11、ソロキャンパー、討伐する。
思ったより仕事がはやっく終わったので11話目投稿します。
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「ブレイド!」
風の刃を腕に纏わせてブレードマンティスの鎌を付け根から切り飛ばす。
体術や格闘術なんて習った事は無い、剣道は体を鍛える目的で高校3年間やってたけど玄人という訳じゃない。
でも、なんというか魔物の動きがゆっくりに見えた。きっとペットボトルの効果なのだろう、スローモーションの様に非常にゆっくりした動きに見えたのだ。
気が付けば5体程のブレードマンティスを倒していた。
「すごいです!ユズルさん!ものの数分で5体も倒すなんて!」
魔物が襲ってくる前にアイーシャとリゼルさんには闘い方を聞いていた。
アイーシャは回復・信仰系の魔法以外は火魔法が少し使えるのみ。信仰系で「オーバード・レイ」という光線の様な魔法が使えるらしいが、一発で魔力が900程持っていかれるので実質火魔法のみらしい。
リゼルさんは双剣の使い手で魔力を剣に乗せてゴリ押す、所謂脳筋系だった。
そのうえ素材は状態が良い方が査定も良いらしくい火魔法は使わない方がいいとの事。
そのためアイーシャは後衛で援護のみ、僕が最前衛で、取りこぼしをリゼルさんが叩いていくという作戦になったのだ。
アイーシャのレベルが15、リゼルさんは23、僕は20だけどペットボトルの効果で実質40。
結果として僕が一番前で単騎殲滅する格好になっている。
「ブレイドスピア!」
ブレイドで蟷螂達を切り裂きながら、ヒュージクリケットの数体をブレイドスピアで串刺しにする。(カマドウマに遠慮はいらないってね!)カマドウマ、苦手なのです。
「リゼルさん!残りお願い!!」
「了解です!」
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虫たちを殆ど倒し残りはクラウンマンティス1体になった。サイズはブレードマンティスの2倍ほど、状態を起こせば5メートルはあるだろうか。名前の通り、頭部に王冠の様な突起が付いている。
本来の僕ならビビってる所だろうけど、ペットボトルの効果とタラちゃんの結界のおかげもあってか怖いとは感じなかった。
ブレイドで鎌に向かって切りつけるが思った以上に硬い、それならばと関節を狙うとなんとか切れた。
出来れば腹部は狙いたくない、だって蟷螂だよ?蟷螂の腹部といえば・・・ねぇ?
そう「ハリガネムシ」だ!
異世界だからっていないとは限らないもんね?
あいつも苦手だ。しかも蟷螂のサイズからして、もしいたらあり得ないサイズでしょ?
あぁ、想像するだけで嫌だあぁ。
そんな事を考えながら大ぶりの鎌をかわして出来た隙にクラウンの頭を切り落とす。
「やったか?」
「やりましたぁ!」
・・・あ、それはフラグって奴では?
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結論から言うと、フラグでした。
いやね?クラウンマンティスは倒せたんですよ?
で、皆で喜んでたらですね?
森の方から「ギチ、ギチキチチチ」って感じの音が聞こえた訳ですよ。
で、森の方を向いたらですね?居たんですよ、そいつが。
10メートル近くはあるだろう体、黒く艶めいた体毛に覆われて、八つの眼はこちらを見据え、八本の足をキチキチと蠢かせている。
「ゴ、ゴラオンスパイダー・・・なんでこんなところに・・・」
リゼルさんが呻くように言葉を漏らす。
「ゴラオンスパイダー?見た感じからヤバそうですけど・・・」
「ヤバいなんてもんじゃありません!平均レベルは55、魔力は50000を超えます!、・・・推奨討伐等級は3以上の、パーティー、です・・・」
Oh・・・。
「ゴラオンスパイダーは見た目の柔らかさとは裏腹に表皮は異常に硬く、動きは見た目通りに非常に素早いです!それ以上に厄介なのは、粘着性が高い糸で相手の動きを封じ込め、猛毒の牙で一瞬にして行動不能にしてしまう攻撃方法です!」
「じゃ、弱点は!?」
「腹部ですが、あの体をひっくり返すのは至難の業かと…、しかも全魔法に対してある程度の耐性を持っています!」
「マジデスカ……」
しかしどうにか倒さないといけない!
