9、ソロキャンパー、準備する。
今日はここまでです。
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目の前に土下座せんばかりの勢いで平身低頭の領主様とリゼルさん以下衛兵の姿がある。
何故かって?
タラちゃんの『『わしはタラスクじゃぞ~』』との言葉に半信半疑のリゼルさんであったが、巫女であるアイーシャが間違いないと言い張るので取り敢えずは領主様の元へ走る事になり、確認の為に10人程度の衛兵と共に領主様を連れて来たのだ。
領主様もリゼルさんも半信半疑のままだったのだが、突然タラちゃんが竜の姿に戻ったことで「「こいつぁ本物だぁ~っ!」」となり現在の状況に至った訳である。
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『『のうリカルドよ』』
「はっ!タラスク様、まさか私の名前を御存じとは!」
『『なに、そこなアイーシャの祈りは毎日クジュにおる儂に届いておったでな。その祈りの中にお主の平穏を祈る言葉も入っておった。そういう事じゃ。アイーシャの祈りは特に心地よいでの』』
「そ、そうでありましたか!お転婆な娘ではありますが、タラスク様にそう言われるのであれば、娘もさぞ嬉しかろうと思います」
先程門の前で一悶着あった後、今は領主館の一角にある謁見の間の様な場所で話を続けている。
領主様は一見して40代前半に見えた。
アイーシャと同じ黒髪で水色の瞳、そして大層なイケメンである。背も高い。
名前はリカルド・アス・ピオーネ。
いわゆる辺境伯辺りの地位にいるらしい。
(なんで異世界転移した先の登場人物はイケメン、美女ばかりなんだろう?)
等ととりとめのない事を考えていたら、タラちゃんから声が掛かった。
『『ユズルよ。お主の事、話しても構わぬかの?』』
「それで問題が無ければ」
『『問題なんぞありゃせんわ。クフフッ』』
何故か領主様の椅子に座ったタラちゃんが『『こっちゃ来い』』とでもいう風に手招きをする。
隣に向かいヒソヒソ話の体で話をする。
「なんですか?」
『『…ユズルよ。わしが見た所リカルドはアイーシャを溺愛しておる様じゃ。旅に出ると言っても素直には送りださぬじゃろう。そこでじゃ!わしがタラスクである事と、お主がはぐれ人である事を出汁にアイーシャを上手く連れ出そうと思うのじゃがの?どうじゃ?』』
「僕に問題が起こらなければ良いですけど…」
『『さっきも言った様に問題なんぞおこらぬわ。それにお主もアイーシャの事、気になっとるじゃろ?男女的な意味での。クフッ』』
「なっ!そ、そういう訳じゃ…、無い、事も無いですが…」
確かにアイーシャは可愛いのだ。
『『じゃあそういう訳での?クフフッ』』
悪代官と越後屋的な密談を終えた後、タラちゃんは僕がはぐれ人である事、伝承の様にはぐれ人についていけばアイーシャは幸せになる事、またタラちゃん自身が一緒に旅をすることで安全であると話をすると、リカルド様も僕がはぐれ人であるということに驚きながらも「それならば」とアイーシャを旅立たせる事に承諾したようだった。
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領主の館が日本のお城風で街中は中世ヨーロッパ風かあ、変わってるわ…。
現在僕はオ・グーニの街中を歩いている。
ギルダーズに行って身分証を作り、明日からの本格的な旅に向けて装備を整え、補給を行うためだ。そこで気付いたのだけど、街中は中世ヨーロッパ風で領主館は日本のお城風と、ちょっとミスマッチな町の風景だったのである。
行きに通った門の近くに大きな洋館風の建物があり、剣と槍のが交差したマークの上に『ギルダーズ組合』と書かれた看板がぶら下がっている。ここがギルダーズの支部で間違いないだろう。
ここには身分証明を持たない僕とタラちゃん二人で来ており、アイーシャは館でお留守番だ。何でもお父上であるリカルド様からお話があるらしく、どうしても来れなかったのだ。
「嫌ですぅ。一緒に行きますぅ!怒られるのは嫌ぁぁ!」と叫んでいたが、きちんと怒られて来ると良い。それも親の愛情だ。
それはそうと僕たちはギルダーズ組合の扉を開け、受付らしき所へ足を向けるとそこにいた職員に声をかける。
「すいません。ギルダーの登録をしたいのですが…」
「ギルダーズへようこそ!初めての方ですね!新規の登録でしたら、登録料として銀貨1枚掛かりますが宜しいですか?」
「…分かりました、お願いします」
