10、ソロキャンパーの、異世界旅歩き ②
10話目です。
土日出張という、意味の分からないブラック企業のおかげで
明日は投稿できないかもしれません。
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『『良い天気じゃのう』』
「まさに旅日和ですぅ」
「そうですね~、思わず足が進みますね」
『オン!』
「アイーシャ様!気を付けて下さいよ!」
何故か仲間が増えている。
オ・グーニを旅立つ直前にリゼルさんが合流したのだ。何でも前日の夜にリカルド様からお目付け役を言い渡されたらしく、旅装束に身を包み門の前で待ち構えていた。
その時のアイーシャの渋り様といったら、まるで親の仇の様にリゼルさんを睨みつけて「もうリゼルなんか嫌いになります!」「私の幸せを奪う気ですか!?」等とリゼルさんがかわいそうになる位だった。
まあ、リゼルさんの隣で何とも言えない顔をしているリカルド様の心配を考えると、これも当然かなとタラちゃんと僕でアイーシャをなだめすかしたのだけど。
そんなこんなでオ・グーニから二時間ほど、僕たちは大きなカルデラの縁を歩いている。
日本に良く似ていた植生は少しずつ姿を変え、馬鹿みたいにでっかい葉を持つ楓みたいな木や、2メートルはありそうな茸、幹の周りが10メートルはありそうな針葉樹が目につくようになってきた。日本であればずっと草原だったのだけど、やはり異世界。今は森の中だ。
「もうすぐ森を抜けます。その後草原を下って行く道のりですね」
リゼルさんがこの先の道のりを説明してくれる。
「草原を下る道は中々の景色ですよ!下りきって一刻ほど歩くと川があるので、今日はそこで一泊しましょう!」
「リゼルは来た事があるのですか?」
僕とタラちゃんが頑張ったおかげで機嫌を直したアイーシャが尋ねると「領主様のお供で二度ほど来た事があります」とリゼルさんが答える。
道々話したのだけど、リゼルさんはリカルド様の側近の一人で、アイーシャの教育係も兼ねていたらしい。「いつも口うるさいんですぅ」とアイーシャは言うけれど、本心ではとても大事に思っているのだろう。親友といった雰囲気だ。
和気藹々と歩みを進めると森の出口が見えて来た。
ああ、ここ○ピュタの道に似てるなぁ
森が切れて草原になったそこは、すぐに急斜面になっていた。
その急斜面を廻りこむようにヘアピンカーブの道がカルデラの底へと続いている。
日本にもこういう場所があって『ラ○ュタの道』なんて呼ばれてちょっとした名所になっていたのだ。
今見えている景色は道幅はもっと大きく、目の前に広がる景色も雄大だ。盆地をぐるっと廻るカルデラの縁が見渡せて、底の方には川が数本流れている。カルデラは濃い緑から淡い緑のグラデーションで空に向かっていて、縁が途切れると地平線の様に空の青と入れ替わる。カルデラの向こうにはゆったりと噴煙をあげる大きな火山が見えた。
「素晴らしい景色ですね・・・」 思わずつぶやく。
「そうでしょう?これからあの坂を下るとまた違った景色が見えて来て、なかなか飽きさせないと思います。
さて、時間も丁度いいのでお昼休憩と致しましょうか」
皆もお腹が空いていたらしく一も二も無く賛成する。
「只、街道とはいえこの辺りは魔物がそこそこ歩きまわっています。周囲には充分注意した上で、お昼は手早く済ませたがよいかと」
それならばと、僕は食事の準備をする。
手早く済ませると聞いて頭に浮かんだのは、そう、インスタントラーメンである。
サックから「OD缶」と「RSM」の「ロケットポケット」という小さく軽い所謂シングルストーブを取り出し、その上に深めの「クッカー」を乗せる、ソロ用なので1リットルしか入らないけどね。
この「ロケットポケット」は数分でお湯が沸く中々の優れ物だ。
魔法のペットボトルとは別に準備した水を入れ、火を着ける。
「ユズルさん、これは魔導具なのですか?」
「いや、元々いた世界の、ん~、野営道具かな。普通に誰でも使えるし、売ってある」
「こんな簡単に火が着く便利な道具が普通に売ってあるんですかぁ。ユズルさんの元いた世界は凄いのですねぇ」
「でも、魔法とか魔力なんて無かったからね。僕からしてみればこっちの世界が凄いと思うなあ」
火にかけたクッカーの中がクラクラと揺れる。どうやらお湯が沸いた様だ。
4人分の器にリフィルから出したラーメンを並べ、それぞれにお湯を注ぐ。エルダーは干し肉だ。
「これで数分待ったら出来上がりですよー」
「数分!?そんな簡単に出来るのですか?」
リゼルさんが目を丸くして聞いてくる。