ブレイドスピアを放つが簡単に弾かれる。
ならばと、風の刃を両腕にまとい、その手に斧を握りこんで関節部分を切りつける。
が、駄目!
傷一つ付きそうになかった。急いで一歩退がる。
「ッ!ユズル殿!危ない!」
リゼルさんの声にゴラオンスパイダーの方を向くと、前腕が横薙ぎに振るわれるところだった。
「ウグ!アアアッ!」
僕の体に叩きつけられたそれは防御結界を掛けられていてもかなりの衝撃で、僕は数メートル程吹っ飛ばされる。
――これは、マジでやばいんじゃないか!?
地面に付いたその膝が笑う。
ゴラオンスパイダーは止めを刺す気なのだろう。膝を付く僕を見据えると、牙を持ち上げ吻部から少しずつ糸を出している。
「やばっ!」
――その時だった。
『『・・・どれ、肉の為じゃ。少し手伝ってやろうかの』』
強烈な気配を纏わせながらタラちゃんが近づいてくる。
『『一回だけじゃぞ。それに止めはお主達での?』』
タラちゃんはそのまま事もなげに、怯んだ様に見えるゴラオンスパイダーに近づくと顔面を蹴った。
そう、蹴ったのだ。
それだけでゴラオンスパイダーの体は大きく持ち上がり、腹部が丸見えになったのだ。
「……は?」
…チートって怖い。
『『何を呆けとるか。早うトドメを刺してやれ』』
そ、そうだった。
僕は力を振り絞り一気に魔法を叩きこむ!
「ブロークンブレイド!」
30本を超える風の槍が僕の周囲に展開される。
「ブロークンラッシュ!!」
永唱を追加すると大きな風の槍が僕を包む!って、凄い勢いで引っ張られるんですけど!
ふと思い出す。魔法の説明の最後に書いてあったのは……、突貫、そう突貫である。
「ちょ!嘘!?や、やめてえええええええぇぇぇぇぇっ!!」
懇願も空しく目の前に蜘蛛のお腹が迫る。
そして。
後に残ったのはグチャグチャになったゴラオンスパイダーの残骸と、その体液でグチャグチャになった僕。
グチャグチャになった僕…。
…もうやだ。
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「お風呂に入りたい……入りたい…」
「だ、大丈夫ですよぅ。気にしないのが一番ですよ?ね?」
鼻と口を押さえながら半身になってそう言われても説得力は皆無だ。
「川まで下れば洗い流せます。それまでの我慢ですよ!……フグッ……」
そうかい、我慢かい。それでも匂うんでしょ?でしょ?皆して鼻と口押えてさぁ。
泣いてもいいかな?
