185:俺もちょっと思ってたけどさ!!
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「エヴァちゃん、お誕生日おめでとう~」
「おめでとうございます、エヴァンゼリン嬢」
九月一六日。晴れ。
今日はエヴァの誕生日パーティーに招待され、ハルテリウス公爵家へとやってきた。
馬車で半月以上かかる距離にある公爵家だけど、魔導具のおかげでその距離を感じることはない。
秒だ。ボタンをポチっとすれば秒で行ける。
いやぁ、魔法って素晴らしいねぇ。
「み、みなさん、お越しいただきありがとう……ございます。あの、その大きな荷物は?」
「あはは。エヴァへのプレゼントにって、三人で考えて錬金してきたんですけど」
「いっぱい造り過ぎちゃった」
「すみません。大きくなり過ぎちゃって」
兄弟三人でかわるがわるそう話すと、エヴァが首を傾げた。
とりあえずエヴァの部屋へ移動することに。
ん?
エヴァの……部屋……だと?
お、おお、お、おと、乙女の部屋!?
いや落ち着け。別にやましい気持ちなんてないんだから。落ち着くんだ、俺!
「あ、あの。エヴァの部屋に飾ってしまってもいいのかな?」
「飾る? あの、何を錬金されたのでしょうか?」
「えっと……ドールハウス……。ほ、ほら、以前、ビーバーの木彫りの人形を贈ったでしょう? あのサイズの人形用の家なんです」
「まぁ! デストロイちゃんだったら、あちらに」
デストロイちゃん?
え? 待って。ビーバーがデストロイ? え?
「兄上。モンスターのフィギュアを贈ったのですか?」
「え? モンスター? いやいや、お兄ちゃんはかわいいビーバーを贈ったんだよ」
「ですから、モンスターですよね? デストロイ・ビーバー」
「はあぁ?」
いや待って。何その強そうなビーバー。そんなモンスターがいるの?
破壊神ビーバー?
「え、えっと。結構大きいんだけど、大丈夫かな? 具体的に言うと、縦横二百センチぐらい」
「本当にすみません。兄上もティファニーも調子に乗っちゃって」
「ふふ。じゃあお隣の部屋がいいかしら。おじい様が買ってくださるお人形部屋なんです」
うってつけの部屋だな。
隣に移動して荷物を開封。もちろん、うちの騎士たちに運んでもらっている。まぁ俺たちも少しずつ持ってるけどね。
木箱から取り出されたのはミニチュアのお屋敷だ。
「実はこれ、エヴァから借りた本の中にあった屋敷なんだ」
「私が選んだの」
「本にあったままだと、各部屋が小さくなりすぎるので、僕が微調整しました」
そう。これは兄弟三人で選んだ誕生日プレゼントなんだ。
中に置くミニチュアの家具も三人で選んで、色も考えて。ティファニーはミニチュアベッドのシーツに小さな刺繍をしてくれた。
「す、凄いです。わぁ、かわいい。こんなに小さいのに、本物そっくりだわ。あ、デストロイちゃんたち、持ってきますね」
デストロイ…破壊されないだろうか。
でも、人形なら他にも持ってきたんだよね。こんどは木彫りじゃなく、ちゃんとした人形だ。
デストロイちゃんはお屋敷の護衛がいいんじゃないかや。強そうだし。
エヴァが戻ってきたら、錬金した人形も出す。
「まぁ、お人形も? デストロイちゃんと違って、ふわふわなのですね」
「試行錯誤して、なんとか形になりました」
見た目は完全に、前世で売られてた二足歩行の動物のアレだ。
俺、頑張った。何度も何度もダメだしされたけど。
メイド服を着た猫。執事の格好をしたシェパード犬。ドレスを着た茶色のウサギ令嬢と夫人。カワウソ男爵、ふたりの令息、それからホワイトタイガーの騎士たち。いろんな人形を錬金した。
そして、白くて赤い瞳のウサギ令嬢も。
「まるでディル様たちみたい」
「いや、なんか錬金してたらこうなっちゃって」
「こっちの白ウサギはエヴァちゃんなの。それでね、ドレスルームにある服はね、実際にお着換えできるのよ。凄いでしょ~」
「着替えもできるの!? すご~い」
ふふ。これも何度も何度もやりなおして、やっと着せ替えできるサイズを錬金できました!
五着しかないけど、これで勘弁してください。
エヴァとティファニーがさっそく人形遊びを始めて、これを見たら頑張った甲斐があったなと思う。
そして、彼女へプレゼントしたこのドールハウスが、新しい我が家となる。
というのをジークが話すと、ティファニーがとんでもないことを口にした。
「エヴァちゃん。このミニサイズのお屋敷で、兄さまとの新婚生活の予行練習をしてね」
「ひゃう!? しし、し、しんこ、新婚!?」
「ティ、ティファニー! なんてこと言うんだお前はっ」
「うっふっふ~。ふたりとも、お顔真っ赤ですよ~」
くっそ。
お、俺……俺もちょっと思ってたけどさ!!




