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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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115/124

115:破壊力抜群だ。

「個室?」

「そうだ」


 夜にはお披露目会が行われ、その翌日。

 エヴァンゼリン嬢から公爵様にお願いしてもらい、転送の魔導具を見せてもらった。

 何故か……ヴァルドリヒ様が同行している。


 「どの魔導具がどこと繋がっているか、わかりやすくするためにだ。同時に、誰がどの魔導具を使用したのかも把握するためにな」


 なるほど。

 にしても、思ったより小さいんだな。

 まるで試着室のように並んだ個室の中は、両手を広げるとギリギリ壁に手が届かない程度の広さ。

 小さな台座があって、そこにボタン……そう、クイズ番組なんかで見たピンポンって鳴らすボタンがあった。

 押したい……。


「本当に転送の魔導具を錬金できるのか?」

「え、いや、それは……まだ、わかりません」


 やってみなくちゃわからない。素材が手に入るものならいいけど……。

 

「本来ここは、転送の魔導具を持つ家門の者しか入れぬ場所。それを特別に入れさせてやったのだ。わからぬでは……」

「お父様!」

「エ、エヴァ?」


 両手を腰に当て、エヴァンゼリン嬢がヴァルドリヒ様を見上げる。


「ディルムット様だって魔導具を錬金なさったことはないの! それなのに、やる前からできるできないを聞くなんて、失礼ですわ! できなくたっていいじゃないですか! お父様だってできないのでしょ!!」

「い、いや、エ、エヴァ?」


 ヴァルドリヒ様はタジタジだ。

 そして、止めの一言がエヴァンゼリン嬢の口から放たれる。


「お父様なんて、大嫌いです!」


 今、ヴァルドリヒ様の耳には、エヴァンゼリン嬢の声がリフレインしているように聞こえているだろう。

 HPがゴリゴリ削られているはずだ。

 お父さん大嫌いを生で聞く日がこようとは……破壊力抜群だ。

 項垂れたヴァルドリヒ様は、その場に膝をついてしまわれた。


 さ、錬金しようっと。


「エヴァンゼリン嬢、個室の外まで下がってください。まずは魔導具の仕組みを錬金魔法で見てみます」

「は、はい。あの……ディルムット様」

「はい?」

「あ、あの……エ、エヴァと、お呼びください。家族やお友達は、みんなそう呼んでくれるので」


 家族……家族!!

 そ、そうだよな。うん。け、結婚すれば家族になる。

 そうだ。別に何もおかしいことはない。家族になるんだし。

 エ、エヴァンゼ、いやエヴァが成人すれば……。

 んっ。んんっ。


「で、ではエ、エエ、エ、エ、エヴァヴァ、エヴァ」

「は、はひっ」

「お、俺のことも、ディルと、呼んでください」

「ディ、ディル様、ですね。わ、わかりまひら」


 噛んだ! 顔真っ赤だ!

 うっ。かわ……。


「かわいい、娘に……娘に……大嫌いだなんて言われた……言われた……」


 ちょっと、ヴァルドリヒ様がかわいそうになってきた。

 まぁいいや。おかげで冷静になれた。


「錬金魔法――」


 まずは個室をすっぽりと覆う魔法陣を展開。

 頭に浮かんだ【解析】と【分解】と【破壊】。

 いやいや、後者の二つはいかんだろう。ってことで解析だ。

 素材とその仕組みが頭の中に流れ込んでくる。


 素材は鉄、それから銀や金はまぁ手に入る。問題は少量のミスリルだな。

 この世界にもミスリルは存在する。オリハルコンもだ。

 ただめちゃくちゃ希少だし、そもそもミスリル鉱山が存在しない。大昔に掘りつくされたらしく、現存するミスリルで最後だと言われている。


「素材にミスリルが入っていました……作れる作れない以前に、素材で詰んだかもしれない」

「ミ、ミスリル……とても珍しい素材、ですものね」


 転送の魔導具はふたつでひとつ。一カ所分の魔導具を作るのに、ふたつは必要ってことだ。


「ミスリルか……それがあれば錬金できるというのか?」

「あ、ヴァルドリヒ様。復活されたのですね?」

「復活?」

「あ、いえ、なんでもありません。ミスリルがあれば作れるのかというのはわかりませんが、少なくとも、なければ絶対に作れませんから」


 ヴァルドリヒ様は少し考えた後、待っていろと言ってどこかへ行ってしまった。


「もしかして、ミスリルに心当たりでもあるのでしょうか?」

「あ……公爵家にミスリルの短剣があります! もしかしてそれを使わせてくださるのかしら」


 首を傾げるエヴァは、少し嬉しそうに見える。

 ヴァルドリヒ様がその姿を見たら、喜ぶだろうな。

 

 待っている間、何もしないのもなんだし解析を続けた。

 魔導具なので、最終的には転移魔法を魔石に付与しなければならない。


「エヴァ。転移魔法を使える人に心当たりは?」

「転移、ですか? あの魔法は凄く難しく、消費魔力も多いから使える方が少ないと思います。宮廷魔術師様ならもしかして」

「難しい?」

「はい。私も魔法を習っていますが、先生が仰るには魔力の消費がとても激しいのだとか」


 並みの魔術師ではまず足りない。そこそこ優秀な魔術師であれば、全魔力を消費してやっと転移できる程度。転移先で気絶すること間違いなしって……かなりだな。


「転移先で倒れてしまっては、命の危険だってあります。転移先が安全であればいいですが、そうでない場合……」

「介抱してくれる人もいなければ、森の中に転移すればモンスターに襲われて終わり、ですね」

「はい。そんな危険な魔法だから、使えるだけの魔力を持っていても学ばない魔術師様も多いようでして」


 となると、やっぱり宮廷魔術師クラスにならないと、魔法を付与できそうな人はいないか。

 魔導具が完成したら頼んでみよう。


「待たせたな」

「あ、ヴァルドリヒ様」

「これを使え」


 戻って来たヴァルドリヒ様は巾着を手にし、中から真っ白な、光沢のある石を取りだした。

 まさか、ミスリル!?


「陛下に許可をいただいたが、他言無用だぞ」

「え、誰にも話すなと?」

「そうだ。これはミスリル鉱石だ」


 鉱石!?

 

「じゃ、どこかで鉱脈が発見されたんでしょうか」

「……ひみ」

「お父様は北部にいらしたのだし、国境にある山脈でしょうか?」

「エヴァは賢いなぁ~」


 今、秘密って言おうとしたよな?


「その通り。北部の国境にある山脈で発見されたのだ。内緒だぞ」


 ダメだこの親父!

 

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