178:急いでロープを買ってこようっと。
「うちんとこが襲われた!? お、親父はっ」
「大丈夫。族長は他の里へ知らせるため、手練れを連れて砂船で向かったよ」
通常だと五日かかるところを、船員たちの頑張りで四日でゼナスへと戻って来た。
キャット・ルー族が持つ砂船は全長二十メートルを少し超える程度。百人も乗ればぎゅーぎゅーだけど、アスデローペ卿の砂船はそれを遥かに超える五十メートルちょっと。里の住民みんなを乗せられるスペースがあった。さすが商船だ。
ただスピードだけで言えば小型船の方が早い。状況を伝えるため、族長は砂漠の西側にあるフォックス・リー、キンバル、そしてサルージの里に知らせに走った。
東側で暮らす砂漠エルフとバトラスの所へは、ゼナスから知らせる。その方法は。
「リディアレーゼ! 族長に伝えてくれ。キャット・ルー族の里が襲われた。蛮族の仕業だって」
「な、なんじゃと!? 奴らついに動きおったのかえ」
「まだ本格的ではないと思う。船長の話だと、ワームはまだ幼体だっていうからさ。とにかく伝えてくれ。キャット・ルー族の里はボロボロだから、彼らはゼナスで受け入れたと。父上と話し合って、他の里の人をどうするか考えるから、またあとで連絡したい」
「わかったのじゃ。キャット・ルー族の受け入れを手伝った後、屋敷の方へ向かうぞえ」
頷いてから俺は屋敷へと戻った。キャット・ルーの里から避難してきた人にも同行してもらっている。当時の状況を話してもらうためにだ。それから船長とアスデローペ卿にも。
「では私は怪我人の手当てに行ってまいります」
「そうしてくれ、カティア。ティファニー、お前も行っておいで」
「はい、お父様」
神聖魔法の才があるティファニーも、魔法を学ぶために同行させるようだ。他にも薬や包帯を手に、メイドが何人か一緒に屋敷を出て行った。
「フィッシャー。君も行って必要なものを見てきてくれるかい?」
「わかりました。目録したもんをあとで――」
「いや、すぐ取り寄せてくれ。私に確認の必要はないよ」
迅速に。それが必要な場面だから、フィッシャーに全部任せるってことだ。
「父上、キャット・ルー族を全員連れてきましたが、よかったでしょうか?」
「あぁ。他に避難できる場所はないんだ、最善の選択だったんだよ。他の里の人たちのことも考えないとね。里へ留まるか、避難してくるか」
「避難場所も考えないといけませんね」
「兄上、それなら西側がいいのでは? 以前兄上が、滝へ向かうのに登った辺りです」
そうだな。あの辺りは開けているし、なんだったら岩をくり抜いて洞窟住宅なんてのもいい。一時避難場所にするなら、十分だろう。
よし。
「父上。すぐに避難所の錬金に取り掛かります」
「あぁ。こちらも受け入れ態勢を整えよう。準備ができるまで、怪我人は宿を利用してもらうとしよう」
王国騎士たちには砂漠の監視の強化を指示。ワームは時折、呼吸のために砂から顔を出す。その時に砂を噴き出すそうだ。それを目印に、ワームを見つければいい。
ワームだけじゃなく、砂漠のモンスターにも注意だ。
砂漠のモンスターのことは、砂漠の民が良く知っている。彼らから騎士団に情報の共有をお願いしよう。
という話を父上殿とまとめ、俺はさっそく西の崖へ向かった。
まずは父上殿から渡された指示書をグリューネス隊長に届け、それからキャット・ルー族の戦士にもモンスターや今回のことを騎士団と情報共有してほしいと頼んでおく。
それからエレベーターを使って崖の上へ。
既に騎士たちは城壁の上で砂漠の警戒に当たっている。バリスタ一台に三、四人が配置されているようだ。
騎士たちの家族が暮らす住居エリアから少し北上。住宅エリアの北側に避難所を錬金する感じだ。
でもエレベーターから遠くなるし、こっちにも新しいのを設置した方がいいだろうな。
ま、それは後回しにしよう。最初に錬金した階段が残ってるしね。
「さて、どんな形にするかな」
一時避難場所っていうと、やっぱり長屋みたいな仮設住宅スタイルかな?
キャット・ルー族だけで四百人だ。他の部族も避難してくるとなると、とてもじゃないが広々としたものは用意してやれない。
ワンルームにしたうえで、天井を少し高めにしてロフトを作ろう。で、二階建て……いや、三階建てにするか。上の階は若い世帯に入ってもらえばいい。
一階に十部屋並べて、それの三階建て。これで三十世帯分。あと三棟錬金すればいいかな。
ベッドを人数分用意するのは難しいから、ハンモックでいいか。
王都に行って細めのロープを大量に買い込まないと。
洞窟住居も錬金したかったけど、ひとまずこれで仮設住宅は完成かな。
竈よし。ハンモックぶら下げる石フックよし。石クローゼットよし。石ハンガーよし。
あ、ハンガーの使い方は教えておかないとな。
石テーブル、石椅子よし!
さ、急いでロープを買ってこようっと。




