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urban legend  作者: 子寝虎
14/15

冥府と獣

皆さん、あけましておめでとうございます!


え?遅いって?ナントコトダカワカラナイヤ。


…………はい、ほんっとうに遅れてすいません。

理由を語ると、まず仕事が増えました。


その1、Twitterをフォローされてる方は知ってると思いますがこの度、子寝虎は同人サークル「だがし屋」というものを作りました。そして今、ノベルゲームの制作中でございます………。


まぁそう言う理由です。本当に遅れてすみません。これからも両立させながら必死のパッチで書き続けていくので、どうか生暖かい目で見守ってやってください。


では、いい夢を


  青く光る空。

  何事もないように静かに流れる雲。

  ただ、平和だけを知らせるようにそよぐ風。

  ルナはそんな空を見上げながら店に並んでいるお菓子を食べていた。いわゆる暇というやつだ。

 

  「ルナちゃんどーしたのさ」


  退屈そうな瑠奈に気づいたのかハヤミのおじさんが話しかけてきた。


  「……………」


  ルナの口はなにも語らなかった。

  それもそのはずだ。彼女は昨日まで死と隣り合わせになっていたのだから。

  しかし、彼女は無視するのも悪いと思ったのか首を横に振っていた。

  ハヤミさんはそれを彼女なりの挨拶と捉えたのか、「そうかそうか」と笑顔で返していた。

  その表情はまるで父親のように優しい笑顔だった。

  ルナには父親の記憶はない。気づいたときから、物心がついた頃から彼女は試験管やら実験器具に囲まれた生活をしていたからだ。家族どころか『人間の温もり』すら知らないのだ。

  黒い空、黒い世界しか見てこなかった彼女には青い空と平和な世界は関係のない世界だったのだ。だから、今の彼女の心情というのは一般人で例えるなら「死んで天国に行ってしまった」ような感覚だろう。

  つまり今の状態に、今の状況に、身体と心と脳がついていけてないのだ。

  だから「優しい人」との接し方も会話の方法も知らない。

  そんな彼女は今青い空を、平和な世界を暇そうに駄菓子を食べながら眺めているのだ。


  「…………ゃん…………ねーちゃん!」


  そんな彼女の前で小さな少年が両手いっぱいにありったけの駄菓子を持ちながら叫んでいた。


  「………………………あたし?」


  彼女は首を傾げながら目の前で何が起こっているのか理解しようとした。しかしその少年はそんな彼女に御構い無しにレジの上にその大量の駄菓子を置いた。

 

  「これ、全部ちょうだい」

  「………………え?」


  少年はキラキラに輝かした両目で彼女のことを見つめながらそう言った。しかしルナはというと今目の前で何が起こっているのか全く理解ができていないような顔しながらキョトンとしていた。


  「え?あ、ど、どうぞ」

  「どうぞじゃなくて、お金!これいくら?」

  「……………お…金?」


  そういう少年の小さな右手には溢れ出るほどの小銭が握られていた。

  ルナはそのお金が握られた手を見つめていた目を再び少年の方に向けるとまたキョトンとした顔になった。

 

  「で、ねーちゃん!これ全部でいくらなの?」

  「え…………あぁ……に、200円」


  少年の圧力に負けたためか、ルナはデタラメの金額を少年に投げつけた。誰がどうみてもあの大量の駄菓子が計200円なわけがない。そんなことをしたらうまい棒もびっくりの一品10円未満になってしまう。

  しかし、少年は


「え!?まじ!ありがとねーちゃん!!」


 というと彼女に200円を渡し、大量の駄菓子とともに店の外に駆け出していった。

  そして、少年が消えた瞬間に店の奥からハヤミさんがにゅっと登場した。


  「あれ?かなり商品がかなり減ってる……ルナちゃん、誰か買いに来た?」

 

  ルナはこくりと頷くと右手にある200円をハヤミさんに見せた。

 

