184:干からびちゃうよ。
階段を錬金して下に降りてからは、魔法陣を壁に押し当てながら岩を削り取っていった。ある程度の空間ができたら、試しに建物を錬金しよう。さて、何を錬金するかなぁ。
「凄い……あっという間に山が削れてしまいましたわ」
「削るのは簡単なんだよ。何もイメージしなくていいからね。でも何かを作るとなると、完成した形を思い浮かべないといけないんだ」
だから建物の場合、まずは紙の上で図面を描いてイメージする。町の家もそうやって錬金して建てた。
まぁ何十軒も建てたから、同じ外観で同じ間取りなら紙を見なくても錬金できるようになったけどね。
なんてことをエヴァに話すと、彼女は少し考えてからパッと表情を変えて笑みを浮かべた。
「本があります!」
「え、本……ですか?」
「はい。うちの書斎に、いろんな国のいろんな建物の絵や、その図面をまとめた本があるのです。あ、図面といっても、ここに部屋があってというような、寸法なんかは書かれていないのですが」
「へぇ。建築家が自分の作品を自慢するための、そんな感じの本ですかね」
「きっとそうです。お屋敷だけじゃなく、町の住宅の絵もありますし、あ、あと! 町のスケッチばかり集めた本もあるんです」
へぇ。画集みたいなものだな。そういうの見てイメージを膨らませれば、見栄えのいい街が作れるかも。
「エヴァ。その本、借りることはできるかな?」
「もちろんです。明日、持ってきますね」
「ありがとう、エヴァ」
結局、今日見せることができたのは地面をごりごり削り取ることと、階段の錬金だけだった。
「お城がいい! 絶対お城ぉ」
「王様がいないのに、お城なんておかしいよ」
翌日、エヴァが本を五冊持ってきてくれた。貴族が住む豪邸から、こじんまりした屋敷、それから城の絵が描かれた本だ。それぞれの間取りもしっかり描かれたものだった。
他にも町のあちこちをスケッチしたもの。
それを見て、新しい我が家のデザインで話が割れている。主にティファニーとその他で。
「あ、あのね、ティファニー。錬金するのはお兄ちゃんなんだけど……」
お城はさすがに無理。形が複雑すぎて十回や二十回の錬金でも完成させられる気がしない。お兄ちゃん、魔力が枯渇し過ぎて干からびちゃうよ。
「お城は止めよう、ね?」
「えぇ~、せっかくお城に住めると思ったのに」
「ティファニーのお部屋はお姫様仕様にしてあげるから、ね?」
「本当! じゃ、それでいいわ。兄さま、お願いね」
はぁ……お城案を諦めてくれて、よかったよ。
屋敷の外観とかは母上とティファニー、あとストッパー役のジークに任せて、俺は父上殿やフィッチャーと一緒に、町の全体図を考えることにした。
東の砦がだいたい五十メートル崖上だ。そこから段階的に下げていくとして……。
東の砦→領主のお屋敷→新しい町→下の町(今の町)という四層構造にすることになった。
更に今の町も東に向かって拡張する。そのためにも、崖崩れしないように土台をしっかりしないとな。
崖が崩れないようにするためにはどうすればいいか、親方に相談しないとな。
全体的にL字の町になるな。その街並みも図に起こして、何の施設をどこに置くか、住宅をどう並べるか書きこんでいく。
「あの、ディル様。お忙しいのに、こんなもの渡していいのかどうか悩んだのですが」
「ん? 手紙、ですか? いや、招待状?」
「は、はい。九つの月、十六日にうちでパーティーをします。その……わ、私、十一歳になります」
十一歳に……。
「誕生日パーティーだったのですか!?」
こくこくと頷くエヴァ。
忙しくて誕生日を聞くのも忘れていた。十六日って……一週間後じゃないか!
「忙しいようでしたら、無理にとは――」
「行く! 転送の魔導具で一瞬なんですから、移動の苦労もありませんし。必ず伺います」
「エヴァちゃんお誕生日なの? うわぁ、ティファも行っていい?」
「もちろんよ、ティファちゃん。ジークさんも来てください。ルシェットちゃんも来ますので」
「行きます!」
ルシェット嬢で釣るとは、なかなかやりますなぁ、エヴァは。
こうして俺たち三兄妹は一週間後にハルテリウス公爵家へ行くことが決まった。
プレゼント、何か考えておかないとなぁ。




