、自分の中で整理していく。
「小さなものですと、うっかり落として失くしてしまいやすいからと」
「なるほど。落とした拍子に蹴飛ばしでもしようものなら……」
見つけるのは大変だろうな。
特に小さな子の場合、その頻度は高い。だから子供向けの部屋だけハウスに合う家具は、大きめにして欲しいそうだ。となると、家具のサイズは屋敷どーんタイプと部屋どーんタイプで分けなきゃな。
他にも、庭園セットが欲しい。馬車も欲しい。
現実ではありえない、奇抜なデザインのハウスも見てみたい!
という要望があった。
奇抜って……。現実ではありえないねぇ。
現実……それってこの世界の現実だよな? だったら、異世界の現実はどうですかね?
くふふふ。
「ありがとう、エヴァ。助かったよ」
「いえ、お役に立てて、私も嬉しいです。それに、私の希望もこっそり入れましたので」
「ははは。こっそりなんて言わず、堂々と言ってくれればいいのに。君のためならいくらだってオーダーメイドいたしますよ、お嬢様」
「まぁ! ふふふ」
そうだな。いつかその日が来る時までドールハウスに興味を持ってくれていたら、教会と、それからウエディングドレスの人形を錬金してプレゼントしよう。
ふふ。俺もロマンチストになったもんだぜ。
「エヴァ、遅くなるとヴァルドリヒ様が心配なさるだろうし、送っていくよ」
「お父様は遅くならなくても心配なさっていますから、無視して大丈夫です」
……最近、ちょっとヴァルドリヒ様がおかわいそうに思えてきた。
俺の将来の姿かもしれないと思うと、ね……。
だから俺は、娘が生まれても必要以上に構って欲しそうにしないぞって決めてある。
「じゃあ今日は一階の壁を錬金しま~す」
「よろしくお願いします! しかし早く外壁と屋根を完成させねば、雨でも降ろうものなら大変だ。だから今日は頑張って外観まで全部錬金しましょうそうしましょう! あぁぁぁ、早く見たい!」
「カーク殿。雨は滅多に降りませんし、木材は使用してないから降ったとしても大丈夫ですよ」
「ボケかぁ早く見たいんだ! 早く!」
相変わらずテンション高くてついていけない。
ドールハウス作戦会議も終わり、新屋敷の錬金を再開。
基礎の上に白いチョークのようなもので部屋割りを描いてもらい、それに合わせて錬金していく。
素材はもちろん石だけど、何種類かあるんだよな。
茶色い石材が多いんだけど、白っぽい石材も出てきた。それからグレーの石材も。
三色しかないけど、あとは表面の加工でいろいろ作れる。
まずは一番大量に出てくる茶色の石材で壁を錬金して、その上から白っぽい石材を張り付けて見た目を整えていく。白っぽい石材が化粧板の役割だ。
時々、グレーの石材と白い石材を粉砕して、再成形したものも混ぜたりしている。
そうしてなんとか、一日で一階部分の外壁が完成。
翌日は床、それから各部屋の壁、二階へ上がるための階段を錬成し、更に翌日は二階の床と壁を錬金した。でも全体を改めて見て見ると、色味とか石材への装飾とか気に入らない部分もあったりして再錬金。
結局、外観を完成させるのに二週間かかった。
「買ってくださいよぉ~」
「でも錬金できるしなぁ」
「なんもかんも錬金しとったら、自分が儲けられへんやないですかぁ」
さぁ家具を錬金するぞと思っていたら、フィッチャーに泣きつかれた。
自分で錬金できるのに、なんで買わなきゃいけないんだよ。
「兄さま。私、フィッチャーを応援するわ」
「ティファニー?」
「僕もです。兄上、なんでもひとりでやり過ぎです。たまにはお金を出して買わなきゃ、世界の経済はまわせないのですよ」
「ジークが難しい話をしている……」
はぁ……しかたない。家具は購入するか。
でも運ぶとなると、王宮から転送するしかない。私用してもいいのかなぁ。
「父上に聞いてよ。ここの領主は父上、なんだからね」
いずれ俺になるとしてんも、今じゃない。
で、その結果――。
「これはあそこに。あああぁ、それはちゃいますがな」
「やった~! ピカピカの新品だわぁ」
俺が錬金したって、ピカピカの新品になるのにさ。
父上殿はあっさり家具の購入を承諾。
半月過ぎた頃から、続々と王宮から家具が届き始めた。




