191:確信している。
王様が王妃様をエスコートして登場すると、会場は盛大な拍手に包まれた。
いいなぁ、おしどり夫婦っぽくて。
夫婦ってのはああでなければいけない。毒親は滅するべし。
各貴族から王妃様へのプレゼントが贈られるが、それはホールにはない。別室へ運ばれている。
貴族によっては超がつく高級品を贈ることができるだろう。でもそうじゃない貴族もいる。ホールで開封式なんかしたら、金を持っている貴族が持っていない貴族に対し、マウントをとるからみんなの前では開封しない――というのを、今の王様に代替わりしてから決めたそうだ。
素晴らしい!
王妃様は今、集まった貴族らにお礼の挨拶をしている。ざっと見渡しても、二百人ぐらいいるから、大変だろうなぁ。
今のうちになんか食べようっと。
お、蟹だ! 本物の蟹料理だ! サソリじゃない蟹なんて、久々に見たなぁ。
茹でた蟹の足をカットし、身を露出させたもの。それをフォークで取りだして食べるんだけど、殻で隠れている部分はほじくりだしたりしない。それが貴族のマナーだってのがこの世界での食べ方なんだけど……勿体ないんだよなぁ。
あんむ……ん……なんだろう。
本物の蟹が、サソリに負けているって……。
あぁ、帰ったらサソリ食いてぇ。
本家本物の蟹に残念な気持ちになり、ここは素直に肉で攻めるか――とローストビーフをお皿にもりもりしていると。
「さぁ、ディルムット。行きましょうか」
「はひ? お、王妃さま!?」
満面の笑みを浮かべた王妃様がやってきた。その後ろには取り巻きかよって雰囲気のご婦人方がいる。ティファニーやエヴァぐらいの年齢の子まで。
ど、どういうこと?
「さ、行きますわよ」
「い、行くってどこに?」
「決まっているでしょう。あなたからのプレゼントを運び入れたお部屋ですわ」
ま、まさか開封式!?
拉致られた先は、なんともメルヘンな部屋だった。
壁一面の棚には、ドールハウスがずら~り。外観だけを見るもの、建物をぶった切って室内を見るようになっているものといろいろある。ミニサイズの家具だってあるけど、そこに人形はない。
部屋の真ん中には机のようなものが置かれているが、結構デカいな。王妃様の執務室でも兼ねているんだろうか?
「あなたのものはここへ飾るつもりなんだけど、面積は足りるかしら?」
え、部屋の中央に置かれたテーブルって、ドールハウスを置くための台だったのか!?
いやあの、三メートル×三メートルぐらいの、めちゃデカいんですけど!
錬金したのはそこまで大きくないんですが……。
錬金したお城は左右対称で、横百二十センチほど。厚みは六十センチ。
観音開きの扉のようにパカっと開いて、【コ】の字のように飾ることができるようにしてある。
外見も楽しめるし、内装でも楽しめるタイプだ。
ティファニーとジークに手伝ってもらって、まずは庭園の地面になる砂タイルを敷く。お城の下はただのタイルだ。まずそれを敷いて、お城を上に置いた。
「まぁ、なんてステキなんでしょう!」
「立派なお城ですわぁ」
「綺麗~」
ふふ。ご婦人からも好評なようだ。
「こちらが庭園のセットです。石畳みようのタイルや芝生ようのタイル、土のタイルもありますので、お好きなようにお使いください」
「あら。では私が自由に庭園を造れるってことなのね」
「はい。小物もご用意しておりますので、その時の気分でレイアウトを変えて楽しんでください」
屋根付きのテラス、ガゼボも三種類用意した。ベンチや椅子も数パターンある。花壇やアーチ状のもの、噴水と、いっぱい用意してある。特に花壇はかなりのパターン用意した。季節で楽しめるようにね。
形もそうだけど、同じ花でも色違いとかいろいろさ。
二つのドールハウスを錬金してわかったことがある。
量産は難しくないってこと。
いや、ハウスの方は面倒だったりするんだ。形とか、どう展開するか考えないといけないからさ。
でも小さいから量産はできる。まったく同じデザインなら、一度に複数を錬金できるだろう。実際花壇は同時に二十個も錬金したし。下手すると魔法陣の直径五十メートル内に入る量だけ錬金できるかも。
まぁそうなったら花壇とか、万単位で量産できそうだけど。
王妃様や一緒に来た婦人たちがキャッキャと家具や花壇を配置していく。王妃様は羊人形に頬ずりまでしているし、気に入っていただけたようだ。
これで俺の役目は終わりだ。さぁ帰ろうとしたら――。
「ディルムット。ドールハウスを販売するおつもりはないのですか?」
王妃様にそう尋ねられ、列席したご婦人方からも熱い眼差しを向けられた。
「売れますかねぇ?」
確信している。これは売れると!
だがここは出し渋るべきだ。付加価値をつけるためにな!
「売れますわよ!」
「お母さま、私絶対に欲しいです」
「私もよ!」
「でもなかなか大変でして……オーダーメイドは無理が……」
と言うと、残念そうに肩を落とす。
ここなんだよ、面倒なところは。
町を作りなおさなきゃいけないし、砂漠のブロック化もしたい。砂漠のモンスターを絶滅にするわけにはいかないから、蛮族対策用に留めておくけど。
「たとえば、形は同じでも色をご自身で塗っていただければ、個性は出るかも」
「わたくしたちの手で?」
「絵心のある者に依頼するのもよいかと」
「あぁ、そうですわね。それなら綺麗に塗ってもらえそうだわ」
「一個一個、異なる形のものを錬金するのは時間がかかりますが、量産ものでしたら手間は減ります。なんせゼナスの開拓がまだまだですから、そちらを優先させなければいけませんので」
と話しているのだが、ご婦人方はさっそく「私は青が好きだわ」とか「シックが色がいいわ」とか盛り上がっている。
フィッチャー商会の正月の目玉商品はドールハウスで決まりかな。