登録に必要だとアイーシャから預かった銀貨をタラちゃん分と併せて2枚差し出すと、職員のお姉さんが登録用のカードを差し出してきた。
「このカードに血を1滴垂らして下さい」
カードと一緒に受け取った針の様なものを指の先に刺し、血を1滴垂らす。
するとカードがぼんやりと光ってすぐに消えた。
「これで登録は完了です!ユズル・イスルギさんですね。わぁ!初期レベルが20なんて、有望な方の様でこちらとしても嬉しいです!今後の活躍に期待しております!でも、『野営者』なんて聞いた事が無い称号ですね…」
支部内にいた他のギルダー達から「初期レベルで20?すげえな」「俺こないだやっと17に上がったばっかりなのに…」「レベル20って言ったら、4等ギルダーレベルだぜ?!」等と声が上がっている。
中々の高レベルである様だ。
カードには、名前とレベル、称号のみが書かれていて、魔力量や使える魔法などは書かれていなかった。
(魔力量や使える魔法が書かれていないのは都合がいいね。でも野営者って、キャンパーだからか?)
次はタラちゃんの番だ。
同じようにカードに血を1滴垂らす。
「お名前はタラさん…、って、レベ、レベルが512!?」
…は!?
職員のお姉さんは茫然自失といった感じだ。
「512ってなんだそりゃ?!バケモンか!?」「カードがおかしいんじゃねぇのか?」「それにしても別嬪な姉ちゃんだよな…」「それな!」「スタイルもいいしな!!」「ほんとそれな!!」「一晩お相手を」「お前じゃ無理だろ!」
お姉さんの言葉に支部内も再度騒然としている。途中からおかしいが。
タラちゃんだけはどこ吹く風という様に続きを促す。
『『そんなものか。して、称号は何かの?』』
「し、失礼しました!タ、タラ様の職業は『退ける者』・・・これも初めて聞く称号ですね・・・」
『『退ける者…か、なるほどの。心当たりが10人ほど居るの』』
ああ、なるほど、神代の方達のことだろうな、きっと。
「そ、そうなんですね。ちなみにタラ様のレベルについては、全ギルダー中トップになります…」
『『ほう!トップとな?それは嬉しいの!』』
「お、おめでとうございます(汗)」
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お姉さんの話によると、タラちゃんが登録するまでは、レベル256の特等ギルダー『ゾーリン』という人がトップだったらしい。
いきなりのダブルスコア更新で、支部内は大変な騒ぎになっていた。
それはともかく、ギルダーズの一員となった僕たちはギルダーズの仕組みについて色々と教えてもらう。
まず、ギルダーには6等~特等までのランクがあり、どんなにレベルが高かろうと登録してすぐは6等からのスタートになるとの事。よくある冒険者ギルドの様に依頼を受けていき、達成数によりランクも上がっていくらしい。6~5等がルーキー、4~3等がベテラン、2~特等がトップクラスみたいで、特等は3人しかいないとの事。
ちょっと変わってるのは、年間の依頼達成数が各ランクごとに定められており、達成数に満たなかった場合は1ランク降格する事か。
僕やタラちゃんの場合あくまで身分証明として必要だった為なので、ここはあまり気にしなくてもよい所だろう。
また、魔物をたまたま狩ったり、薬草などを採取した場合は依頼がなくても買い取ってくれるとの事。
これはどの支部でも買い取りが可能ということで、準備に掛かるお金をアイーシャから借りた身としては非常にありがたい。
これを聞いて僕たちはオ・グーニからフィーゴへの道のりで魔物の討伐や採取等を行っていくことにした。
ちなみに「ラクー」一匹で銅貨10枚、薬草5束で銅貨5枚程度との事。
アイーシャに聞いたところによると、銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨2枚で大銀貨1枚、大銀貨5枚で金貨1枚、金貨10枚で大金貨1枚になるみたいだ。その上に白金貨ってのもあるらしい。金貨5枚で一家族が1週間暮らせる程度みたいなので、銀貨一枚が1000円位だろうか。
カードについては、名前、レベル、称号は記載されているが、その他は本人の許可を得たうえで「サーチ」を掛けないと分からない様になっている。個人情報の保護ってやつかな。
これは後で確認しとこう。
「それでは今後ともよろしくお願いしますね~」
騒がれながらもギルダーズ支部を後にした僕たちは、色々なお店や屋台が並ぶオ・グーニの目抜通りを歩く。
食料など色々と準備する物もあるし、一度領主館に戻ってアイーシャと合流しなければならないからね。
何故なら僕たち二人は一文無しだからさ!
