187:え、まだ出てくるの?
エヴァの誕生日パーティーから三日後。
今日からさっそく新しい町の錬金に取り掛かる。
「土ですか?」
「あぁ。岩の上に直接だとな、水はけが悪くなり過ぎんだよ。まぁゼナスは雨量が少ねぇから気にしなくてもいいんだろうが、将来のことを考えるとな」
「うぅん、そうですね。でも土かぁ。北上して、採ってこないとなぁ」
「何言ってんだ。素材ならその辺にゴロゴロしているだろ」
ゴロゴロ? ゴロゴロしているのは岩だけど。岩を粉末になるまで粉々にしたって、砂みたいになるだけでは?
「お前さんの錬金魔法で粉末にして、水と枯草やコロコロどものアレを混ぜりゃ、土になるぜ。もっとも、普通は何年、何十年……下手すりゃ何百年もかかるだろうがな」
「でも……俺の錬金魔法なら」
「一瞬だろ?」
へぇ、土ってそんな感じでも作れるのか。
実は最近、住民が増え、コロコロの仲間も増え……うん玉の数も増え、砂漠に捨てている。もしかしたら、砂漠の砂が土に変わったりしないかなって思ってそうしたんだけど。
コロコロに頼んで、捨ててしまった玉を回収してもらおうかな。
枯れ葉は……他の領地に頼もうかな。
季節は秋だ。北の方だと落ち葉の季節になっているだろう。
そうだ。北部辺境とか、山の上の方だし、もう落ち葉溜まっているんじゃないかな。
「ほぉ、落ち葉が必要とな?」
「はい、陛下。ドワーフ族の親方の話ですと、粉状態にまで砕いた岩に水と腐葉土を混ぜると、土になるそうなんです。実際は年十年もかかるそうなんですが」
「そなたの魔法でなら、その何十年も一瞬か」
「やってみないとわかりませんが、おそらく。ただゼナスでは葉が絶望的に手に入りませんから」
「はっはっは。相分かった。各地の貴族にも伝え、庭の掃除をした際には燃やさず、集めておくように伝えておこう」
やった! これで大量の枯れ葉ゲットだぜ!
あとはフィッチャー商会に頼んで、転送の魔導具を持つ家門まで運んでもらおう。そこからは転送許可を貰って、こちらから回収しにいけばいい。
お礼は岩塩か、砂漠でしか手に入らない珍味でもいいかもしれないな。
「ところでディルムットよ」
「はい?」
「精巧に作られたドールハウスを、エヴァに贈ったそうだな?」
「え、はい、贈りましたが」
何故それを。
「実はな、王妃がドールハウス好きでな」
「そうだったのですか。もしかして贈ったものをご覧に?」
「うむ。あの人形たちもな。これまで王妃はドールハウスを飾るだけであった。ハウスに合うドールがなかなかないと言ってな」
特注で作らせたりもしたけど、なんとなくしっくりこなかったらしい。
だが、その出会いはハルテリウス公爵邸であった。
「ディルムットよ、十の月には王妃の誕生パーティーが開かれる。招待状を渡す故、ちと待っておれ」
「あ……はい」
笑うしかなかった。これはどう見ても、王妃様のためにドールハウスと人形を用意しろってことだよな。職権乱用だけど、いろいろ手配してくださっているしお礼はしないとな。
「承知しました。では――」
「ではディルムット。私はふわふわした動物が好きです。それからお庭も欲しいわ」
「え、お、王妃様?」
「これ、王妃よ……すまぬな、ディルムットよ」
は、ははは。執務室の隣で聞いていたのか。
この後、るんるん気分の王妃様から動物人形の要望を聞くことになった。
もしかしてドールハウス産業、きたかもしれない?
北部辺境へ行って、 新しく辺境伯となったアッセンポロ・ベリエンシャ様に挨拶。
「建物で不備はあったりしませんか」
「いや、快適に過ごしているよ。北部での冬は今回初めてだから、どのくらい冷えるかわからないけどね」
「こちらは毎日暑いですけどね」
「ははは。半分ほど交換したいものだな。それで、今日の訪問の用件は?」
「実は――」
土を作るために枯れ葉が欲しい、そう伝えると。
「おぉ! 今まさに、庭師たちに掃除を頼んでいたところだ。今ならまだ燃やしてはおらぬだろう。すぐ中庭へいくといい」
「本当ですか! さ、さっそく行かせていただきますっ」
慌てて中庭へ向かうと、こんもりと落ち葉が溜まっていた。
「その落ち葉、ください!!」
「え?」
驚く庭師に事情を説明するけど、錬金魔法を知らない彼らは首を傾げる。そこで、小山のように貯められた落ち葉を錬金して、葉っぱのブロックにしてみせた。
「こ、こりゃ驚いた」
「はぁ、魔法にもいろいろあんだなぁ。いや、持っていってくれるなら、燃やす手間も省けるからこっちも助かりますよ」
「じゃあ、全部貰っていきますね」
「ですがこれからもどんどん落ちてきますよ、坊ちゃん。あの辺り、全部禿になるまでね」
「あはは。それも全部いただきたいです。そうだ。落ち葉を入れる小屋を用意しますね」
いらなくなったら解体する。ということで、落ち葉を集めやすい場所に小屋を錬金。集めたものが夜中のうちに風で飛ばされないようにね。
扉も付けて、小屋のことをアッセンポロ辺境伯にも伝えてから帰宅。
落ち葉ブロックも一時保存して、コロコロたちの元へ向かった。
「うん玉、集められた?」
「ギュキュイ」
コロコロリーダーが合図をすると、砂の中から出るわ出るわ。うん玉がどんどん出てくる。
え、まだ出てくるの?
「うん玉、何個ぐらい捨てたんだ?」
「ンギュウ……キュ!」
ころころが地面に数字を書く。凄いな、数字わかってんだ。
っていうか五百個超えてるじゃん!
ん? 何々……人間増えたから、これから毎日五十個ずつは増えていく?
「え、でもうん玉って、めちゃくちゃ分解して圧縮してるやつだよね? 前は一日二、三個だったのに」
「キュイウイィン」
あの頃と比べると、めちゃくちゃ人口も増えたもんなぁ。
うん玉、ニオイもほとんどないし、これ自体を販売することもできないかな?




