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【書籍化】毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
5章

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183/218

183:二年あればなんとかなりそう。

 土地がない。

 いや、あるにはあるけど、ゼナスは特殊な地形で、しかも何度か拡張して今の形になっている。


 東西を岩山に挟まれた場所にあり、その横幅は二キロほどあるにはあるけれど。

 その東西の岩山は、麓から高さ五十メートルあたりで第一階層がある。そこに城壁と騎士団の詰め所、ご家族の住居エリアをそれぞれ建造していた。

 建造してしまったのもあって、これ以上、東西に平地を拡張させるわけにはいかない。第一階層を拡張することはできるだろうけど、西側は無理だ。岩塩があるから岩肌を削っていくとそのうち岩塩層をぶち抜いてしまう。


「そうなると東側だね」

「ですがサウル様。砂漠への城壁を広げれば、敵からの侵入経路の警戒区域が広がることにもなります。砂漠に面した岩山は、これ以上削らない方がよろしいかと」


 東西の岩山の先端から先端に、城壁を築いているからね。東の岩山を削れば、城壁を伸ばす必要がある。城壁を伸ばせば、警戒すべき範囲が広がるのは当然だ。

 それに、東の守備隊の詰め所や居住エリアもあるしなぁ。


「となると……町を北側に伸ばすしかなさそうですね。随分と細長くなりますが」


 まぁ細いといっても、今のゼナスは東西の幅が一キロ強もある。


 ……うぅん。でもやっぱり不格好だな。


「はは。いっそ全体的に町を北へ作り直しますかね?」


 な~んて、冗談だけど。

 え、ちょっと待って。何で真剣な顔して話し合ってるの? ねぇ、冗談だよ、冗談。


「いっそ東の岩山を利用して、高低差のある都市にしてみては?」

「ボースコニュ伯爵領の町が、そんな感じでしたね」

「東の騎士団の住居エリアを最上段として、そこから何層かに分けて居住エリアを」

「今の町はどうする? 残すだろう」

「外部から来る冒険者が利用しやすいよう、残した方がいいな」


 冗談で言ったのに……現実味を帯びてきた……。


 でもま、それならそれで頑張るだけさ。






「えぇ!? ま、町を作りなおすのですか?」

「うん。そういう流れになってるよ。まぁ実際、今の立地じゃこれ以上人口が増えるってなると、どうしても北側にしか町は伸ばせないからね」


 ゼナスへ戻ってきて三日後、エヴァが遊びにやって来た。


「でも、町ってその……作り直せるものなのでしょうか? 建物をまた作り直すのでしょう? 十年、いえ、二十年でも終わるかどうか……」

「いやぁ、そんなにかからないよ。一年……は無理かもだけど、二年あればなんとかなりそう。あ、素材があること前提だけどね」


 それだって、山を削りながら建材が確保できるから困らない。

 どうせだから観光地みたいに統一感のある建物にして、景観を良くしたいなぁ。


「ま、町って二年で作れるものなのですか……」

「ですね」


 ん? エヴァが少しドン引きしているようだけど、気のせい?

 まぁ実際にちょっと見せてあげようか。俺がどんな風に錬金するか。

 そういえば、あまり大きな物を錬金しているのは、見せたことなかったような。


「ちょっと見てみる? 俺がどんな風に町を作るのか」

「はい! ぜひ、見てみたいです」


 ってなわけで、東へと向かう。エレベーターに乗るのも初めてじゃないかな?


「まぁ! これがディル様の、えれべーたーという物なのですね。どうやって上へ行くのですか?」

「まずは浮遊石を起動させるんだ。二カ所あるレバーを、同時に動かすんだ。エヴァはそっちのレバーを、俺はこっちのレバーを引くからね」

「はい!」


 そんな気合入れなくてもいいんだけどね。

 見守っていた騎士が「お二人の共同作業ですね」なんて言ってさ。何故かエヴァが赤い顔をした。

 な、何か意味のある言葉だった? ん?


「い、行くよ」

「は、はい」

「さん、に、いちで引くからね。さん……に……いち」


 ぐいっとレバーを引くと、同時に四つの浮遊石が起動して浮いた。


「う、浮きました。浮きましたよ、ディル様」

「じゃあ、あとはこのロープを引っ張るようなイメージで、よじ登るんだ」

「わ、私がやってもいいですか?」

「もちろん。小さな子はさすがに無理だけど、エヴァぐらいの子でも動かせるよ」


 ジークやティファニーでも動かせたしね。まぁティファニーは数メートルで根をあげていたけど。

 でも、さすがエヴァだ。

 か弱いレディーのように見えて、実は鍛えているからね。

 すいすいとまではいかなくとも、エレベーターは着実に上へと昇っている。そして結局、ひとりで一番上まで到着させた。


「やりました、ディル様! わぁ、崖の上はこんな風になっていたのですねぇ。もうここだけでも、小さな町ほどの大きさですね」

「東側だけでも二百人ぐらい住んでいるからね」


 単身の騎士もいるけど、家族連れもいる。全員ここで暮らしているから、そりゃちょっとした町だ。

 その居住エリアを崖沿いに北へ進み、住宅が途切れた所から錬金を開始する。

 まずは地面を削る作業だ。

 魔法陣は見えない場所には展開できない。何度練習しても、それだけはどうにもならなかった。

 ただ裏技というか、セコ技というか……魔法陣全体が見えない位置――例えば魔法陣全体を地面の中に展開することはできない。でも、一度見える場所に展開してから、地面に潜り込ませることはできた。まぁそれも、魔法陣の一部でも視界に捉えた状態じゃないとダメだけどさ。


 だから削るのは崖沿いから。

 地面に魔法陣を展開、そのまま地面の中へ押し込みながら【ブロック形成】の錬金をする。そして錬金した側から、素材として【一時保存】だ。


「という具合に地面を削りながら、同時に素材回収するんだ」

「す、凄いです、ディル様。でも……」

「ん?」

「これ、どうやって下へ降りるのですか?」


 下……。

 錬金で削り取った部分の底は、深さ五、六メートルに。


 ……。


「か、階段を錬金しよう」


 形成したてのブロックがさっそく役に立つぞ~。

 へへ、へへへへへへ。


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