…悲しいことに。
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領主館に戻ると入り口でアイーシャが待っていた。
「すっごく怒られましたぁ。」
それは仕方がないだろう。心配かけたんだろうしね。
「でも腹いせに『もう嫌いです!』って言ったら泣いてましたぁ。いい気味ですぅ」
…アイーシャ、怖い娘…。
気を取り直してまずは防具屋に向かう。旅に出て、さらに魔物を討伐するとなれば、ある程度の装備は必要みたいだ。防具屋で軽装の革鎧みたいなやつを購入、勿論借金だ。泣けてくる。
アイーシャは有る時払いの催促無しみたいに言ってくれるけど、それは駄目でしょ。
ひそかに公都までには返せるようにと心に誓う。
タラちゃんはいらないらしい。
『『竜の鱗より強い防具なんぞそう無いじゃろ?』』
「それは…、確かにそうですね」
自分がチートだと思っていたら、隣にそれ以上のチートがいた。何を言ってるか分から(ry
武器はとりあえず、斧やナイフがあるので今回は見送り。もし日本刀みたいなのがあれば使ってみたいかな。その後も薬屋、雑貨屋、食料品と買い物を続ける。ある程度の準備が終わったところで領主館に戻ることになった。
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食事を終えて、お風呂を頂くと(なんと温泉が引いてあった!でもラッキースケベは無かった)用意された寝室に行きベッドに寝転ぶ。タラちゃんは一回お山に戻るとのこと、山で準備があるらしい。
今日も1日色々あった。異世界2日目、すでに馴染んでいる自分に少しだけ吃驚している。
――それにしても、なんで僕は呼ばれたんだろう。というか僕を呼んだ神代の方っていったいどんな方なのかな。などと考えているとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。アイーシャだろうか?
「どうぞ」と声をかけると、入ってきたのは予想外にリカルド様だった。
「はぐれ人殿、いやユズル殿、少しいいかね?」
「はい、何でしょうか?」
「率直に聞くが君はアーシェ、いやアイーシャの事をどう思っているのかね?きちんと考えているのかね?!」
……はい?
「ど、どういうことでしょうか?」
「どうもこうもない!君ははぐれ人なのだろう?アイーシャを幸せにしてくれるのだろう?!女の幸せ、つまりは結「なにをやっているんですか!?お父様!!!!」ウグッ!」
髪を振り乱したアイーシャがリカルド様を後ろから羽交い絞めにする。
「す、すいませんユズルさん、ちょ、ちょっと父が早とちりした様ですぅ。あ、明日は早いのでごゆっくりお休みくださいね!そ、それではお休みなさいませ」
「あ、ああ、お休み」
なんだったんだろうか。
「わ、私はアーシェのためを思えばこそだな!」
「うるさいですぅ!勝手に話を進めないで下さい!やるときは自分でやりますぅ!」
「い、いや、しかしだね?」
「しかしもかかしもないですぅ、そんな父様は嫌いです!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、な!アーシェ」
「嫌です!もう嫌いです!」
「そんな~……」
廊下の喧騒を余所に僕は眠ることにした、明日からは長旅だ。しっかり休養を取っとかないとね。
それにしても明日からの旅、ちょっと不安だけど楽しみだ!
明日は18時過ぎに投稿予定です。