水魔法で綺麗にするかと考えて聞いてみたけど攻性魔法はあくまで攻撃用との事で、自分に対して使う事は出来ないらしい。良くあるライトノベルみたいにあれもこれもとはいかない様だ。
川に着くまでの我慢とあきらめ異世界版ラ○ュタの道を下る。中腹まで下ってきたらまたもや植生が変わる。
大きな針葉樹がメインだった樹木は広葉樹に変わり、下草はシダ類の様だ。といっても考えられないほど大きい。シダ類だけでも自分の背丈の2倍ほどはある。地球のジュラ紀なんかがこうだったのかなと思わせる風景だ。なかなかに圧巻だった。
樹林帯を抜けるとカルデラの底に着いた様でカルデラの縁と同じような草原が拡がっていた。ところどころに林が見えて、その間に川の流れがキラキラと太陽の光を反射させている。
「あの川辺で一泊です」と川を指差してリゼルさんが言う。今日の宿泊場所はもうすぐだ。
「それにしても、ゴラオンスパイダーを倒せるなんて思いませんでしたぁ」
「確かに、しかしユズル殿の最後の魔法は凄かった!」
「でも、タラちゃんが助けてくれなかったら結構危なかったと思うよ」
『『そうじゃろそうじゃろ?じゃからの?ユズルよ?分かっておろうの?の?』』
「はいはい、分かっておりますよ。タラスク様!」
『『だから、様は無しじゃと言ったじゃろうが!』』
「へ~い、……でも本当に助かりました。ありがとうございます」
「本当ですよぉ。ありがとうございます。タラちゃん様」
「む、わ、分かればいいのじゃ!分かれば!」
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川辺に着いてすぐに体と服を洗う。
川の水は物凄く透明で川底の石の一粒までもはっきり見える。
ザックに詰め込んでいた石鹸とシャンプーを使っていたら、アイーシャが興味深げに近寄って来た。
「ユズルさん?石鹸は分かりますけど、その髪を洗っていたのは何でしょうかぁ?」
「ん?これはシャンプーっていって、僕の居た世界ではこれで髪を洗うんだ」
「へぇ、このしゃんぷー?石鹸もですけど良い香りがしますねぇ」
「良かったら後で使ってみる?」
「はい!是非お願いします!」
水浴びを済ませた僕は予備の服に着替えるとサイトの構築を始める。
今回は人数が多いのでタ―プを木と木の間に普通に張り、切り出した枝をポールにしてペグダウンする。
これで4人と一匹なら充分に雨除けになるだろう。
タ―プを張った木と木の間に丸太状になった倒木があったのでそれを簡易の椅子と見立てると、その後ろ側に草を刈り取って敷いていく。石がごろごろしている河原なので、そのまま寝ると体が痛いと考えたのだ。
草を敷き終わって布やらマットやらを敷いていると、今度は薪を集め終えたリゼルさんがやって来た。
「ユズル殿は中々に野営経験が豊富の様ですね!今日は快適に過ごせそうです。ところでこの天幕は?やはり元いた世界のものなのですか?」
「そうですね。これはタープといって、まあ、確かにこっちの天幕の様なものです」
「触ってみても?」
「どうぞどうぞ」
「これは……、こちらの天幕とは違ってサラサラして、軽いですね。これで雨が凌げるのですか?」
「ええ、この生地には水を弾く加工がしっかり施してあるので、漏れてくる事はほぼ無いですね。只、火に弱いのが難点でしょうか」
「そうなのですね…、しかしこの軽さはそれを補っても余りある…ううむ…これは……」
「そういえば、途中で狩ったメロウボアでしたっけ?どうしましたか?」
「ああ、あれは血抜きして皮を剥いだ後、今は川で冷やしていますよ」
そう、あの闘い後、〇ピュタの道(仮)を下っている時にイノシシと豚の間、ちょうど野ブタの様な魔物と遭遇したのだ。メロウと名が付くだけあって、非常に美味しいという事だったので皆で狩ってみた。
ちなみに素材や肉はどうやって持って来たかって?
タラちゃんが無限収納機能が付いた荷物袋を持っていたのだ。昨日お山に帰って持ってきてたんですって。
タラちゃん様様である。
ともあれ、そのまま竈の準備をする。河原の石を組んで薪を並列型に組む。こうすることで火力の調整が簡単にでき、調理の火加減がし易くなるのだ。勿論竈はタープから少し離した位置に組んである。
その後、1,5メートル程度のある程度まっすぐな枝を3本切り出してくる。トライポッドを作るためだ。
枝の上端をロープで巻いて、枝の下部をナイフで削り地面に固定しやすくする。それを広げると出来上がり。
リゼルさんが鋳物の鍋(蓋つき)も持って来ていたので今夜の料理は決まった。
肉肉うるさいのもいるしね。
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【ダッヂオーブンで作る簡単ローストビーフ(今回はローストポーク?ボア?)】
材料
モモやロース肉等お好みのブロック肉:1~2㎏
塩:肉の0・8~1%
こしょう:適量
ニンニク:2かけ(薄くスライス)
オリーブオイル:大さじ1
じゃがいも・人参・玉ねぎ・セロリ等お好みの野菜(今回は異世界の芋、ホウレンソウみたいな葉野菜)
1. 肉は常温に戻しておきましょう。冷蔵した肉は内部が非常に冷たいので、ダッチオーブンで焼いても中心部までなかなか火が通りません、表面は焼けているのに中は生だったなんてことにならないよう、できるだけ常温に近い方がおいしく調理できます。(しかし屋外なので腐らせないように)
2. 肉全体に塩、胡椒をして手でよくすり込み、5~10分置いて味を馴染ませます。10分以上置くと肉が硬くなりますので注意!