  「…………え?売り上げ?」


  ルナは再びこくりと頷くとそのままハヤミさんに右手におさっまている200円を渡した。するとハヤミさんは手に乗った小銭を見つめると苦笑いをした。


「ルナちゃん.........次、お客さんがきたら必ず私を読んでね」

「................?」


 ルナは少し首をかしげてから考えているような顔をするとそのなんともいえない不完全な理解の顔でうなずいた。


「まぁ、仕方ないっか」


 そういうとハヤミさんはまた店の奥に消えていこうとしたその時、また店の扉がガチャリと開いた。


「はーい、いらっしゃい」


 ハヤミさんが振り向くとそこには黒に白のフリルのあるゴスロリ服を着た長い銀髪の少女がぽつりと立っていた。

 すると、ハヤミさんはその少女に近づくと顔を少女の高さになるまで腰を落とした。  


「いらっしゃい。はじめてだよね?何が欲しいのかな?」

「ふーん、いろいろあるんだね」


 少女はそういうと一歩ずつ、一歩ずつ店の中を歩きだした。そしてくるりと一回りすると、また小さい口がひっそりとそして奇妙に開きだした。


「けど、やっぱり欲しいのはあなたの心臓よねぇ......ねぇ、ワーウルフ」



 ぐちゅり



  銀髪の少女の声とともに鈍く淡く、そして儚い音がハヤミさんの身体を貫いた。



「ゴフッ」


  ハヤミさんの口から真っ赤な液体が吐き出された。


  「あらぁ、ワーウルフの血も赤いのね。知らなかったわ」

 

  ハヤミさんは立ち上がり態勢を立て直すとそのまま右手で銀髪の少女に向かって拳を振りかざした。

  しかし、少女は華麗にバックステップを踏むことで軽くかわした。


  「やっぱり、月が出ていなくてもタフね。ワーウルフ」

  「何しに来た…………アリス」

  「何しに来たって、あなた私たちにしたことを理解していて?魔邪教の守護者であったワーウルフ・オーヴァーロードのあなたは私たちを裏切ったのだから…………ねえ‼︎‼︎‼︎」

 

  そういうと銀髪の少女……アリスは右腰にしまってあった拳銃を抜き、ハヤミさんに向かって撃ち込んだ。


  バン!


  乾いた銃声が店内の狭い空間に響き渡る。

  しかし撃ち込まれた銃弾はハヤミさんに当たることはなく、ハヤミさんの目の前で空中に浮遊していた。


  「へぇ……月が出てなくても威圧は使えるのね、しかし人間態のあなたが私と戦っても勝ち目なんてないんだけどね」

  「何が目的だ……今頃になって俺とカザリを潰しに来たのか」

  「別にぃ、あなたたちになんか興味ないわぁ。あるのはそこにちょこんと座って怯えてるdust Childrenだけよ」

  「やっぱりdust Childrenだったのか。それにしても誰の命令だ。魔王はもうこの世にいないはずだぞ」

  「あらぁ、私が魔王なんかのいうことを聞くと思う?私は私の意思でしか動かないんだから!」

 

  そういうと同時にアリスは何もない空間からチェーンソーを取り出した。そして、アリスの目に狂気という黒く醜い狂気がジワリジワリ流れ込んだ。


  「電光石火のライトニング


  ハヤミさんも己を増強魔法で強化するとゆっくりと立ち上がった。

  しかし彼女……アリスの顔は狂いに狂った笑顔を浮かべていた。


  「ねぇねぇねぇねぇ!そんな雑魚な増強魔法で私に勝てると思ってるノォ!?」


  そういうとアリスはチェーンソーのエンジンをかけるとそのままハヤミさんに向かって斬りかかった。

  すると、ハヤミさんはその攻撃を左半身によけるとそのまま彼女の腹に右ストレートを叩き込んだ。


  ズブン!


  鈍い音が響いた。しかし彼女の顔はまるで赤子に撫でられなような顔をしていた。

  すると、そのまま彼女のエリを持つと店の外に向かって思いっきり投げ飛ばした。


  ズドォオオオン!!!!!!