「そうですね。しかもそこそこ美味しいですよ!」
僕の両隣ではアイーシャとタラちゃんがそわそわしている。
『『まだかの?』』
「まだですかねぇ、美味しそうな香りがします」
『『そうじゃの!美味そうな匂いじゃ!』』
およそ3分たった所で「もう良いですよ」と皆を促す。待ち切れないといった感じで食べ始める皆をよそに、僕は景色を眺めながらラーメンを啜る。
「これは!美味しいですぅ!」
『『美味い!美味いが肉が欲しいのう』
「この様な美味しいものが数分で…」
三者三様の意見を聞きながら、僕はコーヒーを入れる準備をする。といってもインスタントだけどね。
この世界にもコーヒーはあるらしく、皆は行き渡ったそれを景色と共にゆっくり味わっている。
そんな折だった。
ふとタラちゃんとエルダーが森の方に厳しい目を向けた。
『『ユズルよ、ぺっとぼとるといったかの?あれに水は汲んであるのかの?』』
「はい。汲んでありますよ?でもどうして?」
『『魔物じゃ、こちらを襲う気の様じゃの。これは……虫の魔物かの。ブレードマンティスとクラウンマンティス、それにヒュージクリケットじゃの、クラウンが一匹他は10匹ずつといったとこかの』』
結構な数だけど。
「魔力とレベルは?どれ位ですかね?」
『『クラウンが15~17辺りか…、残りは10程度じゃの。魔力はせいぜい1500程度じゃな。因みに火と風に弱かったかの』』
「アイーシャ、虫の魔物って何かしら素材になったり、討伐対象だったりする?」
「なりますね。マンティス系の鎌は武器の材料に、クロケットの体液や瞳は一部の薬の材料になります。勿論討伐の対象にもなっています。只クラウンマンティスはちょっと強敵ですかね・・・」
アイーシャの代わりにリゼルさんが答えてくれた。
レベルも自分より高くなく、素材にもなってしかも討伐対象か…、クラウンが強敵だってことだけど、これは稼ぎ時かな。
「タラちゃん手伝ってくれます?」
『『嫌じゃの。儂の力は称号の通り、収穫の時しか使わぬ。それに人も魔物も儂にとっては等しく同胞、やるならお主等でやれ』』
「そうですか、じゃあ今日のご飯は肉抜きで!」
『『え?は!?な、何を言っておるんじゃユズルよ?ちょ、ちょっと待ってくれんかの?これ位の事で肉抜きとは、ちょっと非道過ぎやせんかの?』』
「抜きで!!」
『『もう、分かったわい。ほれ』』
タラちゃんが僕たちに向かって手を翳す。
すると一人一人の周りに、半透明の膜が浮かび上がる。六角形が繋がりあった感じの膜だ。
「これは…?」
『『防御結界というやつじゃの。これでお主等が傷つくことはなかろ。儂自身が同胞を傷つけるのは嫌じゃからの、これで我慢してくれ』』
「充分です!」
僕はそういいながら、コーラーと三ツ槍サイダーのペットボトルを取り出すと、一口ずつ口に含む。これで身体能力が2倍、素早さが2倍になり、火と風の魔法が使える様になる。
ステータス画面を確認。
先日見た火魔法の他に、風魔法がフォルダに表示されている。
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【風魔法】
ウインド 消費魔力4:風の刃を一直線に飛ばす。もしくは自分で投擲。
ブレイド 消費魔力8:両腕に風の刃を纏わせ刃物の様に使用することが可能。
ブレイドスピア 消費魔力16:風を槍状に練り上げ、使用者の前面から対象に向かって飛ばすことが出来る。風槍のの長さは2メートル程度、直径は50センチ弱、若干の誘導性あり。
ブロークンブレイド 消費魔力128:一般的な風魔法の最上位。使用者の周囲に10~20本ほどのブレイドスピアを展開。併せて四肢に大きめのブレイドを纏う。スピアの射出と同時に自身に纏ったブレイドでの多段攻撃が可能。スピアの本数は使用者の魔力量により異なる。
「ブロークンラッシュ」の付属詠唱により、スピアを全弾射出、併せて使用者自身が巨大なブレイドスピアとなり対象に突貫する。
***ブレイドDMG 消費魔力*** ある魔法との複合魔法、対象に*******
【このファイルは破損しています】
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「風魔法の最上位って肉弾攻撃なのか…、もっと優雅な感じだと思ってたんだけどなあ」
そう呟きながらフォルダを覗いていると、リゼルさんが叫ぶ。
「ッ!来ましたよ!皆さん!!」
異世界で2回目の(正式には3回目の)バトルが始まった。
ちなみに、ユズルが使っているタープは4,5メートル×4,5メートルサイズです。