3. ダッチオーブンにオリーブオイルとにんにくを入れ、ガーリックチップを作ります。完成したチップは添え物に、残ったオイルで風味をつけながら肉の表面をしっかりと焼いていきます。表面はしっかり香ばしく焼きましょう。焼きしめて歯ごたえのある表面と、しっとりと柔らかな中心部、その両方が合わさると一層旨味が増します。(サーロインの場合上部の脂身はしっかり焼き付けてください)
4. 色よく焼けたら一旦肉を取り出し、ダッチオーブンの中のオリーブオイルをよくふき取ります。
5. ダッチオーブンの中に底網を敷き、肉をその上に置いてまわりにお好みの野菜を丸ごと置きます。(大きすぎる時はカットしてOK)
フタをして下は中火、フタの上に炭(熾き)をのせて天火にし上下7:3位の火力を目指しましょう。
6. 30~40分位ローストします。フタを開け、金串で肉を刺して5秒停止。中心にあたる部分を唇にあててみて、金串の先が生暖かく(人肌程度)なっていたらミディアム位の焼き上がりです。
7. ダッチを火からおろします。肉を取り出しアルミホイル等でグルグルッと包んで30分ほど肉を落ち着かせます。(肉は焼きあがってすぐに切ると、内部に溜まったおいしい肉汁が流れ出てしまします。30分ほど休ませると、肉汁の流出は少なくなります。また、余熱で内部にじっくり火を通す効果もあります。)
8. 休ませた肉をカットします。それでも溢れてくる肉汁は、集めてソースに使いましょう。ダッチオーブン調理では、家庭用オーブン調理の様に肉汁が残りません。
*今回は異世界の為、アルミホイルがありません。大き目の葉等で包んでしまいましょう。
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そう、ローストビーフならぬローストポークだ。いや、ローストボアかな?
肉の塊があって、ダッヂオーブンみたいな鍋もある。それならこれで決まりでしょう!
併せて米も炊く。驚いたのはこの世界にもコメがあったのだ、ジャポニカじゃなくインディカだったけど。
今回は手持ちの地元米「三回のときめき」を使うことにした。
ローストボアは大好評だったよ?どっかの竜様のおかげで僕は2枚しか食べれなかったけど・・・。
後でラーメン食べよう・・・。
食後のコーヒーを飲みながらアイーシャに尋ねる。
「そういえば、大公様ってどんな人なのかな?」
「大公様ですか?一度巫女襲名の時にお会いしましたけれど、獣人の方でした。とても体格がよくて、でもお優しい方でした」
「獣人?珍しいねそれって」
「いえ、そうでもないですよぅ。国によっては、人族だったり、魔族だったり、そんなに珍しいことではありません。それにマモン様は非常に民の人望が厚く、中々の名君といわれております」
「マ・モ・ン様?」
「はい。正確には大公マモン・ク・ディアス・フィーゴ様ですね」
「へ、へえ」
マモン・ク、マモン・ク、マモン・ク、そして獣人……、まさか、ね。
「それはそうとユズルさん!」
「は、はい!なんでしょう!?」
「使わせていただいた、しゃんぷー?あれ凄かったですぅ。髪がサラサラになりましたっ!しかもいい香り!」
「そ、それは良かった……」
僕の疑問をよそにアイーシャの髪は黒く艶々と輝いていたのだった。
あああ、やっぱり可愛いなぁ。
アイーシャの笑顔で僕の疑問は吹き飛んでいったのである。
明日は確実に投稿できないと思いますので次は月曜日になります。
申し訳ありません。