  投げられた彼女の身体は店の扉もろとも外へ飛び出していった。


  「あハハハははハヒははハハハははハは!!!!!!」


  投げられたアリスは無傷の身体のままゆっくりと立ち上がりそのまま狂い上がった声で笑っていた。


  「チッ、完全に狂人化に成功していやがる……。これは本当に厄介だな」


  ハヤミさんはそういうと何もない空間に日本刀を呼び出した。そして日本刀を構えるとそのまま店の外へとゆっくり出ていった。


  「ルナちゃんは絶対にここから動かないでね」


  ハヤミさんはルナに対してにっこり笑いながらそう言うと意識を目の前の化物に集中させた。

  Alice In Underland………またの名を冥府のアリス、彼女はあの歴戦の覇者と呼ばれた「ハヤミ 大輔」が警戒し恐るほどの存在なのだ。

  実際、彼女も恐怖だがそれ以上に恐怖なのが彼女が操る武器だ。

  あの武器は使用者の身体、脳、 精神に純度の高い「狂気」をじわりじわりと注いでいくのだ。

  一般人ならばその恐怖に耐えきれずに発狂状態になり死んでしまうのだが、狂気に耐えてモノにした人間は凶暴性、再生力、身体そのもののポテンシャルがかなり向上する。

  そして何よりも「恐怖を知らない身体」になる。

  ハヤミは日本刀を鞘にしまうとそのまま腰にもってくるとまた、刀に手をかけた。

  長期戦は圧倒的に不利と判断したのだ。そうすると、刀にはありったけの魔力という魔力が注ぎ込まれていった。


  「あらァ、あらあらアらアラアァァァアラァアァァァア‼︎‼︎‼︎ここで殺るつもリィなのかしらぁ?」

  「あぁそーだ。お前みたいなヤツはここで葬っておかないとあとあと面倒なことになるからなぁ」

  「アァ、そう……なら」


  アリスはそう言うと指をパチリと鳴らした。すると、今まで平和に広がっていた青い空が一気に暗い漆黒の闇へと染め上げられた。


  「!?」


  ハヤミは両目を見開き、息を飲んだ。


  「何をした!?」

  「何もクソもないよ。私の魔術回路忘れたの?」


  アリスはそう言うとあざ笑いながら続けた。


  「夢物語…………私は私の夢をこの世界、この空間に再現することが出来るの。まぁ今はあなたの為に「月夜」を再現してあげただけ」

  「なんだと?」


  ハヤミは漆黒に染まった闇を見渡した。すると、そこにはまるで己を嘲笑うかのようににやけている三日月が頭上高くに君臨していた。


  「お前、それは俺を煽っているのか?ワーウルフである俺が月夜で戦うという意味……分かってるんだろうな」

  「ウフフフ、ワーウルフとちゃんと戦ったことが無かったからねぇ。ちょぉーっと楽しもーと思ったんだ。だってさぁだってさだってさ!」


  アリスは真っ赤な狂気に染まった両眼を見開くとまるで、クリスマスプレゼントを貰った子供の声で続けた。


「お兄ちゃんにヴァンパイアのdust childrenの脳みそ以外はぶっ壊していいって言ってたもん!」


  玩具はぶっ壊すまで……動かなくなるまで遊び尽くす。一見普通に聞こえる言葉だが、狂気に染まった人間……アリスにとってはその玩具に動物、人間も含まれるのだ。


  「どうなっても知らないぞ……」


 ハヤミは刀から手を放すとそのまま両手で印を組みはじめた。そして一呼吸おくと静かに目を閉じるとひとつひとつ言の葉を唱え始めた。


「我、闇を喰らう者なり。人を奪い、人に嫌われ、人に恐れられた者なり。されど我、心を奪われど身体を喰われど狂気に支配されることなかれ。人に嫌われど恐れられど恨むことなかれ。さすれば己の牙が狂気が答えてくれようぞ。誰よりも獣に誰よりも人に成りかわそうぞ。それが我、人狼の生き様なり……」


 詠唱とともにハヤミの身体は三日月の淡い光の粒子につつまれていった。


 


魔絶獣ベナンダンテ!!!!」



 最後の言の葉が放たれるとハヤミの身体は眩い光を放った。そして、その眩い輝きの先にはハヤミでなくまるで逸話にでてきそうな風格を持つ人狼が日本刀を片手に構えていた。


「あの時の借り、いまここできっちりと清算しようじゃないか………Alice In Underlandよ」

「あらぁ、それは私を楽しませてくれるという意味かしらぁ」



 空で光る月はまるで闇夜を狂わせるように輝いていた。


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