18、ソロキャンパー、力を得る。③
18話目です。
17話で『縮地』を取得と書きましたが、『空間移動』に変更いたしました。
ご確認をお願いします。
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「いやいやいや!これは死ねる!間違いなく死ねる!」
精神体ということも忘れるほどの物凄い浮遊感と高度感。初めて『槍』に登った時もこんな高度感は味あわなかった。ええ、僕絶賛落下中です。とても怖いです。死ねます。間違いなく。
そう言えば、体組成の強化で、スキルを取得した筈……あったあった。
ステータス画面、スキルの欄に新たに表示されている『空間停滞』の文字をタップする。
落ちていた体がフワリと停まる。
「ほんとに止まったよ…、あれタラちゃんか?」
遥か下にタラちゃんが闘っている姿が見える。他の3人はなんとか避難している様だ。
おお!?タラちゃんが増えたんだけど!?
…おっとっと、急いでチェックを終わらせないとっと、ええと…。
スキルの欄、魔法の欄をそれぞれチェック。
修正が終わった後はペットボトルを飲まなくても、スキルと魔法の種類だけは確認出来るようになっている。
サーチを使い、少年のステータスを確認。これも修正の影響だろうか、かなりの距離まで探知できるようになっていた。
「名前は『ドミニオン』…天使かな? 位階は…第3位階か…それなら」
魔法の欄からDMGシリーズ最大級の魔法をチェック。
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『フルクリティカル・マギ・バースト=コード・ノワール』
DMGシリーズ魔法群の最大級魔法。
全属性の最大魔法を同時に発動、闇魔法最大級『ノワール・ビリオンズDMG』と合わせて練り上げる事で超高火力の巨大な黒球を発現。対象に向けて発射。
第3位階までの『神々』ならば、その範囲内にであれば一瞬で『強制帰還』させる。
また第2位階以上の『神々』に対しても大ダメージを与える。
*全魔力の50%を使用する。
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「中二全開だなあ……まあこれでいこう、スキルは……」
――ッ!?
ゾワリ、と冷たいものが背筋を走る。
「な、なんだ!?…下かっ!?」
思わず下を見る、そこには『エスペラーザ』が一人増えていた。
それだけではない。海が、木々が、そのエスペラーザを中心とする周囲半径150メートル程が文字通り凍り付いている。
「なんだ…あれ」
急いでサーチを使用。
ケルビム…いよいよ天使めいてるなあ、位階は第2位階か!ってヤバイ!
エスペラーザの男がタラちゃんやアイーシャ達に何かしたのだろう。皆何かに拘束されている様でそれに抗っているように見えた。
急いで『空間停滞』を解除する。
落ちる。
「そうだったああぁ!…えっとえっと…これか!」
『空間移動』のスキルを発動。
このスキル、どこまでも空間移動できるわけではないらしく、目算30メートル程度が限界のようだった。
まじか!チート能力かと思ったのに!もう一回だ!
何度か『空間移動』を発動して自分の体に戻る。神様のところで体を強化したせいだろう、痛みは全く無い。それに今まで精神体だったせいか、ケルビムは気づいていない様だ。
「ユズルさん!?意識が戻ったんですか!?それに体の傷が!?」
「ユズル殿!!ご無事で!?」
「おお!生きてたね!良かった!」
皆が口々に尋ねる。
「うん!大丈夫!とりあえず話は後で!タラちゃんが危ない!」
急いで2本のペットボトルを一気飲みする!
「…ならば先に消えろ」
ケルビムが手を翳すのが見えた。
待機状態にしていた魔法とスキルを発動する。『空間移動』でタラちゃんの前に。
この世界に来てまだ1週間も経ってない。今でも色々迷ってる。
でも…、短い間だけど、でももう皆『仲間』だと思ってる。
――だから。
その『仲間』を助けられる力が今自分にあるのなら!!
