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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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114/124

114:いったいなんなの!

「新作はぜ~んぶ、この私、デイジーが購入しましたの」

「「え?」」

「かぷせるといレディー向け。そのすべてを購入しましたのよ」


 つまり買い占めたってこと?

 どういうことだ?

 フィッチャーに目配せをすると、彼が店員の元へ向かった。

 一言三言話をした後、フィッチャーが顔を左右に振る。


 なるほど。

 高位貴族にありがちな「見栄」って奴だな。


「令嬢、初めまして」

「ん、な、なんですの、あなた」

「はい。私はディルムットと申します。このカプセルトイの発案者であり、製作者です」

「え……ディ、ディルムット、様?」


 ん? なんかエヴァンゼリン嬢が服の袖を掴んできたぞ。

 何かあるのか?


「どうしました?」

「な、なんでもない、です」


 何でもない? でも顔が赤いし。


「兄様鈍感」

「エヴァ様、兄に代わって謝罪します」

「い、いいの。いいんです。はわぁ」


 え、何? 俺、悪者?


「ディルムット様が、私にご用ですの?」

「あ、はい。先ほど、ガチャを買い占めたと仰っていましたね」

「えぇ! とてもステキなお品ですもの。ぜ~んぶ、デイジーが買って差し上げますわ。他の令嬢の手になんて、渡しません」

「こちらの品物、一家門につき、一日五個までと購入制限をかけております。より多くの方にお楽しみいただくためです。店の者に聞きましたが、買い占められた事実もないとのこと」

「え……そ、それは、その……」


 俺がそう話すと、周りの令嬢たちが囁き合う。


「さっきから買い占めた買い占めたと言って、ガチャを回すの邪魔していたのよね」

「やっぱり嘘だったんだわ」

「侯爵家の名を出せば、なんでもできるって思っているのかしら」


 顔を真っ赤にするデイジー嬢。


「みなさん。今お話しした通り、より多くの令息令嬢にお楽しみいただきたいので、一日五個限定とさせてください」

「もちろんですわ、ディルムット様」

「ディルムット殿! このガチャは王都のみでの販売でしょうか? 自分は妹のお披露目会のために王都に来ましたが、次のガチャを購入したくとも、王都までは三日かかりますので」

「それでしたら、ご心配なく。各地のフィッチャー商会に、順次ガチャを設置していきますので」


 とフィッチャーがすかさず宣伝する。

 今回、王都で一番乗りしたのは、このお披露目会に合わせて実際の売り場での反応を見たかったからだ。

 この人気ぶりだと、帰ったら追加錬金しなきゃならないな。


「それではみなさん、よいお買い物をお楽しみください」


 ペコリとお辞儀をすると、デイジー嬢が顔を真っ赤にして店を出て行った。

 はぁ。出禁にできればいいんだろうけど、さすがにこの世界でそれは難しいかぁ。


「なんだかお腹がすきましたね」


 袖を掴んだままのエヴァンゼリン嬢の手を取る。

 彼女は小さく声を上げ、それから軽く俺の手を握り返した。


 ……はっ!

 て、手を握ってしまった!?

 そして握り返された!?


 これは……これは……何!?


「もう、兄さま。固まってないで、お腹空いたんだからカフェにでも行こうよぉ」

「はぁ。兄上の今後が心配です」

「ふふ。大丈夫よ、ジーク。だってエヴァちゃんも初心だもの」

「年下に心配されとりますよ、ディルムット様」


 寄ってたかって俺を弄るな!






「兄さまぁ。ゼナスにもカフェが欲しい~」

「王都を見ていると、やっぱりゼナスには何もないというのが実感できますね」


 カフェでパンケーキを食べながら、ティファとジークがため息交じりでそう話す。

 町は潤ってきた。

 でもその潤いは、各家庭レベルでの話。


 毎日三食の食事ができる。

 毎日お風呂にも入れる。銭湯だけど。

 学校も作った。子供はもちろん、大人も希望するなら文字の読み書きを無償で教えている。

 元々村だったゼナスの住民の生活は、以前より格段に良くなったはずだ。


 そうだな。

 そろそろ娯楽を取り入れる時期だよな。

 ただ、スイーツ店なんてのは、専門の技術のある人を雇った方がいいだろう。


「フィッチャー。あとで相談に乗ってくれるかい?」

「もちろんです。心当たりのあるもんをリストアップしときますよ」

「はは。俺が何を頼もうとしているのか、もうわかったんだね」

「そりゃまぁ、この流れですからねぇ。あむ。最近はほら、冒険者もゼナスへ来るようになったやないですか。やっぱゼナスは閑散としていて、町の魅力がない言われてますんや」


 おっと。それは一大事だ。

 宿は急ごしらえで用意したけど、帰ったら店舗を充実させないとな。

 そのためにも、出展者が必要になる。

 そこはフィッチャーの人脈に頼ろう。


「あれ? エヴァンゼリン嬢、あまり召し上がっていませんね」


 まだダイエット中?

 いや、しなくていいだろ。細過ぎるより、少しぐらい肉付きがいいほうが俺は好みだ。

 べ、別にいやらしい意味じゃない!


「ディルムット様……数日後には帰られるのですよね」

「そ、そうですね……寂しい、ですね」


 そう言うと、エヴァンゼリン嬢の顔が少し明るくなった。同時に赤くもなる。


「兄さま、偉い」

「よくできました、兄上」


 いったいなんなの!


「転送の魔導具が余ってらしたらいいのに」

「そうしたらホーヘンベルク侯爵領にも、一瞬で行けるのにな」

「ジーク、私に会いにきてくれるの?」

「も、もちろんだよ、ルシェット嬢」

「嬉しいっ」


 あぁ、あぁ、もう。子供の癖にませちゃって。

 転送の魔導具、かぁ。

 それをゼナスに置くことができれば、一瞬で王都に来ることもできるんだけど……。

 なんせ魔導具を作れる技術者が少ない上に、ひとつ作るのにも時間がかかる。

 転送なんて高位魔法を発動させるための魔導具ともなると、何年も予約待ちだって以前フィッチャーも言ってたな。


 せっかく王都に来ているんだ。

 生の転送魔導具を見せてもらって、コピーできないかやってみようかな。

 

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