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毒親育ちの俺、異世界で優しい家族を得る~不運な男爵家ですが、錬金魔法で辺境領地を発展させます~  作者: 夢・風魔
3章

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102/110

102:嫌われているぅぅぅぅぅぅぅ!

「兄さま、兄さま。早くぅ」

「はいはい。ほら、淑女が走ったりしない」


 王都に到着して三日目。今日は昼食会の日だ。

 三年前はどこぞの侯爵令嬢の登場で場の雰囲気も悪くなってしまったけれど、果たして……。


「そう言えば……クリスティーナ嬢の王都出禁って」

「兄上。残念なお知らせがあります」

「嫌だ、聞きたくない。嘘だといってくれ、ジーク」

「本当です」


 うあああぁぁぁぁぁ。陛下、なんで五年出禁にしてくれなかったんですか!

 あそこか? それともあっちか?

 どこだ。どこから現れる。


「兄上、落ち着いてください。あ、ほら。エーリヒ様ですよ」

「エーリヒ様!」


 やった! 肉壁――いや、お守りのご登場だ。


「エーリ……」


 待てよ!

 エーリヒ様がいらっしゃるということは、当然そこに……妹の……エヴァ、ンゼリン、嬢も。

 いや待て。まだ心の準備ができていない。

 あ、エーリヒ様がこっち見た。爽やかな笑みを浮かべてこっちきてる。

 待って待って。心の準備がぁぁぁ。


 あ、あれ?

 薄桃色の髪の令嬢を連れていらっしゃるぞ。


「やぁ、ディルムットくん。久しぶりだね。おや、少し背が伸びたか?」

「お、お久しぶりです、エーリヒ様」


 エーリヒ様に会釈をしたあと、隣に立つ令嬢にも同じように頭を下げた。


「初めまして令嬢。ゼナス辺境伯の子、ディルムットでございます」

「初めまして、ディルムット卿」


 令嬢が右手を差し出す。その手を取って、甲に軽く口づけをした。

 その後令嬢はジークにも同じように手を差し出す。ジークも俺を真似、口づけをした後に自己紹介をした。

 高貴な令嬢、ということだ。


「私、リネージェ・オルフォンスと申します」

「オルフォ……、お、王女殿下でしたか。ご、ご無礼いたしました」

「王女様!? ぼ、僕……」

「ふふふ。何も無礼なことなんてしていませんわ。緊張なさらないで。みんなそうやって委縮してしまうんだもの。友達ができなくて寂しいの。ね?」


 そりゃそうだろ。なんせ国王陛下のご息女だ。そうなかなか、友達になるなんて難しいさ。

 でも……寂しいという気持ちは本当なんだろう。


「わかりました、リネージュ様」


 ジークの肘を突き、普通に接するよう促す。難しいだろうけどね。


「よ、よろしくお願いします」


 ペコリと頭を下げるジークに、王女様は笑顔で応えた。

 そういえば、王子殿下は参加されていないのだろうか。二十歳前の王子がいるはずだけど。 


「ふふ。ホーヘンベルク侯爵家の方が、あちらにお見えですよ」

「え、ルシェット嬢が!?」


 おいおい、ジーク。王女様の前で思いっきり喜ぶんじゃない。

 ってか王女様、もしかしてジークとルシェット嬢のことを知っているのか?


「ルシェット嬢は数少ない、リネージュの友人だといえる令嬢なんだよ。文通もしているそうでね、令嬢同士の手紙のやり取りとなれば……わかるだろう?」


 と、エーリヒ様がぼそりと囁く。

 なるほど。恋話で盛り上がっていたのか。

 で、リネージュ様の方の恋話のお相手が、エーリヒ様ってことか。


「ジークさん。いってらしたら? ルシェット嬢はとっても人気の令嬢なのよ?」

「え!? そ、それは……」

「ジーク、行っておいで。ティファニーがはしゃぎ過ぎないよう、しっかり見張っているんだよ」

「は、はい。エーリヒ様、リネージュ様。それでは失礼いたします」


 挨拶を済ませた瞬間、ジークは駆けだした。

 ジークはあれで、結構体力があるし運動神経だっていい。騎士団から剣術の指南も受けているから、同年代のお子様と比べれば断然、強いはずだ。

 父上殿に似て、甘いマスクだしなぁ。


 既に侯爵家の中に突撃しているティファニアーは、恋焦がれるフィリクス様にべったりだ。

 フィリクス様の方がどう思っているのかはわからない。だけど邪険にはしていないし、妹のルシェット様と同様に接してくださっている。

 まぁ……妹枠なんだろうな。

 仕方ないさ。ティファニーはまだ十歳なんだし。


 エーリヒ様とフィリクス様は十七歳。

 十代の七歳差というのは、意外と大きいんだよな。

 ティファニーが十五、六歳になる頃までに、フィリクス様に好きな人がいなければワンチャンある……かな。


「お、お兄様」

「お。ようやくうちのお姫様が来たようだ」


 エーリヒ様の……お姫様……。

 待って待って待って!

 気を緩め過ぎていた。心の準備はまだですまだ!


 ドキドキ。ドキドキドキ。

 ひ、人、人と言う字……人……ぱくりごくん。


「エエェエ、エ、エヴァンゼリン嬢。お、お久しぶりで……ん?」


 振り向くとそこには、銀髪の、長身で、細身ながら鍛え上げているのがわかる体躯の……般若のような形相をした男の人が立っていた。


 ん?

 エヴァンゼリン嬢……いつTSしたんだ?


「君がディルムットか」

「はひ? は、はい……ディルムット、ですが……あなたは?」


 よかった。エヴァンゼリン嬢じゃなかった。


「わたしか? わたしの名はヴァルドリヒ・フォン・ハルテリウス。エヴァンゼリンの父だ」


 ……え。


「お、お父上君!?」


 そ、そうだ。宰相=公爵だからすっかり忘れていたけど、エヴァンゼリン嬢にもご両親がいらっしゃる。

 公爵様には気に入られているようだけど、ご両親の方はどうか……。

 というのは、今、目の前に立つお父上君を見ればわかる。


「わたしの息子はエーリヒただひとり! 君を息子にした覚えはないぞ!!」 


 嫌われているぅぅぅぅぅぅぅ!

 

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