――「炎?氷?爆発?雷?何でもいいから混ざって爆ぜろおおおおおおおぉ!!!!!」
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縁が虹色に彩られた漆黒の中に炎、雷、氷、世に有る全ての元素を内包した球体が『ケルビム』を包む。
「グッ!なんだこれは!?」
――ケルビムを包み込んだそれは、徐々にその体積を縮め。
「貴様、ドミニオンが壊したはずでは!?」
――1つの点となって。
「うん、壊されかけた。でもそのおかげで、力を得ることが出来たよ」
――爆ぜた。
球体に内包された力の凄まじさを表すが如く、衝撃がまき散らされる。
ケルビムが一瞬にして凍り付かせたその周囲は、同じく一瞬にして元に戻る。
不思議なのはそれ以外に被害が見受けられないところだった。
核爆発にも例えられる程の爆発と衝撃波。にもかかわらず、被害があるのはケルビム本体と生み出した氷の結界。
他は砂粒一つとして被害が出ていなかった。
『DMGシリーズ』、『Damage, Must to Gods series』はこの世界においての概念で『神』とされる存在にのみ強力なダメージを与える魔法でありスキルである。
裏を返せば『神』以外には全く効果が及ばない魔法とスキル、ある意味クリーンエネルギーなのだ。
……発電はできないが。
ともあれ、そのDMGシリーズ最大級の魔法『フルクリティカル・マギ・バースト=コード・ノワール』をまともに浴びたケルビムは最早虫の息だった。
「タラちゃん!無事ですか!?」
『『まだ無事じゃ。ユズルよ、その力、もしや…』』
「うん、力貰って来た!まだ半分らしいけど。まあ話は後で!」
『『半分じゃと?…まあよい、今はあやつを返さねばならぬゆえな』』
ケルビムは虫の息ながらも反撃を試みようとしてるのだろう、2対4枚の翼を大きく広げこちらを睨みつけながら詠唱を始めている。
「まだやる気みたいだね」
『『じゃの。とっとと片を付けるかの!』』
「いやタラちゃんは退がってアイーシャ達のガードをお願いします」
『『なんじゃと!?…いやそれもそうか、あやつらでは耐えれぬか…』』
「そういうことです!」
『『分かった。儂はあやつらを護るとするかの』』
「お願いしますね!」
タラちゃんが皆に結界を張り直すのを確認すると、腰に差した『祓』を抜く。
「彼岸の者よ!溶け崩れろ!」ケルビムが詠唱を終え光線の様な物を発射する。
同時にスキルを発動する。
――【禍ツヲモッテ災禍ヲ祓ヘ】
「本当中二全開だなあ」
呟きながら『祓』と共に突っ込んでいく。ケルビムが放った光線を断ち割りながら、その体に『祓』を突き込む。
「なんだと…、グッ、フッ」
ケルビムが強制帰還の光に包まれていく。
「こ、今回は、負けておくが、半年ゴ、きサMaらにホロびを…、ソレまデ、たのシmIに……」
光が消える。ドミニオンもケルビムも強制帰還されたようだ。
「倒せたのか…」
体の力を抜くと強烈な脱力感が襲って来た。
「ユズルさん!」
アイーシャが駆けよってくる。
「ごめん、アイーシャ、ちょっと倒れるね…」
「え!?ちょっと!?ユズルさん!?」
意識を失う直前に、とても柔らかいなにかに顔が包まれた気がした。
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差し込む光に目が覚める。
――朝? ――そうか、スキル使用で倒れたんだっけ
ふと下腹部に重量を感じて目をやるとアイーシャが僕の下腹部を枕に熟睡している。
「…え?ちょちょちょちょっと!アイーシャさん?」
枕にされるのは構わない、だけどさすがにその場所は!
「ふえ?…あ、ユズルさん、おはようございますぅ」
「おはようございます、じゃなくて!そ、その場所は、いけませんて!」
「ふえ、何がですかぁ?」
そういいながらアイーシャは気持ちよさそうに頬ずりする。だからソコは!
「んん?何でしょうぉ?何か、硬いもの、が……!!!」
気づいたのだろう、アイーシャは飛び起きてこちらを見る。その顔はリンゴもかくやと真っ赤に染まっている。
「すすすすすすいません!そそそそそうでしたね!あさ、ああ、朝はだだだ男性は、ここ、こ、こうなるものとおき、おき、お聞きした、したことがあり、あり、とにかくごめんなさいぃぃ!」
傷だらけのCDかな?
「い、いや大丈夫だよ。こちらこそ何かごめん。そういえば昨日はアイーシャがここまで?」
と自分のタープを見回す。
「そ、そうですね」
「そうなんだ。ありがとう!…そういえば、昨日倒れる直前に何か柔らかいものに包まれた気が…」
アイーシャを見ると、一段と顔の赤さが増したようだ。
「そ、そ、それはですねぇ、私のむ、む、こ、これ以上は言えません!私、準備してきますね!」
真っ赤な顔のアイーシャは脱兎のごとくリゼルさんが持ってきた天幕に逃げ込んでいった。
「何なんだ?」
昨日の戦いを思い出すと、今になって恐怖感が襲って来た。
「一歩間違えたら死んでたけど…、まあ、とにかく何とかなった、かな」
…今日はいよいよ海を渡る。
これから先、どんな冒険が待っているか分からないけど、とにかく半年間で力を付ける!
だからまずは――。
朝ごはんだ!
如何だったでしょうか?
全編シリアスを書くのが苦手なのをどうにか克服したいです。
後、戦闘シーンの描写も。
次回は海を渡ります。




